旧司法試験 刑訴法 平成20年度 第2問
問題
被告人甲は、Aと路上で口論の末、その場を立ち去ろうとしたAを背後から手で突き飛ばし、その場に転倒させ負傷させたとして、傷害罪で起訴された。これに対して、甲は、「Aと口論をしたが、Aに対して暴行は加えておらず、その場から立ち去ろうとしたAがつまずいて転んだにすぎない。」旨弁解している。
公判廷で、証人Bが、「甲とAが口論しており、その場を立ち去ろうとしたAが、自分で勝手につまずいて転倒したのを私は見た。」旨、目撃状況を証言した。これに対して、検察官が、その証明力を争うために、捜査段階で得られた次のような証拠の取調べを請求した場合、裁判所は、証拠として採用することができるか。
1 Bと同様に現場を目撃したCが行った、「甲がAを背後から手で突き飛ばし、Aが転倒したのを私は見た。」旨の供述を録取した警察官作成の書面で、Cの署名押印のあるもの
2 Bが行った、「甲がAを背後から手で突き飛ばし、Aが転倒したのを私は見た。」との供述を聞き取った旨の記載のある警察官作成の捜査報告書で、警察官の署名押印はあるが、Bの署名押印はないもの
3 2と同内容のBの供述を警察官が録音した録音テープ
関連条文
刑訴法
320条1項(2編 第一審 3章 公判 2節 争点及び証拠の整理手続):
伝聞証拠と証拠能力の制限
321条1項(2編 第一審 3章 公判 2節 争点及び証拠の整理手続):
被告人以外の者の供述書・供述録取書の証拠能力
328条(2編 第一審 3章 公判 2節 争点及び証拠の整理手続):
証明力を争うための証拠
刑法
204条(2編 罪 27章 傷害の罪):傷害
208条(2編 罪 27章 傷害の罪):暴行
一言で何の問題か
1 弾劾証拠としての他者矛盾供述
2 供述者の署名押印のない弾劾証拠(捜査報告書)
3 弾劾証拠としての録音テープ
つまづき、見落としポイント
「証明力を争うために」からの弾劾証拠の想起
答案の筋
1 伝聞証拠に当たる→伝聞例外に当たらない→弾劾証拠に当たらないか
∴自己矛盾供述ではなく「証拠」に該当せず、当たらない
2 自己矛盾供述であるが署名押印がなく証拠として採用できない
∵第二過程の伝聞性(捜査員等の録取)払拭のため供述者の署名押印は必要
3 自己矛盾供述であるが署名押印のない録音テープは証拠として認められる
∵科学的・機械的方法により正確性が担保されるため録取過程の伝聞性を払拭する必要もなく、偽造の可能性については他の証拠方法同様、証明力の問題とすれば足りる
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