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心に残った本を挙げてみる

マシュマロで本に関する質問をいただいたのでまとめていたんですが、思っていた以上に長くなってしまったので、noteに記事としてアップすることにしました。

心に残った本はありますか?あったら教えてください.

マシュマロのメッセージより

こんにちは、おじさんです。自分は読んだ本の内容すぐ忘れちゃって、断片的な記憶しか残ってない…。そんな状態ですが、いくつか思い出したり強く印象に残っていた本を紹介します。なるべく気をつけるけど、どうしてもネタバレになっちゃうのは許してください。

アルビン・トフラー「富の未来」

物を作る工業経済から情報経済(無形資産)へと価値が移行した時に社会はどう変わるのかという視点で未来学者がまとめた一冊。2006年発行なので、もう情報としては古くなってしまったけれど、消費者が生産者となる、市場が個別化する、変化の遅い政府や教育団体は後手にまわり、変化に強い企業が力を持つ、といった内容は事実そうなったなぁと感じています。情報が多くなってくると「無用な知識」が出てきてそれを選別することが重要、というのも記憶に残ってますね。

ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」

知的障害者である主人公が知能を向上させる手術を受けたことで、自分自身や周囲が変わっていく様子を描いたSF小説。お話は主人公のチャーリー自身が書く経過報告という体裁を取っているんですが、どんどん賢くなっていく様子が手に取るようにわかって言葉の表現と翻訳の技量ってすごいと感心しました。知能が高ければ人間として素晴らしいのか、または価値があるのか。人間の幸福とはなんなのか。人間の尊厳について考えさせられる一冊でしたね。ラストは感情ぐちゃぐちゃになりました。

町田康「猫にかまけて」

飼っている猫とそこに加わった小さな猫との日常を描いたエッセイ。自分は実家で2匹猫を飼っていたことがあったんですけど、どちらも死に目に会えなかったんですよね。愛情を注いでたけど最後を見届けてやれなかった。で、この本でも猫の寿命が長くないということでずっと看病し続けるエピソードがあるんです。その猫も看病する側もボロボロになってしまい、延命するか安楽死を選ぶかというシーンがあって「この子は生きたがっている。安楽死を選ぶことで本当に助かるのは誰なんだ(私達じゃないのか)」といった表現があって…。ペットを飼う以上、命の責任があるわけで、どちらが正解という話ではないんですが、それ故に自分には刺さりましたね。

テッド・チャン「息吹」

SF短編集なんですけど、9編すべてが面白い。科学技術が発展していく中での人間の普遍性を描いた傑作だと思っています。寓話的な話もあれば、現代の技術が発展していったら遅かれ早かれ時代として到来するであろう内容の話があったり、とにかく世界観の設定が上手い。中でも「商人と錬金術師の門」「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」「偽りのない事実、偽りのない気持ち」辺りが特に好きかな。哲学的な話が好きな人にはおすすめしたい一冊。

小川一水「老ヴォールの惑星」

4編が収録されたSF短編集。SF小説ばかりでなんかすみません。地下世界に閉じ込められたり、水の惑星に墜落してしまったりと少しゲームチックな世界観が読みやすさに繋がっていると思います。ただ読みやすいからといって安易な作品には決してなっていなくて、どの作品も生きるというテーマが存分に詰め込まれていて、読み終わったあとに思わずうーむと一人考え込んでしまうくらいの重さがありました。中でも一番好きなのは表題の「老ヴォールの惑星」で、未知の生命体の文化をこんなにも想像力豊かに描けるのか、と感心した記憶があります。話の締め方も美しくて泣きましたね。

他にも「この作品すごい、こんなの読んだことない!」みたいな本がまだまだあるんですが、終わらなくなってしまうので、この辺で。

今回文章を書いていて、考えてみれば「心に残る」というのは自分の中では2種類あって、感情の変化(ギャップ)によって引き起こされるタイプと、まったくの新しい境地、未知の世界や考え方を与えてくれるタイプがあるんだなぁと思ったりしました。
そういう作品を知るためのアンテナを張っておきたいし、受け取るための感受性を磨いておきたいなぁと思います。質問してくれてありがとうございます。


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