見出し画像

元ヤンの叔父が教えてくれた「嫁に行けなくなる」究極の交渉術とは?

「可愛く弱く愛される」ように育てられる日本女性。九州出身の私も、他人には感じよく、常に下手に出るのが処世術と教わってきた。でもフェミニストとして何とかその癖をリカバリーしようと奮闘している。

ショップでミニトラブルに巻き込まれた

ちょっと前に、とあるサービスショップで契約をした。安くなるという触れ込みで契約したのに、家に帰って気づいたのだが、お店の行き違いから、数万円のお金を多く払わなきゃ行けなくなったことが分かった。明らかにそのお店の人が言ったことが異なっていたし、金額も高い。ちなみにショップのスタッフ達は男性で、ちょっと私を舐めている?ような感じもあった。とりあえず翌日お店に出向いて、相談をしてみようと思った。でも、もしかして嵌められたのか、断られたらどうしようと心配になった。

交渉上手な叔父に相談

私には、交渉術にたけた叔父がいる。彼は九州男児の元ヤンキーなフェミニズムとか関係ないおじさんであるのだが、交渉がとても大切な業界で働いている。たぶん中高年の男性である叔父を連れて行くほうが、交渉には有利なのだろう。でも私はそれはしたくなく、叔父に交渉術を習って、自分の力を試してみたかった。そこで電話で相談することにきた。

「おじちゃんは交渉が得意だよね?こんな時どうする?」

「うーん、教えられるけど、それをしたら笛美は嫁に行けなくなるかもしれないからな・・」

マジかよ笑 叔父の頭の中では交渉ができる女=結婚できないとまで思われてるのか。

「大丈夫!そのお店の人と結婚するわけじゃないから。あと別に無理して結婚しなくてもいいと思ってるから。」

めんどくさい奴になれ

叔父は答えた。「ひとことで言えば、めんどくさい客になるんだよ。この人の話を聞いておかないとめんどくさいな、だったら聞いておこうと相手に思わせるんだ。『どういうことですか?言ってることが違うじゃないですか。そっちで解決してもらえないんだったら、この話、もうなかったことにしてもらいますけど。』とかちょっと上から目線で話すの。今のショップの話を聞いてると、絶対に店側で解決できる話だから。で、本当にラチがあかなかったら秘書に連絡させますと言って、俺に繋いでくれればいいんだよ。」

なんというAHA体験だろう・・。めんどくさい奴になるのは、私が今までの人生で避け続けてきたことだ。そういえば、そのサービスショップでは別のお客のおじさんがソファに踏ん反り返って説教しながら若い男性店員をペコペコさせていた。あー、マンスプレイニングしてんなー、と思いながら、彼らは男性だからそうするのが当たり前だと思ってた。でも女性客でも、私でも、めんどくさい奴をやっていいの?いたずらに不機嫌を武器にするのは、モンスタークライアントだと思うけど、今回ばかりは自分を守るためにやってみてもいいんじゃないだろうか?

フェミニズムだってそうだ。敢えてめんどくさい奴になることで、「こいつは無視して大丈夫な奴」から、「こいつの話を聞かなきゃまずい奴」に格上げされるんじやないか?世の中の素晴らしいフェミニストの先輩方も、めんどくさい奴になることを厭わず声を上げてきている。自分の権利を主張するコツを、フェミニズムを知らないであろう叔父に教わるなんて予想していなかった。

外国ではめんどくさい奴になれるのに

ところで前に留学をしていた国で、私は思う存分「めんどくさい人」になれた。そうならなければ、役所の手続きから日々の買い物での釣り銭まで、生活のあらゆることが立ち行かなくなる国だったからだ。大声でわめいたり騒いだりするめんどくさい人が、男女問わずそこら中にいたのも大きかった。外国語は自分をめんどくさい人間にする地平を広げてくれた。でも日本に帰って日本語を話すと、なぜか感じのいい人になりたいと思ってしまう。「これ言ったらめんどくさい女と思われるって分かってんだろ。」と言う指令が脳から全身に発せられてしまう。もしかしたらこれがジェンダーギャップ121位の抑圧かもしれない。でも外国語でめんどくさくなれるなら、日本語でも可能なはずだ。

いざショップでめんどくさい客を実践

私は叔父から授けられた「結婚できなくなる程の交渉術(笑)」を提げて、翌日お店に向かったのだった。なんどもなんども頭の中でペコペコしない自分をシミュレーションした。

昨日の男性店員さんが出てきた。

「どうされました?」

「ちょっと大変なことが起きまして。料金を多く払わなきゃ行けなくなってしまったんですけど。これって最初の話と違いませんか?」

ううー、まだ私の心はめんどくさい客になることをセーブしている。「どういうことですか?」とか言えなかった。どうしても声が感じよくなってしまう。大丈夫か、私。でもトンマナで不快感は伝えられたと思うけど。次はなんて言おう。。

店員さんはめんどくさそうだったけど、「おかしいですね。見てみましょうか。」とあっさり対応してくれた。結果、30分ほどの後、私は数万円ものお金を払わずによくなった。しかも店を出るときに他の男性店員さんが忘れ物はないかケアしてくれて、景品みたいなものをくれた。まるでソファにふんぞり返ってたおじさんのように対応して貰えたような気がした。

こんなにあっさり!?心をざわつかせてた自分は何だったの・・

晴れやかなホッとした気持ちだった。

きっと、オラオラ術とかハッタリ術やプレゼン術など、男性に優先的に教えられ、女性には隠されている秘伝が他にもいっぱいあるんだろう。それらを遅ればせながら実践して行くことで、人間として成長できたらと思う。

私をインスパイアしてくれた男性の技を盗めという考え方は「フェミニストファイトクラブ」という素晴らしい叡智の詰まった本に詳しく書いてある。https://bookmeter.com/books/12866310

で、交渉する女は結婚できないのか?

ところで叔父の「交渉術を知ったら結婚できなくなる」聞き捨てならないセリフは本当にそうだろうか?結婚というのは性交渉はあっても言葉の交渉をせず、自分と相手の妥協点を見出そうともせず、ひたすら男の言うことを受け入れて、付き従って生きるってことなのか?

私も20代の時はひたすらペコペコ男性に平伏す事で、(例え彼が人間として尊敬できなくても)結婚や出産にこぎつけなければいけないと信じていた。今でも癖で、彼氏じゃなくても男性を見るとそうしてしまう。でも女性が全部を受け入れる前提で結婚するというのは、自分という人間をなくすことではないか?自分という人間をなくして生きるには、人生はあまりにも長い。むしろ交渉術は、長い時間を同じ相手と過ごして行く結婚生活にこそ必要なのではないか?(結婚したことないけど笑。)叔父が交渉術を教えてくれたことについては感謝している。ただ、こういう価値観だけはアップデートさせていきたいな。

とりあえずこれからの人生、もうちょっとめんどくさい奴になってみよう。