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【必読書紹介】コーチとして内容の全てを頭の中に叩き込みたい本 その1【戦略編】

残念ながら、良い戦略はめったにない。
(少略)
悪い戦略は厄介な問題を見ないで済ませ、選択と集中を無視し、相反する要求や利害を力づくでまとめようとする。
悪い戦略は、目標、努力、ビジョン、価値観と言った曖昧な言葉を使い、明確な方向を示さない。もちろん目標やビジョンは人生において大切なものではあるが、それだけでは戦略とは言えない。
(中略)
ありとあらゆるものが戦略に盛り込まれたせいで、戦略はうすっぺらな安物に成り下がってしまった。

ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.8~9 より引用


こんにちは。

つい先日に「競技シーン経験皆無の一般視聴者A」から「プロeスポーツチーム CYCLOPS athlete gaming Rainbow Six Siege部門 コーチ」に就任しましたFuji3(@Fuji3_R6)といいます。(つまりesports関連の人ですね)
波乱万丈な人生を送らせて頂いているな、と様々なものに感謝する日々です。。


さて、本記事から「(esportsかどうかは関係なく)コーチ、アナリストまたはIGLとして、その全てを頭の中に叩きこんでおきたいと個人的に思っている本」を紹介していきます。
別名「10倍の値段を払って買い直しても惜しくない本シリーズ」

”思っている本”ということで、まだ僕自身も叩きこめていないですが、その最初のステップとして本の紹介の形でアウトプットしようかなと。




紹介する本

初回は「戦略」についての本。
読み返すたびに脳髄に電撃を受けているような衝撃を感じ、戦略に関する理解の薄さを実感させられる本です。。
「”ビジョン”とかうさんくさ…」と思っている人ほど読むべきです。


リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 日本経済新聞出版

※この本および本記事で取り扱う「戦略」は戦争や企業戦略など広範囲かつ長期のものを主に指しています。

僕が関わっているRainbow Six Siege(以下、R6S or シージ)的に言えば「一年に一度しかない最大規模の世界大会Six Invitationalに勝つための長期戦略」や「世界大会出場レベルまで到達するための国内大会における戦略」などが該当するでしょう。

しかし「戦略なんて考えたことない」という人にも役立つ記事にはなると思います。目標と戦略の違いとかね。




著者の経歴

※読み飛ばしてもOKです。

■リチャード・P・ルメルト
戦略論と経営理論の世界的権威。「戦略の戦略家」と呼ばれる。
ハーバード・ビジネススクールで博士号を取得。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソン・スクール・オブ・マネジメント(ハリー・アンド・エルザ・クニン記念講座)教授。
多くの有名企業、非営利組織、そして複数の国の政府機関にコンサルティングを行っている。

https://www.innopedia.jp/detail/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BBP%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%83%88/




「戦略」とは?を説明できないのに戦略を語る奴が多すぎる問題

皆さんは以下の質問に答えられるでしょうか。

・「戦略」とは何か説明できますか?
・「戦略」の具体的な構造は?
・「目標」と「戦略」の違いは?
・良い戦略、悪い戦略とはどんなものか?その違いは?

・これらが説明できないならば、あなたの(チームが)立てている「戦略」とはいったい何ですか?



…正直な話、僕自身もまだまだ十分な説明ができそうにもありません。最後の質問は自分自身にブーメランとして返ってきて、心に深く刺さる感じがします。。。


とはいえ「戦略」への理解不足、または悪い戦略を作ってしまっているのは僕らだけではありません。あらゆる個人から大企業、政府機関まで広く行われてしまっていることのようです。
(今回の本では、悪い戦略の例として「アメリカの国家安全保障戦略」が大々的に取り上げられているくらいです)

良い戦略は、重要な一つの結果を出すための的を絞った方針を示し、リソースを投入し、行動を組織する。
だが世界を見渡しても、歴史を振り返っても、このような戦略を持ち合わせている企業はそう多くない。大抵の企業がいくつもの目標や計画を立て、「予算を注ぎ込んでひたすらがんばる」以外はバラバラの行動を取っている。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.22 より引用
目標やスローガンを花火のように打ち上げるだけの政府は、次第に問題解決能力を失っている。企業が打ち出す戦略プランなるものの多くは、希望的観測に過ぎない。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.12 より引用


「いや、戦略とか大げさすぎ」という人には以下の文をどうぞ。

実際には、戦略を一切立てないリーダーは珍しく、悪い戦略を立てているケースがほとんどである。
(少略)
とは言え悪い戦略は、目標がまちがっているとか実行の仕方がまずいというよりも、そもそも戦略とは何か、戦略はどのような役割を果たすのかについて、誤解があるのだと考えられる。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.21 より引用


今回紹介する「良い戦略、悪い戦略」(以下、本書)は抽象的な概念である「戦略」の基本構造を説明し、「悪い戦略と良い戦略の違い」を示す本です。

そして本記事では、著者が主張する「良い戦略の3つの核(基本構造)」に沿いながら「R6S競技シーンにおける誤った戦略」を例として紹介していきます。




良い戦略の基本構造

まず
・「戦略」とは何か?
という質問に対する著者の見解をいくつか記しておきます。 

戦略とは、組織の存亡に関わるような重大な課題や困難に対して立てられるものであり、それらと無関係に立てられた目標とは異なる。
戦略とは、そうした重大な課題にとりくむための分析や構想や行動指針の集合体と考えればよい。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.10 より引用
だが戦略は必ずしも勝つことだけが目的ではないし、野心や決意や英雄的なリーダーシップの表明でもなく、また革新的なアイデアの表現でもない。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.9 より引用



そして著者が主張する「良い戦略の核(基本構造)」は以下の3つで構成されます。

①診断
状況を診断し、取り組むべき課題をみきわめる。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐす。

②基本方針
診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す。

③行動
ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のことである。すべての行動をコーディネートして方針を実行する。

ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.108~109 より引用
戦略の核は、診断、基本方針、行動の三つの要素で構成される。
状況を診断して問題点を明らかにし、それにどう対処するかを基本方針として示す。これは道標のようなもので、方向は示すがこまかい道順は教えない。この基本方針のもとで意思統一を図り、リソースを投入し、一貫した行動をとる。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.11 より引用


また同時に、これら3つの核は「良い戦略」を作成するための「手順」でもあります。

状況を診断し、基本方針を定め、一貫した行動を設計することは、どんな戦略にも欠かせない。状況がわかっていなかったら方向は決められないし、方向性が決まっていなかったら、そもそも一貫性のある行動などとれない。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.355 より引用



                                                                                                          

悪い戦略:「戦術的なチームとして日本一を目指す」と最初に決める

ここからは具体的に、R6S競技シーンを例として”悪い戦略”を紹介していきます。

さて、最初に
「戦術的なチームとして日本一を目指す」(α)
という戦略を立てたとしましょう。




戦略の基本構造 ①診断

それでは初めに、基本構造 ①診断(β)ですね。


………いや、待ってほしい。どこかおかしくないでしょうか?

悪い例が始まってほんの数行しか書いていませんが、既に大問題が起きています。あなたは何が問題か答えられますか?

何が問題なのか分からない場合、あなたは「悪い戦略」を立ててしまっている可能性が高いと言わざるを得ません。



問題点はこうです。

「戦略が立てられてから(α)戦略の基本構造①診断(β)を行ってしまっている」

戦略とは、①診断
(β)②基本方針③行動の過程を経た後、立てられる(α)ものであり、”最初に”戦略を立ててから(α)→ ①診断(β)という順番は間違っています。

悪い戦略がはこびるのは、分析や論理や選択を一切行わずに、いわば地に足の着いてない状態で戦略をこしらえ上げようとするからである。その背後には、面倒な作業はやらずに済ませたい、調査や分析などしなくても戦略は立てられるという安易な願望がある。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.83~84 より引用


つまり何が悪いのかというと、「”最初に”戦略を立てる」の部分になります。
最初に状況を分析・診断して、問題点や課題を明らかにすることが、「戦略」を作るうえでは非常に重要になると著者は主張しています。

実際、戦略を立てる作業の多くは、何が起きているのかを洗い出すことにある。何をするか決めることだけが戦略ではない。より根本的な問題は、状況を完全に把握することである。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.111 より引用


「ビジョン」や「理念」しまいには「目標」でさえうさんくさく感じられ、上層部やリーダーが掲げる「戦略」は意味がないと感じてしまう原因のひとつは、「それらが現場の問題点とつながっていないこと」にあります。

今回の悪い例「”戦術的な”チーム」とありますが、それはチームの課題として戦術面があったからなのでしょうか?メンバーの適正として”戦術的”が合っているからなのでしょうか?そして、それらが事実と判断するに値する分析や根拠はあったのでしょうか?
それとも「リーダーや一部のメンバーが(現状分析もせず)なんとなく決めた目標」に過ぎないのでしょうか?

①診断②基本構造③行動は、戦略の基本構造であると同時に作成手順でもあります。戦略を立てる前には、必ず現状分析が必要だということを忘れてはいけません。

重大な問題を無視し、分析をしようともしなかったら、戦略を立てることなどできない。重大な問題と無関係の目標や予算は、戦略とは呼べない。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.62~63 より引用

言われてみるといたって普通のことに感じますが、この順番が無視されてしまっているケースは非常に多いです。(お前の頭の中にある”ビジョン”とやらから、トップダウンで押し付けてくるのはヤメロ。現場で起こってる問題が無視されてんだよ…)





戦略の基本構造 ②基本方針

さて①診断の結果、「戦術的なチームとして日本一を目指す」が問題なかったと仮定しましょう。

戦術的なチームとして日本一を目指す」は大まかな方向性を示しており、そのまま基本方針としても問題ないように見えます。
あなたはどう思いますか?


筆者の主張では、答えは残念ながら”NO”です。

基本方針は、診断によって判明した障害物を乗り越えるために、どのようなアプローチで臨むかを示す。「基本」という言葉がついているのは、大きな方向性を指し示すだけで、具体的に何をすべきかを逐一教えるものではないからだ。
(少略)
ちょうどガードレールのように、基本方針は行動を一定の方向に導き逸脱を防止する。しかしこまかい内容は指示しない。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.117 より引用

「いや十分に”大きな方向性”を示せてるのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、注意すべきは「行動を一定の方向に導き逸脱を防止する」の部分でしょう。

「戦術的なチームとして日本一を目指す」は基本的な方向性を示しているようで、実際にはどのようにでも解釈可能です。
”戦術的”の定義は分かりませんし、どのような方法で戦術的なチームになるかも分かりません。”日本一の目指し方”も同様です。

分かりやすく言えば、「目的地は示しているけれども、どの方向にどのような方法で進むかは謎」ということになります。

重要なのは、基本方針を定めることによって、無数にあった手段の中から方針に沿った行動を選び、一貫性をもって散り組めるようになることである。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.121 より引用


「戦術的なチームとして日本一を目指す」は方法(どのように)が含まれておらず、様々な選択肢が残ったままなので一貫した行動が起こせません。結果、非効率でバラバラの行動を生み出します。目標達成は遅れ、最悪の場合失敗します。

つまるところ単刀直入に言って、これは基本方針ではなく「ただの願望/目標」です。

良い基本方針は、目標やビジョンではないし、願望の表現でもない。難局に立ち向かう方法を固め、他の選択肢を排除するのが基本方針である。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.117 より引用




戦略の基本構造 ③行動

半ば既に述べたことの繰り返しにはなりますが、②基本方針が定まっていなければ、大まかな方向性も決まっていないことになり、当然③行動も何をするのか曖昧なままです。


…もう既にお気づきの方も多いでしょう。

要するに「戦術的なチームとして日本一を目指す」は120%完全に「戦略」として相応しくないということです。正直に言うと、これは「戦略」ではなく、基本方針でもない、単なる「願望」や「目標」にしか過ぎません。


実際、②基本方針と③行動が含まれていることは「戦略」と「目標」を明確に分ける重要ポイントです。
しかし、このように「戦略」と「目標」がごっちゃになってしまっているリーダーは多い、と著者は言います。

「実行面に問題がある」と嘆く経営者はたいていは戦略と目標設定を混同している。戦略を立てるつもりで業績目標を立てているケースは珍しくない。
(少略)
目標だけを立てていたら、願望と行動の間にギャップができるのは当然と言えよう。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.10~11 より引用

「目標を設定したけれどうまくいかなかった」「目標を立てたけど失敗した」
誰でも経験があることでしょう。

その原因は目標へとつながる方向性と方法(②基本方針)、目標へとつながる具体的行動(③行動)を決めていなかったからかもしれません。
そして、それらが含まれているものをまさしく「戦略」と呼びます。


さて、もう結論は出ました。
「戦術的なチームとして日本一を目指す」は①診断と②基本方針の時点で、戦略として破綻しています。もはや③行動で”悪い例”として用いることはできません。


しかしもちろん③行動も戦略の核。重要な要素です。
よくある間違いを紹介しておきましょう。
それは「基本方針に沿った実際にやる具体的行動の欠如」です。

私が「基本方針」と呼ぶものを戦略と称している企業がかなり多く見受けられる。だが、戦略を基本方針で代用するのはまちがっている。
診断を伴わない場合、どのような方針が可能か、比較検討して選ぶことができない。また基本方針に沿って行動を起こしてみないと、その方針が現実に実行可能かどうかを確認することもできないだろう。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.118 より引用


つまり、方向性と方法論は決まっているけども、「実際に何をするか」が決まっていないパターンです。
現場の人達が「なんか壮大なことを言ってるのは分かったけど、で?実際に何すればいいんだよ?」となってしまうやつです。

「今やるべきこと」が含まれているのが良い戦略だと著者は言います。「戦略」に「行動」が含まれるべき、ということは、本書で筆者が強く主張している部分です。

戦略は行動につながるべきものであり、何かを動き出させるものでなければならない。
(少略)
もちろん、すべての行動を書き連ねる必要はないが、具体的に何をすべきなのかは明確にしなければならない。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.122 より引用
良い戦略には、とるべき行動の指針がすでに含まれている。こまかい実行手順が示されているわけではないが、やるべきことが明確になっている。
「いまなにをすべきか」がはっきりと実行可能な形で示されていない戦略は、欠陥品と言わざるを得ない。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.10 より引用


「戦略」は長期的かつ広範囲を見なくてはいけないぶん、「いま実際にやる行動」が曖昧になりがちです。
しかし、いまやることが明らかでない状態では、戦略を達成するためのプロセスが進みません。戦略はただの夢物語で終わってしまうかもしれませんし、そうでなかったとしてもプロセスの進行は遅れることになります。


②基本方針は戦略から逸脱した③行動が起こらないように作られるため、②基本方針がしっかりと定められていれば、③行動は含まれていなくてはいいのでは?という考え方もあります。

しかし著者は、③行動に移る前には「最も優先すべきことを決める」必要があり、実際に行う行動を決めるその過程が、戦略をさらにブラッシュアップさせるのだと言います。

最も優先すべきことを決めるのは、戦略を立てる中で最も困難な作業である。この作業を完了して初めて、行動に移すことが可能になる。そして逆説的なことだが、行動の必要性こそが、戦略をより的確に、より明確にするのである。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.122~123 より引用


どれだけ優れた①診断②基本方針を行ったとしても、実行可能な行動が起こせなければ、目的は達成できないでしょう。そして「実行可能かどうか」は実際にやってみないと分からない場合もあります。

実際にやってみて行動が現実的でないと分かれば、もちろん③行動を変える必要があります。②基本方針を修正する必要があるかもしれません。いや、もしかしたら①診断から間違っているかもしれません。

このように、実現可能かどうかを確認しつつ③行動を決めることは「①診断②基本方針が正しかったのかどうか」をチェックする試金石にもなります。
そうして「戦略」は修正、効率化、洗練され、僕らが目的地にたどり着く可能性を高めるのです。

これが③行動を定めることの力です。
忘れてはいけない”戦略の最後の核”です。




まとめ:つまりどういうことだってばよ?

・戦略の基本構造かつ作成手順
①診断
②基本方針
③行動
⇛①、②、③の過程を経た”後”に戦略ができる。


・良い戦略は
①まず最初に状況分析、問題点の洗い出しがされている
②問題点に対するおおざっぱな方針だけでなく、「どのような方法で」が含まれている
③方針に沿った、実際に行う一貫した行動が含まれている

⇛これは同時に「目標/願望」と「戦略」を分けるポイントでもある。
⇛①、②、③は戦略の核であり、作成手順であり、チェックリストであり、ブラッシュアップの方法でもある。




競技プレイヤーに贈る「戦略的」の手がかり

本書での「戦略」は「企業戦略など広範囲かつ長期のものを主に指している」ため、結局のところ自分たちには関係ない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、本記事でくり返し書かれたのは
①情報収集+状況を分析して問題点を明らかにする
②明らかになった問題点に対する解決策の大まかな方針を決める
③決まった方針に従って、一貫した行動を設計する
ということです。

これは競技シーンにおいて、ラウンド勝利のために行うべき手順そのものではないでしょうか?

R6Sにおいてドローンやカメラによって情報を集め、集まった情報から現状を分析し、チームの大まかな方向性を決め、一人ひとりの配置や行動を決定していく…

もちろん短いラウンド時間の中では、①分析を十分に行える情報が集めきれなかったり、雑に②基本方針を立てざるを得なかったり、③行動を個人の裁量に任せるしかない状況に追い込まれたりすることもあるでしょう。


本書の全てがR6S競技シーンで適応されるとは思えません。

しかし手順が一緒である以上、あなた(のチーム)の選択や判断を著しく向上させる手がかりとなり得るのではないでしょうか?
「戦略的」とはどのようなものか?という問いに気づきを与えてくれる本になるのではないでしょうか?


かなり長々と文章を書いてきました。しかしそれでも、本記事は全18章のうち、1~5章だけで大部分が構成されています。
本書には「悪い戦略の4つの特徴」「良い戦略の9つの要素」「戦略思考のテクニック」など、本記事では紹介しきれなかった衝撃的な内容がまだまだ書かれています。

ぜひ手にとって読んでほしい…そう願います。


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終わりに

今まで「目標」は立てていたが「戦略」までは深く考えていなかった、という方も多いでしょう。そういった人も気づくことがあるのかもしれません。

「目標を決めるだけでは、達成するための方法や実際にやる行動が分からない。それでは目標を達成することは難しい」ということです。

目標について書いてきた訳ではありませんが、戦略と目標の違いを示すうえで、自然と明らかになるであろう事実です。

戦略の3つの基本構造は、あなたの「達成できるか分からない目標」を「戦略によって導かれた実現可能な現実的な目標」へと変えてくれるかもしれません。



また、最初に悪い例として「戦術的なチームとして日本一を目指す」を示した際に、なんとなく「おかしいのでは?」「なんか違くね?」と思った方もいると思います。
しかしおそらく、それはなんとなくの感覚として感じているだけであり、いくつもの理由を明確に挙げることは出来なかったのではないでしょうか。

その状態では、「悪い戦略」を立ててしまう可能性がまだまだ高いと言えます。「悪い戦略」は間違った方向への努力を生み出し、非効率的でまとまりのない行動を引き起こし、そしてあなたの(チームの)目標達成を阻害します。

本書は「良い戦略を立てるための指南書」であると同時に「悪い戦略を立てないためのチェックリスト」でもあると感じています。

必読です。個人的には。


努力は無条件で報われるものではありません。
あなたの努力には戦略がありますか?
その戦略はただの”希望的観測”になってしまっていませんか?
それとも”戦略なき努力”が報われる確率に賭けますか?
(これも結構ブーメランですな。。)



以上です。

偉そうに語ってきましたが、僕自身が戦略に関して見直さなければならないことがたくさんある、と実感させられる記事でした。あなたの発想や考え方を刺激する何かになっていれば幸いです。


一応、シリーズ物にする予定の本企画。
次回はモチベーション/マネジメント、意思決定/判断、失敗/成長のどれかで本を紹介すると思います。

いつになるかは分かりません!
Invが延期しなかったら書けなかっただろうなーというくらい、時間がかかりましたので!


それでは、また。




P.S. ヘッダー画像について

お気づきの方もいらっしゃるでしょう。本記事のヘッダー画像は「理念→ビジョン→戦略→戦術」であり、著者の主張からするとギャグです。あえて選んでみました。

悪い戦略はまた、お仕着せの穴埋め式テンプレートからも量産されている。空欄にビジョンやミッションや戦略を書き込んでいく、あれだ。このやり方では、自社が直面する状況をみきわめ、どう対処するか考えるという作業をせずに、手順に従っているうちにお手軽に「戦略」ができあがっていく。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.84 より引用
読者はすでにお気づきと思うが、企業の前途に立ちはだかる重大な問題や困難な課題が認識されていないのである。
このような戦略プランを見ると、戦略思考が何もないことがすぐにわかるだろう。そこにあるのは立派な目標と、予算を投じてがんばろうというプランだけである。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.63~64 より引用


いやしかし、ビジョンや理念によって①診断の結果が変わることもありそうです。ギャグは言いすぎかもしれません。

例えば「世界中のあらゆる人に自分たちの商品を届ける」というビジョンがあったとします。(ビジョンの作り方がワカラン。こんな感じで合ってます??)
そして①診断によって「既存顧客が特定の地域・特定の人たちに限定されている」という状況が判明したとします。これは課題になりうるでしょう。

ですが、例えば「お客様一人ひとりに合った最高の商品を提供し続ける」というビジョンの場合を考えてみると、大事なのは顧客の数や幅ではなく、サービス一つ一つの”質”です。この状況は課題にはならないと分かります。

上記の例のように、ビジョンによって戦略が左右されることはあり、ビジョンから戦略を作ることは大事なことなのかもしれません。
しかしながら著者も指摘しているように、ビジョンから戦略を作るのは、得てして現実の問題点を無視した机上の空論になりがちです。



①診断により問題点を洗い出し、その問題点を解決するための②基本方針(どのような方法で?)を作り、その方針に沿って行われる一貫した③行動を決める、という手順は忘れないようにしましょう。

現状分析が出来てない状態での”ビジョン”が空回りしているなんてのはよくある話です。
何が理想か分からなければ、何が問題なのか分からないのかもしれません。しかし、現状の課題を考慮しない”ビジョン”はただの”希望的観測”にしかならないでしょう。

悪い戦略は空疎であり、矛盾を内包し、ほんとうの問題に取り組まない。
悪い戦略は、読んだり聞いたりするだけでうんざりさせられるので、すぐにわかる。
ー リチャード・P・ルメルト「良い戦略、悪い戦略」 P.82 より引用


メンバーをうんざりさせる「中身のない希望論者」にならないよう、僕自身も注意していきたいと思います。


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