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「Kigali Marathon 2022」レポート(出走編)

人生初のマラソン in ルワンダ

1週間前にその存在を知り、その場ですぐに出場を決め、申込みをし、何の練習もせず、前日はバスケのアフリカリーグ決勝戦を観て夜遊びをした上で、ついに当日を迎えた人生初のマラソン in ルワンダ

って言っても、今回申し込んだのは「Run for Fun」という、全長10kmのお楽しみコース的なやつだった。それ故、僕は当日の朝まで

ま、散歩みたいなもんっしょ。
余裕っしょ。

と、完全に舐め腐っていた。

まさか、そもそも「Run」に至るまでにひと悶着あるとは…


当日の朝は、宿泊施設からスタート地点の「Amahoro National Stadium」まで、タクシーで移動した。時間に余裕をもって、朝7:00出発。しかし、多くの主要道路はマラソンコースとなるため封鎖されており、タクシーが道選びに苦戦してなかなか会場にたどり着くことができない。

仕方がないので、タクシーでなるべく会場の近くまで行き、そこからは歩いて行くことになった。走る(歩く)イベントなのに、会場に着くまでに結局結構歩いちゃってるやんけ…と思いながらも、お得意の「まぁいっか」精神でどんどん進んでいく。

予定よりも大幅に時間がかかってしまったが、なんとか会場にたどり着くことができた。しかし、そこで事件は起きた。


「あと100mやそこらでやっとスタートライン」というところで、何人かの警備員が僕の前に立ちふさがった。何事かと思うやいなや、彼らは耳を疑う衝撃的な言葉を口にした。

「Run for Fun」は、たった今スタートしたから、てめェはもうRunに参加することはできねェのさ!ガハハ、残念だったなァ!!

はあぁぁ!?


何だその喋り方は。
「ゾンビ映画とかで、イキリ散らかしてるうちに最初の犠牲者になるモブキャラみたいな言い方しやがって」と若干イラッとしつつも、時計の針を見た。公式ホームページによると「Run for Fun」の開始時刻は、8:20。現在時刻は、8:15

いや、運営。
フライングなんよ。
さすがにこれは理不尽だろと思い、僕は警備員を質問攻めにした。

なんでこういう時に限って時間厳守的な空気醸し出してんの?何を「いや、規則なんで」的な、「自分、不器用なんで」的なキャラ演じてんの?いつも時間守らなくてアフリカンタイムだの何だの言われてんのに、なんで今日はそんな厳しさ体現しちゃってんの?(実際はこんなにスラスラと言葉は出てこないが、時間についてはちゃんと言った)

納得いかないのでしばらくつっかかっていると、警備員はちょっと不貞腐れたように、

…うるせェ!!
だいたいおれ達はてめェらに用はねェぞ

と言ってきた。

「ん…会話の流れおかしくね?」と思いつつ、僕が続けて文句を言おうとした瞬間、スラッとしたおっちゃん(恐らくルワンダ人)が、僕と警備員との間にスッと割って入ってきた。

ちなみに、実際は全然違うのだが、より臨場感を高めるために、この警備員のことは「ターバンを巻いた山賊の手下」みたいなビジュアルをイメージしておいてほしい。そして、おっちゃんの方は「赤い髪に麦わら帽子をかぶり、左目には3筋の傷がある」というビジュアルだ。


おっちゃんは、警備員に対して、何やら強めの口調で抗議し始めた。そして、警備員の覚悟を問うように、こう言い放った。


いいか運営…
おれは酒や食い物を頭からぶっかけられようが
つばを吐きかけられようが
たいていの事は笑って見過ごしてやる

……だがな!!

どんな理由があろうと!!

おれは「Run for Fun」への参加を拒否する奴は許さない!!!!


って(キニアルワンダ語だったので、細かい部分は聞き取れなかったが、ほぼ正解だと思う)。

※画像はイメージです


近海の主もビビって逃げ出すくらいのおっちゃんの覇気にやられたのか、警備員たちはしぶしぶ道を開けてくれた。

ナイスおっちゃん。名も知らぬおっちゃんだけど、あんたのことは敬意を込めて「シャンクス」と呼ばせてもらう。

警備員たちを蹴散らした後に、シャンクスは僕に向かって「やってやったぜ」と言わんばかりのドヤ顔を見せてきた。

僕に対して「失せろ」と言ったわけではない


かくして、開始時刻問題でひと悶着ありつつも、僕は無事にスタートラインにたどり着き、キガリマラソンに参加することができた。

ただ、先程の「既にスタートしている」という警備員の話は本当らしく、特に何の指示もなく、スタートラインにたどり着いたらそのままシームレスにスタートしてしまった。

屈伸、伸脚くらいの準備運動はしようと思ってたのに。

ま、いっか。
これがルワンダだし。
謎の納得感とともに、とりあえず走り出した。

あ、ちなみに一応前日の受付時にゼッケンと安全ピンをもらっていたが、面倒くさかったので付けないまま走り出した。

コレに関してはその後一切咎められることはなく、結局最後まで一度も付けずに終わった。

何のための番号なのか謎

まぁこれも前日の受付時に山積みにされているゼッケンから1枚適当に選んだだけだしね。


そして、後で気付いたのだが、僕が無事にスタートできた時、そこにシャンクスの姿はなかった。

え、シャンクス参加者じゃなかったの?

どうやらシャンクスはマラソンに参加しに来たわけではなく、僕を助けに来てくれただけだったようだ。

全然助けられる義理もなかったはずなのに。なんならマラソン大会で走るシャンクスの姿も見たかったのに。僕を助けるだけ助けて、静かに去っていくなんて…カッコ良すぎか。

きっと彼は、警備員に男らしく抗議する僕を見て、将来立派なランナーになる素質か何かを感じたに違いない。

彼は後に、僕についてこう語るだろう…

まぁ「Run for Fun」だけどね


さて、ここまではスタートするまでの話をだいぶドラマティックにお伝えしてきたが、実は今回のマラソン大会で起きた事件はこれだけではなかった。

その様子については、「Kigali Marathon 2022」レポート(完走編)で紹介する。

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