旧司法試験 刑訴法 平成17年度 第2問
問題
放火事件で起訴された被告人甲は、捜査・公判を通じて、「自分は犯人ではない。犯行現場には行ったこともない。」と述べて犯行を否認していたが、起訴前に、テレビ局のインタビューを受けたことがあり、当該インタビューにおいては、「放火があったとき、現場付近にいたことは確かだが、自分は犯人ではない。」と述べていた。捜査機関が、テレビ放映された当該インタビューをビデオテープに録画していたところ、検察官は、甲の犯行を立証するための証拠として、当該インタビューの内容を使用しようと考え、このビデオテープを証拠調べ請求した。
裁判所は、このビデオテープを証拠として採用できるか。
関連条文
刑訴法
1条(1編 総則):この法律の目的
310条1項(2編 第一審 3章 公判 1節 公判準備及び公判手続):
証拠調べを終わった証拠の提出
320条1項(2編 第一審 3章 公判 2節 争点及び証拠の整理手続):
伝聞証拠と証拠能力の制限
322条1項(2編 第一審 3章 公判 2節 争点及び証拠の整理手続):
被告人の供述書・供述録取書の証拠能力
刑法
108条1項(2編 罪 9章 放火及び失火の罪):現住建造物等放火
憲法
21条1項(3章 国民の権利及び義務):集会・結社・表現の自由、通信の秘密
一言で何の問題か
ビデオテープの証拠能力
つまづき、見落としポイント
弾劾証拠
甲の自己矛盾供述の存在を立証して弁解供述の信用性を弾劾したからといって、検察官立証が成功するわけではない。
犯行を立証するためではなく、証明力を争うことが明白である場合に、検察官請求証拠を被告人の弁解供述の信用性を弾劾する証拠として使うことができる。
答案の筋
弾劾証拠では立証不十分であるところ、伝聞証拠にあたるが、伝聞例外として証拠能力は認められる。また、機械的証拠であり署名・押印は不要であり、立証事項の観点から写しでも認められる。なお、報道の自由が制約されるも、公正な刑事裁判の実現の観点から証拠排除されない。
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