NIPPONまちの履歴書⑩【大工町】
このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。
★「NIPPONまちの履歴書」
今回は、「NIPPONまちの履歴書」。
編集者のお仕事をされる傍ら、各地の風景をスケッチされている村上 健さんの連載です。(制作協力:(株)エディターシップ)
『月刊不動産流通2019年10月号』より、
北前船がもたらした異空間 新潟県/佐渡市・宿根木
を掲載します。
★北前船がもたらした異空間
新潟県/佐渡市・宿根木
「まるで古い映画のワンシーンだ」。折から雨で濡れそぼった民家から、モンペ姿の杉村春子や岸田今日子が唐傘に手をふっと現れそう……。
やってきたのは佐渡島の南橋、特徴的な板壁の家並みと石畳の路地が、迷路さながらに走る宿根木(しゅくねぎ)集落です。
古くは金山と流刑地として知られた島ですが、江戸中期から明治にかけて北前船の寄港地としても栄えました。100棟以上の家が軒を寄せ合うこの集落も、交易で財を成した船主や寄港した船を修理する船大工が多く暮らしていました。いわば大工町です。
「家へ入れば、船大工の技も見られますよ」とボランティアガイドのお兄サンに教えられ、内部が公開された船主の屋敷へ向かいます。
なるほど、吹き抜けの高い窓は、帆を巻く滑車を利用して開閉する仕掛け。手の込んだ細工や漆塗りの板床など、地味な外観から想像できないぜいたくさにも驚かされます。
今も大半の家に人が暮らす宿根木。島特有の生活と歴史を背負って、時がひっそりと流れています。
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