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てのひらの物語

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さらっと読める短い物語集。 昔書いたものの再掲載がメイン。
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#猫

短編小説「猫になりたい」

短編小説「猫になりたい」

1.
 朝目が覚めると猫だった。
 「朝目が覚めると自分が巨大な毒虫になっていた」とかいうのが、ドイツかどっかの有名な小説にあったような気がする。
 毒虫ってやだな、気持ち悪い。猫の方がだいぶましか。
 吾輩は猫である。名前はまだない、ってね。
 いやいや、気取ってる場合じゃないぞ。これはなかなかに大変な問題だ。
 目が覚めるまでは、いや少なくとも昨夜眠りにつくまでは、僕は人間だったはずだ。会社か

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