お返し断捨離〜黒スーツの男の話〜
新年度の時期は書類が大量に届く。
役場が送った断捨離のアンケートの返信があるのだ。
三回にわけて行われるもので、今日はその一回目の処理だ。
内容はパソコンに入力して、断捨離の要不要を選択する。
黒スーツに身を包んだ男たちだけのむさくるしい職場だ。
積み上げられた書類の一枚に目を通す。
得も言われぬ苛立ちが膨れ上がった。
首を振り感情を消す。
この仕事を始める前の記憶は一切ない。
だから、昔の知人がいたとしても感情的になることはないはずなのだが。
この送り主は断捨離が必要だ。
二枚目の断捨離のアンケートで、同じ送り主の書類を見た。
腹立たしい。
自分でも感情の出所がわからない。
とにかく、断捨離が必要だ。
三枚目のアンケートでも同じ名前を見た。
怒りがこみあげてきた。
断捨離しなければ。
送り主の家を訪ねる。
「あなたの処分が決まりました」
目を丸くする送り主が言葉を発する前に意識を奪った。
怒りも寂しさも憎しみも脳裏にこびりついて剥がれない。
過去に送り主から捨てられたのかもしれない。
記憶はないのに、感情だけが独り歩きしている。
気持ちが悪い。
男は苦々し気に感情を飲みこんだ。
(472文字)
「断捨離」繋がりで過去の記事のスピンオフみたいにしてみました。
このお話だけでも読めるように書いたつもりですが、なかなか難しいですね。
過去の断捨離お題のお話のリンクも貼っておきますので、ご興味ある方は覗いてみてください。