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ゲストルームの最後のクリスマス
私は「ゲストルーム」の写真を撮り続けた。残しておきたかったのだ。
「ゲストルーム」というお店が 在ったことを、そして そのお店に快い 店主マスターとかわいいママが居て、およそ30年間頑張って経営していたことを… 私も ##ちゃんも他のお客さんも忘れたくなかったと思うから…
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私と##ちゃんは 25日朝開店15分後に「ゲストルーム」で会うことにした。なぜなら、混雑する前にママの様子も知りたかったし、ささやかな 二人からのクリスマスプレゼントも渡したかったから…。
二人が考えついたのは「お風呂に入って、ゆっくり身体をやすめてくださいね」と書いた「入浴剤」になった。
娘がプレゼント用に買い置きしていたと思われるかわいい真っ赤なクリスマス用の包装紙があったから、ブルーのリボンを結んだ。
『我ながら上出来!』と、渡すのが楽しみだった。
当日、早くからお客さんがあったようで、私が入ろうとすると 2~3人の人が出ていった。
やはり 閉店を知ってのお客さんたちなのだろう。
入って行くと、ママがいつものように「いらっしゃい!」と言った。
私は すぐママのおでこの横を見た。きれいで手術の後は見られなかった。
「ママ、きれいやん! ようがんばったねえ!」と 思わずハグをしかけた けれど、腰がまがってマウスガードをつけたママに しっかり抱き付けなかった。
「奥の席 とってますよ、座って!」と、何事もなかったように案内する。
ママは 強いなあ!と 思った。
「今日は ポトフやねん」と言うママに
「いや~、ほんま!楽しみやわあ」といいながら、横の席の3人の先客に 軽く頭を下げて座った。
すると、##ちゃんが ゆったゆったと現れた。
私は すぐ「##ちゃん、こっちの席に来てくれへん」と言って、クリスマス用の包装紙にくるまれたプレゼントの品と小さな赤い封筒に入ったカードを見せた。
「かんにんえ~、ほんまにきれいに包装してくれて!」##ちゃんに褒められて、私は《やったあ!》とうれしかった。
前に来た時もそうだったように、今日の隣のテーブル席のおばさんたちも 閉店を惜しんでいる。その気持ちがお互い一体となるようで、注文が運ばれてくるたび「ありがとう!」とか「ここのお弁当 もう食べられへんのやなあ」とか「いや~、おいしい おいしいわ!」と口々にいう。ママもそれを聞きながら「最近材料費あがってるやろ?今日のは特にええのを買うて来てん、そやからおいしいやろ!」と 小声で解説してくれる。それを聞くまでもなく、マスターとママなら今日の材料は張り込んでくれたはるやろなあ!と、推測はしていたが、やはりそうだった。
いい材料は 調味料なくても おいしい!
マスターのおいしさに 素材の味が 加わり上品な味を引き出している。
みんな「さすが!!マスター💛」と 無言の舌鼓を打っていた。
そして、隣同士のおばちゃんが みんな昔からの友達同士のようにしゃべり笑い共感し合って、「ほな、又どこかでお会いしましょ!その時は よろしく」と言って、別れた。
##ちゃんとも 今年はこれでお別れ!
今年はコンサートにも行ったし、こんなに頻繁に会うことなど珍しいことだった。これも「ゲストルーム」の お陰です。
会計をする時、##ちゃんが言った
「ここが、無くなるのも寂しいけど、マスターとママに会えなくなるんが さみしいわ!」ママは「買い物の時会えるやん!」と最後まで気丈夫な返事を返してくる。
私は《うわ~、先に言われてしもたあ!》と思って マスターに目を向けた
マスターは うんうんとうなずきながらにこにこして 私たちを見ている。
「そしたら、よいお年を! 元気でねえ。長生きしてや~!」##ちゃんと ハモって、店のドアを開ける。
ちりりん、りりん!と いつもの鈴がなって、直立不動で頭をさげている マスターの姿が 印象的だった。