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てのひらの物語

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さらっと読める短い物語集。 昔書いたものの再掲載がメイン。
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#短編小説

「こんぺいとうのあまさ」(お題バトル0516参加作品)

「こんぺいとうのあまさ」(お題バトル0516参加作品)

【使用したお題】

日本語、隕石が墜ちる、低気圧、峠道、愛、金平糖、ワイパー、空、飴、雨

 「100年後に地球を壊滅的に破壊する規模の巨大な隕石が墜ちる」
 それを告げたのが雑誌『ムー』ではなくて、世界各国の主要メディアのほぼ全てであり、予言でも予知でもない「95%以上確実な科学的な予測」であることを人々が理解したとき、文明というのはいとも簡単に崩壊した。
 最初の50年間は、世界はかろうじてそ

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お題小説『ウイルスは笑うか?』

お題小説『ウイルスは笑うか?』

今年こそは小説を書きたい、ということで、かつてたくさん小説を書いていたときによくやっていた「お題バトル」を、物書き仲間とやってみた。
制限時間1時間で、みんなから集めたお題を使った短い小説を書いて、見せ合うというやつ。
ちゃんと一時間で書き上げられた。新作を書くのは数年ぶりかも……。

『ウイルスは笑うか?』

【使用したお題】
森 ウイルス 花 雨 叫ぶ 笑い 20代 青空

ウイルス(ラテン語

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雪崩の街

 彼は、旅人だった。
 生来の根なし草で、荒涼と続く世界を目的も理由もなくあてもない旅を続けることが、彼の人生だった。
 だから、真っ白な雪に覆われた峻厳な山の麓に張り付くようにして存在している、その小さな街に彼が訪れたことに理由はなかった。たくさんの山と谷に囲まれたこの地に平地は少なく、あたりにはその街以外に人の住むところは見当たらなかった。冷たい風が吹き荒ぶ雪と岩だらけの荒野に、その街は取り残

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短編小説「猫になりたい」

短編小説「猫になりたい」

1.
 朝目が覚めると猫だった。
 「朝目が覚めると自分が巨大な毒虫になっていた」とかいうのが、ドイツかどっかの有名な小説にあったような気がする。
 毒虫ってやだな、気持ち悪い。猫の方がだいぶましか。
 吾輩は猫である。名前はまだない、ってね。
 いやいや、気取ってる場合じゃないぞ。これはなかなかに大変な問題だ。
 目が覚めるまでは、いや少なくとも昨夜眠りにつくまでは、僕は人間だったはずだ。会社か

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KAYO

KAYO



 インターネットってのは本当に便利だ。
 だって、あたしみたいな人間でも友達を作ることができるんだから。

 あたしは自分のブログを持っている。開設してそろそろ一年になる。
 そのブログであたしは、毎日欠かさずに日記を更新してる。
 日記といっても、その日に実際にあったことを書き込んでるわけじゃない。登校拒否で引きこもりの女子高生の日常なんて、何にも面白くなんてないから。
 だからあたしが書

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「結晶」

「結晶」

   
「世界で一番大きな雪の結晶を探しに行こうよ」
 和之が唐突に言い出したのは、街路樹のプラタナスも大半の葉を落としてしまった十二月の初めのことだった。
 繁華街に足を伸ばせば、この頃はもうクリスマス一色だ。けれど、地下鉄の駅と幹線道路のおかげで辛うじて「郊外」と呼ばれるのを免れているようなこの町にはさすがにクリスマスの足音は遠かったし、そもそも来年で和之も私も三十路を迎えるのだ。もはやクリス

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音楽小説「ハンマーソングと痛みの塔」

音楽小説「ハンマーソングと痛みの塔」

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以下の内容で記事を投稿します。よろしいですか?
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キョウコのヤツサイアク!!
もっと人のキモチ考えた方がいいよとか偉そうに人に意見しやがってあん
たなんかにあたしの気持ちがわか

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かけっこがとくいなアリさん

かけっこがとくいなアリさん

 ある都会の住宅街の真ん中の小さな一軒家の、ネコのおでこほどの小さな庭。
 そこに、とってもかけっこの速いアリさんがいました。
 仲間のなかにはだれ一人、彼とかけっこをして勝てる者はおりませんでした。
 仲間たちは彼をうらやましがって口々に言います。
「君はいいなぁ。そんなに速くかけることができたら、きっと、とても遠くまでいけるだろうに。この広い草原のずっとずっと向こうまで見に行くことができるのだ

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窓から見える駅

 2階の窓から見える、少し寂れた駅のホーム。
 それがオレの世界のすべてだった。
 オレは自分の部屋から一歩も出ることはなかったし、オレの同居人は無口なヤツで、たまにオレの方を見て何か言いたげにまばたきして見せたり、小さくため息をつく他にはオレと交流したりはしなかったから、オレはいつも窓から駅のホームを眺めて過ごした。
 窓から見える駅は、ビルの立ち並ぶ都会からはいくらか離れた、いわゆる東京のベッ

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彗星祭り

彗星祭り

 夏の日の、金曜日の夜。午後六時といってもまだ闇夜にはならず、空は絵具を溶かしたような鮮やかな紺色だ。
 いささか空調の利きすぎた上り電車。帰宅ラッシュとは逆方向だが、鼠色のビジネスマンとは別の客で、車内はごった返していた。
 狭い室内に、とりどりの和風な色彩が並ぶ。色の正体は、浴衣の生地だ。競うように着飾った若い女の子(一部の男の子も)が、思い思いの浴衣を身にまとい、慣れない下駄や足袋に歩きにく

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潮騒の夏

潮騒の夏

 高台にあるその部屋には、無音の時間が存在しなかった。
 いつでもはっきりと聞こえるのは、窓の下に一面に広がる海の、波の音。
 それは「潮騒」というのだと、夏希(なつき)は教えてくれた。潮の流れが、騒ぐと書いて潮騒。
 耳を澄ませてみれば、なるほどそれは海の水の中に無数に溶け込んでいる潮の粒たちが、賑やかにおしゃべりをして騒いでいる様子にも聞こえてくるのだった。
 拓海(たくみ)は、通っている中学

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