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大豆田とわこな最近


坂本裕二作品が好きだ。
カルテットとか花束みたいな恋をしたとか最高の離婚とか。

一番最近だとドラマ・大豆田とわ子と3人の元夫を見た。
そのドラマの中でナレーターをしていた伊藤沙莉ちゃんの声で、
自分の毎日をナレーションするようになってからというもの、
なんだか毎日とても楽しい感じがする。

コーヒー豆を朝から机の上にぶちまけても、
「朝からコーヒー豆を机にぶちまける大豆田とわ子」
みたいな要領で実況してたら、
その状況がだんだんおかしくなってきて笑えてくる。
おすすめです。ドラマも沙莉ちゃんボイスでの実況も。

大豆田とわ子のドラマの中で、すごく印象に残っていて好きな話がひとつある。

とわ子が会社の社長を辞めるかどうかを迷っていた時のこと。
悩んでいたとわ子は、カフェの窓際で1人の高校生くらいの女の子が、
手を付けていないショートケーキを目の前において、
時々ショートケーキを眺めては、
参考書に向かって勉強する姿を目にする。

「頑張った後に食べるショートケーキって、どんな味がするんだろう」

その女の子を見てとわ子は、社長を続ける選択をする。
私も、もうちょっと頑張ってみよう、と。

カフェで勉強していた女の子にとってのショートケーキは、
今の私に置き換えると、何になるだろう?

ふとそんなことを考えていたら、小学校の夏休みを思い出した。

小学生の頃、夏休みになると近所の子どもたちで集まって毎朝ラジオ体操をやっていた。
朝6時30分から、近所の公園でラジオ体操をみんなでやって、
終わったらスタンプをもらい、スタンプカードが全部埋まったら、
最終日に好きなジュースが1本もらえる。

今なら自分でポンっと買えてしまうそのジュース1本(私の狙いはいつも三ツ矢サイダーだった)が欲しくて、
毎朝6時15分くらいに母親に起こしてもらい、
眠い目と起きてない体でフラフラと公園に向かい、ラジオ体操をする。

終わったら、参加した印としてスタンプをもらって家に帰る。
帰ってから結局眠すぎて布団に舞い戻ったりもしていたから、
本当にジュースのためだけに行っていたようなものだけど、
不思議と、最終日にジュースをもらうまで、私は1回も親にジュースをねだらなかったし、自分でも、ジュースを買って飲むことはなかった。

働いてお金を稼ぐようになった今、
100円のジュースは、自分のお金でいくらでも、好きなだけ買えるようになった。

それでも私は、最終日にもらったジュースの、
何かを継続的にやり遂げた後でしか感じられないあのおいしさをうすぼんやりと覚えていて、「あぁ私はあと何回、あの時と同じ味わいを体感できるのだろう」と漠然と考える。

歳をとった私は、あの頃と反対のこと、
頑張ってないのに飲むビールは、
どんなにお店で飲むいいやつでも全然美味しくないことを知った。
私だけが知る私の頑張りが、ビールの味を変えてしまうのだ。

今は、とにかくビールを美味しいと思って飲みたくて、そのために一生懸命働いている。

あの子にとってのショートケーキは、今の私にとってはビールみたいだ。


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