助手席の異世界転生〜妻の子どもになる〜
「もうすぐ子供が産まれるんだ」
俺はアクセルをゆっくと踏んだ。
小さな女の子が助手席に座っている。長いローブに金色の紋章がついている。見た目は10歳ほどだ。
「よかったな! 妾も祝うぞー!」
少女は祝福の呪文だと言い、聞きなれない言葉を発した。
「これでお主と嫁御とお腹の子はずっと一緒じゃ」
にっと歯を見せて笑う少女は、軽く500年は生きている魔導士なんだとか。
「ありがとう」
会社についてエンジンを止めると少女は消えた。
二週間後、妻を定期検診に連れて行くため、助手席に乗せた。瞬間、苦しみ出した。
「どどどとうした!?」
陣痛が始まったようだ。
慌ててエンジンをかけて、アクセルを踏む。
「大丈夫、病院までは十分くらーー!?」
妻の姿が消えた。
「どこだ!?」
気を取られていると体に大きな衝撃が走った。
♢
「あら、起きたのね」
妻の声が聞こえる。
ドレスを着て宝石を身につけていた。
「ミルクを飲みましょうか」
目の前に迫る乳房に嬉しいような悲しいような。
自分の小さな手を見て愕然とした。
(428文字)
多忙な中、隙間時間に少しずつ書き進めてたら出来上がったので投稿します。
12月は不定期更新になりそうです。