【地方中心市街地の今】日本全国不動産掘り出し情報⑧
このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。
今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」。
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年8月号』より、「田辺市」「甲府市」を紹介します。
★田辺市
「昭和のまち」なかに、新しいまち並みが
出現。今後は来るべき津波対策も
和歌山県のほぼ中央に位置し、古くは城下町・港町として、また熊野詣の拠点として発展してきた田辺市。人口は7万人ながらも、県都・和歌山市から鉄道で100㎞近く離れていることもあり、同市には県中部広域の中枢機能が集中する。
中心市街地は、JR紀勢本線南側の海岸線に近い平坦地にあり、同線北側の起伏のある一帯でも宅地化が進んだ。JR「紀伊田辺」駅に降り立つと、大規模な再開発ビルなどとは無縁の、古い中小規模の店舗やホテル・ビルなどが立ち並び、「昭和のまち」という印象を受ける。駅から南西方向、海岸線に向かって広がる中心市街地には、間口が狭く奥行きが広い古くからのまち並みが多く残っており、入り組んだ細い路地も目立つ。
駅前通りから直進した先にある「アオイ通り商店街」と、その通りから西へ折れた先にある「銀座通り商店街」の一画だけは、平成以降、既存の市街地から切り取られたかのような、近代的で統一感のあるまち並みに生まれ変わった。「沿道区画整理型街路事業」により、都市計画道路の整備に合わせ、建物の更新が進んだためだ。今後はこれらの新しいまち並みに比べ、旧態依然に見える駅前周辺の整備が期待される。
なお現在、JR「紀伊田辺」駅は建て替え中で、完成後の駅舎は、南海トラフ地震の津波被害を想定した「津波避難ビル」の機能も併せ持つという。また、津波対策という点では、建物が老朽化し、津波の被害も想定されている市役所庁舎を高台のホテル・商業施設跡地に移転する計画が具体化しつつある。ただ、市議会内でも議論の余地があり、実現には時間を要しそうだ。
同市は、少子高齢化・人口減少の中で中心市街地を活性化するという、地方都市共通の課題に加え、来るべき津波対策にも同時進行で対峙していると言える。
★甲府市
空洞化が進む中心市街地に変化。
「点」から「線」「面」への発展に期待
山梨県のほぼ中央に位置し、古くは城下町・宿場町として、近現代は県の中枢機能がほぼ一極集中的に集まる県庁所在地として発展してきた甲府市。現在の人口は約19万人で、全国で最も人口の少ない県庁所在地となっている。市街地はJR「甲府」駅南側を中心に広がっており、東に隣接する笛吹市、西に隣接する甲斐市、南に隣接する中央市とはほぼ家並みが途切れることなく連なっている。JR「甲府」駅南口には、甲府城跡や山梨県庁が立地。さらにその南側には百貨店などが立ち並ぶ目抜き通りや繁華街があり、旧来からの中心市街地には、さまざまな都市機能が比較的コンパクトに集約されていた。
しかし近年は、郊外の幹線道路沿いや隣接の昭和町などに大型商業施設が立地。東京から100㎞弱という近さも災いし、「東京」~「甲府」間では鉄道と高速バスの競争原理が働いたことでストロー効果が顕著に。また、バブル崩壊も重なり、にぎわっていた中心市街地は急速に空洞化。大型店の撤退が相次いだ他、空き店舗も増加した。
こうした中、中心市街地の繁華街では、古い飲食店ビルをテコ入れし、新
たな参入者を呼び込む動きなどが始まっている。実際、さまざまな支援策が功を奏したのか、JR「甲府」駅前から百貨店のある目抜き通り南側の一画まで足を進めると、所々に洒落た感じの真新しい飲食店などの姿も目立つ。また一部では、集合住宅と店舗の複合開発が竣工したほか、都市型ホテルの立地なども進んだ。
ただ、こうした店舗や複合開発、ホテルなどは今はまだ「点」の存在。中心市街地はもともと駐車場不足という慢性的な課題を抱えており、広大な駐車場を有する郊外型の商業施設に直接対抗するのは難しい。今後は、中心市街地で芽吹き始めたこれらの「点」を、いかにして「線」や「面」に発展させていくのかが課題となりそうだ。
※PDFファイルをダウンロードいただくと、実際の誌面をご確認いただけます
※(株)不動産流通研究所の著作物です。二次利用、無断転載はご遠慮ください
地場で活躍する不動産会社から大手企業取材し、不動産業界の最新のトレンドを紹介する業界誌『月刊不動産流通』
★★ 購読お申込み・試し読みはこちらから ↓ ★★
https://shop.re-port.net/
☆☆ noteでも試し読みができます!↓ ☆☆
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?