イギリスの薔薇
イギリスでは、君主はテューダー・ローズの紋を使用する。
イギリスの薔薇といえば、ダイアナ妃を思い浮かべる。
少し前、ケンジントン宮殿で、ダイアナ生誕60周年の銅像が公開された。
ダイアナの二人の王子によって除幕式が行われた。
ダイアナは悲劇的な最後を迎えたが、それまでの彼女の存在は、華やかな薔薇の花そのものだった。
とくにダイアナのファッションは、世界中の女性のあこがれだった。
私自身、ダイアナがどんなドレスを着るだろうかと、興味津々でTVを見ていた。
現実の世界では、とても見られないような素敵なドレスの数々。まるでファンタジーの世界から飛び出してきたようだった。
ダイアナはショルダーを大胆に見せるようなドレスを着ても、エレガントで美しかった。
だが、ダイアナは華麗なファッションとは裏腹に、不幸な結婚生活をおくっていた。
その事実は、彼女の大胆な告白によって、世間の知ることとなった。
ダイアナとカミラ夫人の対立には、息をのむような瞬間があった。
カミラ夫人のパーティーに、勇敢に一人乗り込んだダイアナは、カミラ夫人に言う。
「夫をかえして」
それに対してカミラ夫人はこたえる。
「あなたは二人の王子に恵まれて、世界中の男性を魅了している。これ以上ほしいものがあるの?」
この話はTVの再現ドラマで見たのだが、もし、事実であるとするなら、たいへんな修羅場だと思う。
ダイアナは、結局、夫の心を取り戻すことはできなかった。
イギリス王室は、歴史的に振り返れば、様々な男女の劇的なドラマがあった。
特に印象深いのは、ヘンリー8世だ。
私は、「千日のアン」という映画で知ったのだが、アン・ブーリンという女性とヘンリー8世は結婚したいがために、彼は妻との離婚に反対するローマカトリックから離れ、イギリス国教会をつくった。
そのアン・ブーリンも男子を生まなかったため、処刑されてしまう。
アン・ブーリンの生んだ子供が、かの有名なエリザベス1世。歴史とは皮肉なもので、エリザベス1世が、スペインの無敵艦隊を破り、イギリスを海洋帝国へと向かう繁栄の礎をきずくことになる。
ヘンリー8世は強く男子の後継者を望んでいたが、実際には、エリザベス1世は男子以上に、イギリスを大英帝国へと導く。おもしろいものだと思う。
薔薇の花の香りは甘美だが、するどい棘がある。華麗なる王家の表と裏の物語。
歴史上の出来事を想うと、そんな感慨にふけってしまう。
ダイアナ ウエールズ公チャールズの最初の妃(1961~1997年)
ヘンリー8世 テューダー王朝の王(1491~1547年)
エリザベス1世 テューダー王朝の女王(1533~1603年)
長編小説連載