〜最高の調味料は空腹〜【洞窟の奥はお子様ランチ】のお題で【冒険小説風】
「きゃっ!」
「だいじょうぶか!?」
小柄な男の子が滑った女の子の手を取り引き上げる。
「あぶなかったな」
「ありがとう」
滑った先を見ると昼間なのに暗くて先が見えない。
背筋に走った悪寒を感じた少年は、ひとつ呼吸をした。
「いこう。おこさまランチはすぐそこだ」
「うん」
数人の少年少女が汗を流し進んだ先には、子どもほどの大きさの入り口があった。
「あまいかおりがする」
「にくのやけるにおいもするぞ」
「バターのかおりもする」
「こうばしいかおりだな」
ぐうぅと待ちきれない音が鳴る。
垂らした涎をふき取ると少年少女は視線を交わした。
緊張と興奮で心臓が早鐘を打つ。
少年の一人が頷くと、一人また一人と洞窟に吸い込まれていく。
「わぁ!」
彼らの輝く瞳に壁一面のお菓子が映る。
少女の一人が手を伸ばした。
「なにするの!?」
少年が少女の手を叩いた。
「いまたべたら、おこさまランチがはいらなくなる!」
ぐっと堪える少女をみて、全員が生唾を飲みこんだ。
お子様ランチを最高にいただくため、壁から目を逸らしつつ前に進んだ。
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