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放送原稿は「噛み様」を防ぐ

面白い記事を見つけました。

紙媒体の編集マンとしての心得のお話。
文章を書く際のひと工夫が、読む人への「おもてなし」になる。。。という事です。

うんうんと頷きました。

以前、こんな記事を書きました。

放送原稿の書き方についての記事です。
マガジンに入れて有料記事にしちゃったので、肝心の部分が読めないですね(汗)。
以下、丸々転載しましょうね。

■放送用原稿は作文とも学校のレポートとも違う


学校の国語の授業で皆さんが長年教わった事があると思います。放送で使う原稿というのは、それとはちょっと違います。

何が違うんでしょう?

「お盆とは」

 日本には古来より夏にはお盆という風習がある。お盆を調べると「祖先の霊を祀る一連の行事。日本古来の祖霊信仰と仏教が融合した行事」とある。
 仏教では「盂蘭盆会」と呼び、省略して「盆」となった。盆といえば、食べ物を乗せる皿等の器を置く平らな器だが、文字通りお供え物を置く器から転じた意味も持つという。本来中国の文化が由来だそうで、この時期、あの世の蓋が開き、先祖が戻って来るという考え方が元だそうだ。日本では8世紀頃、奈良時代から祖先の供養をする風習が行われるようになったという。
 本来7月15日を中心に行われていたが、明治になり太陽暦が導入されると、農繁期と重なり支障が出る等の理由から太陰暦での7月15日に近づける為、太陽暦の8月15日を”月遅れの盆”として行うようになった。


以上、お盆についての説明を、通常のレポートの形で書いてみました。
そのままで読むと…放送用には「変」…という事に気付いたでしょうか?

原稿用紙に作文で書く場合、1つの文の頭は1マス空けます。関連した文は、そのまま続けて書いて1ブロックとして、切り替える時、また次の行の頭を1マス空けます。実は放送用の場合は…少し工夫が出てきます。
そして語尾。「だ」で書くのがレポート等では普通ですが、放送でそのまま使うと偉そうです。「ですます」調という丁寧な表現で書きます。

「お盆って何でしょう」

●皆さんご存知の通り、日本には 
 昔から夏に「お盆」という風習があります。

●「お盆」という言葉を調べると…
 「祖先の霊を まつる一連の行事で、
 日本で 昔から伝わる…祖先の霊を信仰する風習と
 仏教が 合わさった行事」と、あります。
 仏教の言葉では「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼びますが
 コレを省略して「盆」=”お盆”となりました。

●さて、盆といえば…
 食べ物を乗せる”あの”お皿なんかを置く平らな器のことですよね?
 そう。お盆の際、先祖を迎える為の「お供え物」を置くための器=
 そのお盆から転じた意味も持つといわれます。
●”お盆”は、本来 中国の文化が由来だそうで、
 この時期、「あの世」のフタが開いて先祖が戻って来る…
 という考え方が元にある…とも いわれます。
 日本で、祖先の供養をする風習が行われるようになったのは…
 8世紀頃、奈良時代からだそうです。

●ちなみに…お盆というのは、
 本来 7月15日を中心に行われていました。
 ところが、時代が明治になって「太陽暦」が導入されます。
 すると、農繁期と重なるなど、不都合が出てきました。
 そこで、本来の時期=太陰暦での7月15日に近づける為、
 新しい太陽暦での「8月15日」に行なう地域が増えて、
 ”月遅れの盆”が一般的になった…ということです。


どうです?見た目のボリュームは増えましたが読みやすくないですか?

■敵は噛みさま


DJ、パーソナリティ、アナウンサーという喋り手の人たちの最大の敵こそ「噛む」事ですよね。読み間違い無く、噛まずに、スムーズに読む事が命題ですから、それを目指した書式こそ、放送原稿に大事なことです。
2つ目の例文を見て気付きましたか?

まず、タイトル自体が「なんでしょう」と優しい語り掛けですね。
読み手が読んだとしても読まなくてもいいんですが、もし口に出す時、柔らかい方が、リスナーへの聞こえ方もソフトです。

そして「●」。喋り手が原稿をパッと見た時、ブロックが一目瞭然で「ここでブレス(息継ぎ)出来る目安になります。
同様に、マメに改行する事で、そこで息継ぎしたり、言葉を区切る目安となり、リスナーに間違って捉えられる事を防ぐとともに、読み手にも、勘違いを防ぐ工夫となります。
「」と” ”… コレは ポイントとなる言葉を浮き上がらせて、見た目にもはっきりするとともに、読んでて自然に、この言葉を強調出来るポイントになります。
あと、作文・レポートで使わないのが ←この余白1文字分。
句読点とは別に 余白を開ける事で 言葉がハッキリ際立ちます。
よくニュース現場のインサイド映像等で、アナウンサーが原稿を下読みする際、ぺんてるの赤ペンで線を入れて区切ってたりしますよね。その手助けにもなりますし、突然差し込まれた原稿を「初見」で読む場合も、赤線を入れる手間が省ける意味でも 心遣いになります。

そう。放送用原稿というのは、どんな新人でも、所見でも、とにかく噛まないように(極端な話、アホでも分かるように)丁寧に書いている訳です。

もっと具体的な話をすると…
文庫本や新聞で使われるフォントは「明朝体」です。
アレだと、パッと見た時、横線が細いので 認識しづらくなります。
昔は、コピーやFAXした時、線がかすれて消えかけたりしました。
なので、放送用原稿には「角ゴシック」や「丸ゴシック」がいいでしょう。
ゴシック体の中には濃い太字のフォントも有りますが…出来れば細字の方が読み手には優しいです。なぜなら…重要部分”だけ”太字で強調した場合、ハッキリ見えます。
そして、文字の大きさでいえば…A4でワードで書く場合、せめて11ポイント、出来れば12ポイントで書いてあげる方が親切です。
11~12ポイントの場合、A4用紙1枚で、上のようなマメな改行をした原稿で1枚あたり、ゆっくり読むナレーションで1分半~2分目安となります。
もし工夫無しの埋め方だと1枚で3分半~4分目安でしょうか。
あと…さっき、マメな改行と書きましたね。
改行が多いと…余白が沢山出来ます。余白が多いと、読み手が色々メモを書き込めるので、やはり喜ばれます。

いずれの工夫も、初見で噛まない!為の工夫…と覚えて下さい。

■コーナートークの展開

原稿自体の工夫を離れます。
放送作家が原稿を書く場合も、喋り手が自ら1コーナーを構成する場合も、ある程度のパターンというのが有ります。絶対という訳ではなく、こうすれば聞く方も良く理解が出来て、気持ち良く聞き終えられる…というものです。

よく、起承転結とか、序論・本論・結論…とか言われますがアレと同じです。

まず冒頭は「つかみ」。落語で言えば「まくら」です。
そして「本題」。メインの大きなブロックです。ココも細かく分けられます。まず「疑問」。それを解決する段落。次に別の切り口からの疑問と解決。次に「ちなみに…」と続く関連ネタ。そして「結論」「まとめ」。
とどめが「落ち」。本題のまとめとは別に、例えばクスっとさせて気持ち良く着地させると後味が良くなります。

上の例:お盆ネタでちょっと工夫してみましょうか。まず「つかみ」

●先日8月16日、京都で
 毎年恒例の「五山の送り火」が行われましたが、
例年とは少し違いました。
 ご存知コロナのための対策で、5つの山に灯りをともさず、
 メインとなる大文字山”のみ”、それも「大」の字の5か所の端っこと、
 クロスする1か所=計6か所だけに火を灯しました。
 残念がる人もいましたが、灯りが見れただけでも良かった…
 という見物客も多かったそうですね。
●さて、この行事、五山の「送り火」とあります。
 ご先祖様を”あの世に送る”ということで、お盆を締める行事なんですね。

(以下、例文に突入)

お盆自体の説明と直接関係無いですが、各局のニュースで報じられて、皆さん覚えのあるネタなので、すんなり「ふむふむ」と聞き入れてもらえます。
他だと、茄子や胡瓜でもいいですし、極端な話、ドイツの都市でボンが有ります…でもいいかも知れません(いいのか?(笑))。

本題の構成については、例文と照らし合わせて下さい。
幾つかの山を作りながら、理解を深め、後半に「ちなみに」で関連したネタを合わせています。
そのまま締めてもいけますが、本題の後に「落ち」を付けてみましょうか。

綺麗に収めるなら「今年はコロナのせいで帰省出来ず、”なんだかお盆の気分じゃなかったな~という方も多いと思います。来年こそは、いつものように、家族・親類が揃って、例年のような楽しいお盆を過ごせるといいですね」…とかでもいいです。

つかみと関連させるなら「京都の五山の送り火も、ご先祖をあの世へ送る、さようならの行事ですが、長崎を代表とする”精霊流し”も同じ意味合いが有ります。いずれにしても、火を灯して送る…風情のあるお別れって、日本ならではの風習。いつまでも続けたいですよね」…なかなか綺麗ですよね。
個人的には、さださんの「精霊流し」を選曲したいところです(笑)。

今回のは一例ですが、こういう定型も、何本も原稿を書くうちに身体の中に沁みついてくるものです。まずは書いてみて、先輩にチェックしてもらって上達していけばいいです。

選曲と同じで、トークや読み原稿も、リズムが大事。

リスナーに心地よい時間を提供する大事な要素の1つですよ。
)))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))

という記事でした。

▪️まとめ

読む人への「おもてなし」という共通点が有るのも理解出来たでしょうか。
放送原稿の場合「その先」=リスナーが居るというのも有ります。聞く人たちが理解しやすいように心掛ける工夫です。聞く人たちが理解出来るという事は、喋り手も、上手くスムーズに話せる事が大事です。それも自分で中身を理解できることが。
ラジオというのは、耳だけで聞くメディアなので、リスナーは敏感なんです。喋り手が、単に文章を追って読んでるだけか?中身を理解して読んでいるか?ちゃんと判別つくものです。
よく新人DJさんは、予め渡された原稿を穴が空くほど一所懸命下読みして収録、生放送に臨みますが、慣れたベテランさんだと初見で本番に入る事も少なくありません(本当は良く無いですけどね)。
だからといって、喋り手が噛んでミスして不細工な所をリスナーに見せて(聞かせて)しまうのは、本意では有りませんしリスナーに失礼です。

だからこそ、読み原稿のさまざまな工夫は、喋り手には「噛み様対策」ですが、回り回ってリスナーへの「おもてなし」にもなる。。。という訳です。

実際ラジオを聞いてて「この人、よく噛むよなぁ」と感じる番組が有ります。勿論、喋り手の準備不足の場合も有りますが、それが特定のコーナーだとしたら、原稿を書くスタッフ(ディレクターやAD、放送作家)の工夫が足らない場合も有ると思いますよ。

逆に、喋り手がノリノリで楽しそうな番組は、スタッフの盛り上げと共に、原稿が上手く書かれている事も大きな要因の一つだと思います。

たかが原稿、
されど原稿。

言葉を紡ぐ事、文章を書く事は面白いです。奥深いです。

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