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『すきだよ』B面

ずっと彼女は何か物欲しそうにしている。
何か言いたそうなのにどこか怯えてるようにも見える。
腕が痺れる前に枕から左腕をそっと外そうとした瞬間「すきだよ」と小さな声で言われた。

すぐに「オレも」と言って、おでこに軽くキスをした。
そんなこと言うのに時間がかかってたのか。
即答したのに思ったよりも彼女は満たされない顔をしている。
これが欲しかったんじゃないの?同じ気持ちだって思いたかったんでしょ。

「付き合う?」口走ってしまったかのように口紅の落ちた唇からぽろっとその言葉はこぼれた。
彼女の目が真っ直ぐすぎて見てもいられない。
「え?なんでそうなるの?」
オレも口走って強い口調で返してしまった。
その瞬間、彼女の表情がどんどん変わっていく。

聞かなきゃいいのに、自分で聞いておいてどうしてそんな顔するんだろう。
「だって私のことすきって・・・」
涙が頬を容赦無く滑り落ちていく。

オレたち上手くやってたはずなのに、そーゆーのを言わないけどお互いいい距離で好きでいられる関係でここまでやってきたはずなのに。

「すきだよ」でぜんぶ伝わるわけないよ。

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