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旧司法試験 憲法 平成20年度 第2問


問題

 民間の個人又は団体による教育事業、慈善事業、博愛事業その他の公益事業(以下「教育等公益事業」という。)の自律的で適正な運営を確保し、その発展を支援するため、特定の教育等公益事業につき、国が助成金を交付する制度を次の要領でつくることになったと仮定する。

 1 助成金の交付の対象となる教育等公益事業は、特定の宗教又は思想信条の信奉、普及又は実践を目的とせず、客観的にもこれと遮断された態様で営まれること。
 2 助成金の交付を行うか否かの決定は、教育等公益事業の事業主(以下「事業者」という。)の申請を受けて、内閣の所轄の下に置かれる委員会が行う。委員会の委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。委員は、独立してその職権を行う。
 3 助成金の交付を受けた事業者は、教育等公益事業の実施内容及び収支(助成金の使途を含む。)について委員会に報告し、審査を受けなければならない。審査の結果、上記1の要件を満たしていないと認められたときは、委員会は、事業者に対して、助成金の返還等を命ずることができる。
 4 委員会は、事業者に対し、いつでもその遂行に係る教育等公益事業に関して報告を求め、助言又は勧告をすることができる。

 この制度の憲法上の問題点を論ぜよ。

関連条文等

憲法
41条(第4章 国会):国会の地位・立法権
65条(第5章 内閣):行政権
66条3項(第5章 行政):国会に対する連帯責任
76条1項(第6章 司法):司法権・裁判所
89条(第7章 財政):公の財産の支出又は利用の制限

一言で何の問題か

独立行政委員会設置および公金支出の違憲性

答案の筋

独立行政委員会の設置は、自由主義的意義(三権分立)として行政国家現象の下、内閣との関係ではその権限を抑制する趣旨に適い、民主主義的意義として構成員の人事を通じて民主的コントロールを及ぼすことができるため、65条に反しない。
公金の支出については、宗教団体が対象ではなく、公金の濫費を防止できる程度の監視・コントロール(公の支配)は及ぶと言え、89条後段にも反しない。

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