「筆先三寸」日記再録 2005年7月~8月

2005年7月4日(月)

 えー、こんどは、komatuna さんのところから、Book Baton ちゅのが回ってきましたよ。
 私ごときにそんな、ていうか、更新する気力のないときにはとてもありがたいです。ありがとうございます。
 それでは、ネットヒッキーにしてバトンストッパーの私から、心を込めて回答をお送りしましょう。

【持っている本の冊数】
 数えたことないけど、ざっと見たところ3000冊くらいかな。
 だいぶ処分したし、このごろは読む以上には買わないようにしているのであまり増えない。
【今読みかけの本 or 読もうと思っている本】
 白川静『漢字百話』(中公新書)
 とうとう手を出してしまった。とても面白いけれども、シャーマニズムに踏み込みすぎのような気がしなくもない。
【最後に買った本(既読、未読問わず)】
 古橋秀之『ブラックロッド』(電撃文庫)
 以前から読みたくて本屋で探してたのだが、こないだ新刊書店で見つけたので、速攻ゲット(でも、日に焼けたおしてて、小口にグラインダのかけられた初版本だった)。文句なしのライトノベル。
【特別な思い入れのある本、心に残っている本5冊(まで)】
 五味康祐『柳生武芸帳』(新潮文庫)……上中下の3巻で結局未完。異様に面白い上に、私はこれ読むだけで漢字力が300%アップ。
 トム・マクナブ『遥かなるセントラル・パーク』(文春文庫)……海外エンタでは、マイ・ベスト。3000キロ大陸横断マラソンの話。
 石川淳『夷斎座談』(中公文庫)……対談集。相手は三島、安部、吉川、貝塚、花田、その他、文豪、碩学が目白押し。しびれるったらない。
 施耐庵『水滸伝』(講談社文庫)……駒田信二訳。三国志より好き。西遊記より好き。浪裏白跳張順が好き(でも、いちばん最初に死ぬ)。
 片岡義男『ラジオが泣いた夜』(角川文庫)……に、解説代わりに載ってる巻末の都筑道夫との対談。私の人生に対するスタンスはこれで決まった。
 で、以上5冊なわけですが、私が生まれ育ったSF、ミステリ、冒険小説は除きました。みすず書房とかも恥ずかしいので除きました。バースとかピンチョンとかもかっこつけるみたいなので除きました。文学史の問題に出てきそうなのも除きました。富士見ロマン文庫フランス書院文庫も除きました。
 早い話、私がまちがいなく読み終わってガッツポーズした本で、誰が読んでも首肯してもらえそうなセレクトになってると思います。
【バトンを渡す5名】
 えーと、だからこれはここでストップです。あしからずご了承ください。


2005年7月11日(月)

 というわけで、サラサラ&快適な筆記具を求めて幾星霜、先月ロットリングのSKYNNにまでたどりついたわけですが。
 これがちょっと、書き味の改善に苦労しました。ノート1行に1回くらい、文字の初画で2ミリほどかすれたりするのです。筆圧を落とすともひとつ頻度が上がったり。そこで、インクフローが渋いのかなと、切り割を広げかけてみたり、ペン先がこなれてないのかなと、トレぺの裏で延々と丸や線を書いたり(ラッピングペーパーはまだ使わない)、結構日にちを食ってしまいました。こういう、自分の癖に合わせて道具をいじるって、とても楽しいです。
 でまあ、スーパーサラサラ&ノーストレスの万年筆になったのはいいのですが、こうなると、(指にやさしいとはいえ)やはり極端なデザインが気になってきました。
 それで、今度はこんなの(ペリカン トラディショナル M200)買っちゃった。もちろんダークグリーン。太さはF。これも同じように、今育てているところです。
 とりあえず、定価1万円クラスとはいえ、ペリカンの名に恥じないできのようです。無理な力をかけなくても、A4ノートを10ページほどみっちり埋めるだけでずいぶん手になじんできました。
 いやあ、万年筆って面白いなあ。って、そんなこと言い出したら大変なことになるのはわかっていますが、どうも幼少の頃からの文具好きの血が騒いで仕方ありません。中学高校時分から、ロットリングだのステッドラーだのカランダッシュだの、少ない小遣いでシャーペンやら鉛筆やら買ったりしていたのですから。
 というわけで、つぎはLAMY2000になると思います。その次はM800を予定。その先は……ちょっと想像したくありません。

 ていうか、こうなってくると今度は、ほかの文具類が気になってきます。まず手帳。そして、筆箱の中身いろいろ。
 適宜報告いたしますが、なんかこれはこれですっごい修羅の道になりそうです。


2005年7月18日(月)

▼手帳は、ソニーのクリエを使って、すでに3年近くになるわけですが、クリエ・シリーズの生産も終わるって言うし、紙に戻すことにしました。
 それには万年筆の(あれこれ手で書きたくなったという)件もあるのですが、この春から、毎日たくさんの書き込みが必要になって、一覧性に劣るPDAではどうしようもなくなってきたのです。手帳といえば、「学生の頃は「LaLa」の全プレ手帳」→「就職後数年は能率手帳」→「その後10余年間はバイブルサイズのシステム手帳」→「現クリエ」、という経歴を持つ私ですが、どうも今さら、綴じ手帳やスーツのポケットに入らない手帳に戻る気がしません。
 そこで、最近、予定表やアドレスなんかは、エクセルでまとめてA4の用紙で(クリアフォルダにはさんで)持ち歩くようになっていたので、「超整理手帳」を使うことにしました。できあいのリフィルは一切使わず、仕事の資料やらなにやらも縮小&両面コピーで折ってはさむだけ。A4で20枚やそこらなら、突っ込んどいても余裕で薄くて細いので、かなりの情報量が収まります。メモ用リフィルもPPC用紙とかレポート用紙とかをそのまま。こりゃ楽ちんです。
 でもなあ、ファイロファックスとかとちがって、「超整理手帳使ってます」って、すっごい言うの恥ずかしいんだよなあ。なんでかなあ。クマガイ手帳とかフランクリン・プランナーとかも、たいがい恥ずかしいと思うけど、いい勝負のような気がします。私の思い込みかもしれませんけど。
 クオヴァディスあたりにしとけばよかったかな。

▼そんなこんなで、筆箱の中とかもいろいろ気になってはきているのだが、実用系文房具が面白いのは、各メーカーのフラッグシップモデルが、誰でも格安で手に入るというところだろう。ちょっと想像してみても、車や楽器や腕時計では、絶対にそうはいかない。
 万年筆でも例外ではない。骨董品や限定品を除くと、モンブランであろうとペリカンであろうと、そのメーカーの技術の粋を凝らした(すなわち技術的機能的にもっとも高度な)商品を買うのに、10万円で釣りがくる。しかも、「それ以上のもの」はない。そんなの、腕時計なら、「安物」の価格帯である(腕時計なんて、装飾抜きの素の機械部分だけでも、突き詰めるとマンションが買える値段までいく。トゥールビヨンとか)。
 製図用シャープペンシルなんて、ステッドラーの最上位機種にしても、ぺんてるのグラフギア(これ好き)にしても、千円少々である。ボールペン然り、カッターナイフ然り。金張りだったり、宝石がついてたりして、高価なのはいくらでもあるが、「機能的に頂点」という製品なら、お手ごろ価格で買えてしまう。
 だからいろいろ買い集めてしまうのかもしれないけれど、こういう、「値段と性能が比例しない」道具ってめずらしいような気がする。

▼なおちゃんとともちゃんは、「デュエル・マスターズ・カードゲーム」が大好きなので、「DMバトルアリーナ・ジェネレートリーグ全国大会予選」に申し込みました。子どもたちはもちろん、小学生以下限定の「レギュラークラス」です。ついでに、お父さんも大好きなので、年齢制限なしの「オープンクラス」に申し込んでみたのですが、これまた参加の権利を得てしまいました。
 これは大変です。なおちゃんは「水闇速攻型ガチャックス」、ともちゃんは「赤黒超速攻」という、今の流行でこそありませんが、実戦で鍛え上げた強力デッキで大会に臨むようです。私はとくに決まったデッキも持ってないので、苦し紛れに、「ボルバ1枚、ドラゴンでポン」デッキとか、「赤緑波ストライク!」デッキとかを作っては、二人に挑むのですが、ことごとく粉砕されてしまいます(もちろん、ともちゃんにもボロ負けです)。
 なおちゃんには、「お父さんどうすんの」と本気で心配されています。ともちゃんにまで、「お父さんのデッキよわいからなあ」と同情される始末です。
 なんとか当日までに、せめて1勝はできるデッキを組みたいと思うのですが、オープンクラスは、現役バリバリの中高生が中心なので……。
 がんばれ、おれ。


2005年7月25日(月)

▼昨日、とうとう行ってまいりました、「デュエル・マスターズ バトルアリーナ2005 ジェネレート・リーグ」関西A大会。
 会場が平安神宮の大鳥居の前ということで、基本どおり京都駅からバスに乗ったのだが(京都観光はバス移動が原則)、これがあんた、なんか祭りの行列に遭遇しちゃって(あとで聞くと祇園祭の一環の花傘巡行ってやつらしい)、バスも道も大混雑で、余裕を見ていたはずなのに、げっそりぐったりの上に、遅刻までかましてしまいました。まあ、行列の中心にいた、先斗町や祇園のお姉さま方が大変おきれいで、それはそれでよござんしたけれど。

〈--- 以下、知らん人にはわからん話ですまん ---〉

 で、なんだかんだでデュエルスタートは、ぴったり正午。参加者は256名(でトーナメント)のはずなのだが、200名もいなかったかも。なおちゃんもともちゃんもそんな中、かなり離れた席でそれぞれ参戦です。ピシッと座って緊張の面持ち。
 それで結果ですが、ともちゃんは、1回戦はなんとか勝ったものの、2回戦で敗れたようです。なおちゃんは、1回戦2回戦と順当に勝ったところで、3回戦負け。
 あとで聞いたところでは、ともちゃんは、2回とも相手は速攻タイプだったらしいのですが、1回戦は「幻竜砲でぎゃくてんがちしてん」というものの、2回戦は「ブロッカーいてるのに、ピーカプのドライバーでこうげきしてしもてん」と、これはプレイングミスで負けたようです。
 なおちゃんは、苦手な光タイプのブロッカーデッキにも、ハイドロで流したりして順当に勝ったらしいのですが、3人目にはバジュラでマナロックをかけられて、惨敗したとのことでした。

 それでお父さんです。とうとうデュエル大会デビュー戦です。子どもたちのついでにオープンクラスに申し込んで当たったのはいいのですが、受付に並んでみると案の定まわりは中高生ばかり。これも200人近い参加者のうち、中年男性など2、3人です。「なんやこのおっさん」という厳しい周囲の視線に耐えながら、待つこと小1時間、やっとデュエル会場に入場できました。
 で、テーブルで隣に座ったのが、珍しくも貴重な私より年上のおじさん。驚いていると、このおじさんは他の出場者(中高生)の多くと知り合いのようでした。どうも、カードショップの店長とか、デュエルロードの主催者とか、そんな感じのようです。結局、素人のおっさんは私一人ということがわかってしょんぼり。
 さて、1回戦は14歳のメガネ中学生が相手でした。デッキは想定どおり、ボルバルステロのようです。1ターン目からいきなりボルバルをマナに置かれて、負けを確信しました。ところがまあ、こちらのグランドルメスで小物を全部流したりしてるうちに、向こうはボルバルを回収して出すタイミングを逸したのか、結局私はシールドを1枚も割られないパーフェクトデュエルで圧勝。幸先がいいような気がしました。けっこう早く終わったので、隣のおじさんを見ると、デッキは容赦のないボルバルブルーのガチデッキのようで(黒まで積んでたかどうかは未確認)、これも危なげなく勝ってました。
 さて、2回戦。相手はまたボルバルです。しかも目下最強デッキの一角を占めるボルバルブルーです。まいったなあ、と思いながら4ターン目であせった私は、3体しかいないクリーチャーで、シールドに手を出すという大失敗。3匹とも殴り返されて(ガルドスまで使われた)、あえなく昇天。そのあとは出すクリーチャーを、ガルドスでつぶされ、ドルザークの効果でマナ送りにされ、私は戦線を立て直すこともできず、結局ボルバル登場であえなく終了。普段ならすることのないプレイングミスが、返す返すも残念です。
 終わってから、平安神宮に寄ったり、京都駅の伊勢丹でピザを食べたりしながら、私たちは互いの健闘を称え合いつつ、本日のプレイングやデッキについての反省点を語り合いました。3名とも今日はずいぶんと手ごたえを感じたので、楽しかったねーと顔を見合わせて微笑を交わしていました。
 ただ、約1名は違う感想を持ったようなので、ひとまずご紹介しておきます。
「あんたらは、そら出れて面白かったかも知らんけど、あたし、ずっと待ってるだけで面白いこともなんともないやん。もうぜったい行けへんねんから」
 いや、あの、まあ、なおちゃんもともちゃんも楽しかったて言うてんねんから、それはそれで、あの、よしとしといてくださいな。

▼今日の月曜日は、私は午後からの出勤でした。
 それでも、なおちゃんが初めての林間学校に出発するというので、朝早くから起きました。
 近頃の林間学校は、一泊だというのに、荷物の多いことといったらありません。なおちゃんも、2、3日前から荷造りをはじめたのですが、私の持ってるいちばん大きなツアーバッグ(バレー部が遠征で使うようなやつ)を貸してやったところ、ほぼ一杯になってしまいました。水着やタオルはいいとして、何組もの着替えやら、移動時用のナップサックまで詰め込むのですから仕方ないのかもしれません。私たちの頃は2泊3日の林間学校でも、普通のスポーツバッグひとつで十分だったように思うのですが。
 午前7時になると、「いってきまーす」と元気よく言い残して、なおちゃんは玄関を出ていきました。大きなバッグを斜めにかけて、重みで身体をはすかいにしながら、ぐんぐん歩く5年生の後姿を見ていると、理由は特にないのですが、なんだか涙が出そうになりました。
 ともちゃんも、8時半には、学校で行われている学童保育へと出発しました。小学1年生が、自分の背中より大きそうなナイキのナップザックをしょって、プールの用意の入ったビニールのバッグをぶんぶんしながら歩いていくのを後ろから眺めていると、これもなんだか涙が出そうになりました。

 夏だというのに、心が弱っているんでしょうか。いえいえ、子どもたちの大きくなった姿に、急に気づいて驚いただけ、ということにしておきましょう。
 けれど、ほんとうに大きくなったよなあ。この間まで、抱っこして保育園へ連れて行ってたのに。家の中でも、ちょっとしたことですぐ泣いてたのに。それがもう、「ほんまに、だいじょうぶやて、そんなくらい」ですから。「ええねん。じぶんですんねん。しってるから」ですから。
 よその子ばっかじゃなくて、自分ちの子も、「知らない間に大きくなる」じゃないか。


2005年7月28日(木)

 今日もテレビでやってたけど、CXの『電車男』は意外と面白い。そう感じるのは私だけでもないらしく、職場でも、ネットや2chなんかさっぱり縁のなさそうな人まで、「あのドラマおもしろいなあ」って言ってるから、けっこう人気もあるんじゃないだろうか。まあ今さら、電車男がネタかガチかなんて話はする気もないけれど、「電車男」絶賛派の私としては、なんとなくうれしいようなこそばゆいような気がする。
 で、感想その1。伊東美咲のエルメスは反則。あれ、もうなんか、できすぎのきれいすぎ。中谷美紀だのなんだの元スレ時代からあったけど、私の中では、もうあれで決まりのような気がする。なんかもう、ほんま、めっちゃエルメスやし。
 ただ、伊藤淳史のほうは、ちょっと作りすぎかな。いくらヲタでも、ああずっとヘコヘコビクビクするまいて。二十年前のわが身(及び周囲の超ヲタども)を省みてもそう思う。それとも現代のオタクの方々は違うのだろうか。
 感想その2。OPのアニメーションについて。BGMはELOで正解。ファンはどう思うのか知らないけれど、私の世代としてはバッチリ。それよりアニメの話なのだが、あれが今のセルアニメの最高レベルなんだろうか。GONZOというのが何者なのか、現役を離れた私には知るべくもないが、どうも動きが釈然としない。「板野か金田呼んで来ーい!!」と叫んでしまう、私はやっぱり四十過ぎ。
 感想その3。やっぱり、サトエリの脚の長さと、白石美帆のでかい目&サディスティックな芝居は、一見の価値あり。

 結局、見所は女優だけかよってことですが、そこがやはり、おっさんの真骨頂であると言えましょう。ほっとけ。


2005年8月1日(月)

 今の職場になってから、土曜日も半分くらい出勤しないといけなくなったので、せっかくの夏休みといえども、子どもたちをあまり遊びに連れて行ってやれない。
 親に似て出不精な子どもたちなので助かってはいるが(なにしろUSJもTDLも、沖縄でさえ、「もういい」らしい)、なおちゃんにとっては、小学生時代ラス前の夏休みである。
 というようなことも気にしつつ、昨日の日曜日には「ひらパー」へ行った。ひとつの目当てはもちろんプールである。たびたび日記にも書いている近所の市営プールでも十分大きいのだが、やはり飾りや出店も含めて非日常的な遊園地のプールは格別であろうと思ったのだ。
 開園15分ほど前について、それほど人も並んでいないので、こりゃいいやと思ってたら、開園時には私たちを先頭に、延々とした長蛇の列に変じていた。夏休み7月締めくくりの日曜日、どこの家族も考えることは同じと見た。
 期待のプールは、派手なCMに恥じぬ出来。流水プールの流速も上々で、子どもたちも大喜び。けっこうスピードの出る長いスライダーも、出口でズボーンと水に突っ込んで咳き込みながらも、「おもしろかったなー」と言い合ってたし。
 二人いっしょにいる限り、浮き輪など持たさなくても、すでに何の心配もいらない。どちらもそこそこ泳げるし、ともちゃんは、お兄ちゃんお兄ちゃんとうざがられるほどくっついていくし、なおちゃんは、泳ごうとはしゃごうと、ともちゃんから決して目をはなすことはない。私はときおり、二人をかわるがわる、投げ飛ばしたり沈めたりしながら遊んでやりはしたが、大方の時間はプールサイドでサイと二人、ぼーっと座っていた。空も曇っていて、日差しもなければ気温も高くなく、のんびり水着で過ごすには絶好の一日だった。
 ところが、そこへ突然の大雨。雷警報も出ているとかで、残念ながら早々に切り上げる羽目になった。でも、プールに遊びに行っといて、雨が降り出したら、プールから上がりたくなるのはなんでだろう。外でも中でも濡れ放題って、一挙両得なのに。得でもないか。そもそも何が得なんだ。

 そして、予定より早めに、第二の目的である「呪霊屋敷」へ。
 近頃の遊園地のお化け屋敷は、内容安定&事故防止&人件費削減のためか、ほとんどが「トロッコ&自動人形」形式なのだが(その一方の頂点が「ホーンテッド・マンション」か)、これは、今夏の特別アトラクションで、屋内仮設の「歩行迷路&人間仮装幽霊」形式なのである。
 いやあ、もう、家族でテレビCMを見ながら、ずっと話題にしていたのだが、なおちゃんもともちゃんの、いやがることといったら。
 我が子がいやがろうが、こわがろうが、そんなことを許す両親ではない。そもそも、小学生時代の夏休みに気合の入ったお化け屋敷に入らないで、一体いつ入るというんだ! 高校生になってからミニスカートの彼女と行きたいとでも言うのか! そんな惰弱な望みなど、この父が許さん! 私怨まじりだが絶対許さん!
 というわけで、なおちゃんだけは無理やり放り込んだ(いちおうお母さんつき)。ともちゃんは、現場での説得工作も通じず、入口付近の効果音ですでに震え上がっており(「あんな音楽かかってんねんもん」)、真剣に泣きそうだったので、これはさすがに私もあきらめた(来年は覚悟しておくように)。
 そして、ともちゃんと隣のショップで待つこと数分、なおちゃんとサイが出てきたので、感想を聞くと、「ぜんぜん怖いことなかった。ただ、暗いからどっちいってええんかわかれへんかって、それが困った」、「でもお化けの人が教えてくれた」というようなことで、ちょっと拍子抜け。

 そんなこんなで、とりあえず雨も降ってるし、目的は果たしたので、さくさく帰ることにした。結局、帰宅したのは、一時半ごろで、入場料がもったいないような気もしたが、子どもたちは二人とも「たのしかったー」を連発していたので、値打ちはあったということにしておく。
 しかし、外は雨でも、まだ日は高い。私は、プシュっと缶ビールを開けながら、午後の過ごし方を考えていると、サイが声をかけてきた。
「ヒマやったらDVDあるで。こないだ、みんなで見よと思て、買うてきてん」
 お、グッジョブではないか。見よう見ようすぐ見よう。ニモとかか? シュレック2とかか? それともジブリ系か?
「なになに?」
「『カンフー・ハッスル』やけど」
 どういうチョイスやそれ。
 ていうか、最高! これ以上の選択など望みようがない。さすが我が妻である。
 まあ、「少林サッカー」は家族そろって大好きというのはあるものの。「カンフー・ハッスル」は、CMのたびに見に行こうぜーと言ってて、見逃したというのもあるものの。
 ということで、午後一杯かけて、親子で、特典コンテンツも含めて、ガッツリ見て過ごしましたとさ(ともちゃんもなおちゃんも、「食い入るように」を使って短文書けって言われたら、そのまま使えるような顔で画面に見入ってたし)。

 というわけで、昨日の我が家の一日でした。長文スマソ。


2005年8月4日(木)

▼今朝のことである。夏バテのせいか、サイが、身体のだるさを訴えつつ、仕事を休みたいと言ったそうな。
 すると、自分は夏休みで、学童保育をサボってでも一緒に遊んでほしいともちゃんは、当然、「休みー。お母さん、お休みしい」と言った。
 ところが、同じく夏休みで、こちらは学童保育もなく、真剣に時間をもてあましているはずのなおちゃんは、
「あかんで、お母さん、仕事行かな。ぼくなんか、38度6分でも学校行ってんから」
 いや、あの、それは、悪かった。て、まだ根に持ってんのかい。
「そんなことないねんけど」
 持ってるやん。

▼それで、やっぱり妙なこの兄弟。
 このクソ暑いのに、家に帰ると、エアコンの設定が28度になっている。居間には西日も入るのに、それで暑くないのか。
 私が、いつもはちゃんと25度とか26度にしてるのに。で、なんやこれ、と指摘すると、
「ん? エコやから」
 わからんわ、君ら。
 小学生なら、エアコンうれしがって、部屋をギンギンに冷やして、「おおー、南極やー」とか言うて、親にアホかーとか怒られなあかんのとちゃうんか。


2005年8月9日(火)

▼黒がきれい、乾きが速い、薄い紙でも裏写りしない、褪色しない、耐水性、という広告の文句にひかれて、セーラーの「極黒」というインクを買ってみることにした(ネタ帳にしているモールスキンは、何を使っても裏写りしたおすのである)。
 それで、使ってみたいのはいいのだが、現役の万年筆は、とうぜん別のインクを入れてある。ちょっと具合を見るぐらいのことで、インクを換えるのも面倒である(内部を洗ったり乾かしたりを繰り返さないといけない)。空っぽのまま置いてあるモンブランのノブリスは、普段使いには向かないので、これも入れる気になれない。というところで、引出しの奥に高校時代に買ったプラチナの鉄ペンがあったことを思い出したので、インクを買うときに、あわせてプラチナのコンバータを買った。
 家に帰って、早速インクを入れてみた。ところが、これが書けない。インクが出てこないのである。インク瓶にペン先をつけると、しばらくスラスラ書けるので、ペン先の問題ではないらしい。どうも、コンバータからペン芯の間で詰まっているようだ。
 とりあえず、コンバータをはずして洗ってみた。首軸からペン先、ペン先から首軸へと水を出し入れして、水に汚れが出なくなるまで洗った。
 でもインクは出ない。やっぱり出ない。
 こりゃ分解だな、ともう一度洗ってから、ペン先を引っ張ってみた。抜けないのでねじってみた。いくら力を入れても動かないので、結局ペンチを使った。

 ばきばきばき。

 見事にペン芯が折れてしまいました! 折れたっていうか、ちぎれたみたいな感じ? なんで語尾上げてる? ていうか、あぼーんってこと? ひ~ん。
 首軸とペン先をつなぐ樹脂パーツがボッキリ折れたので、修理のしようもなくなってしまった。とりあえず、どこがどうなってるのか、確認のつもりでペン芯からニブをはずしてみた。もともと安物だったので惜しくはないけど、なんか残念。
 見ると、ペン芯の溝にびっしりと、粉粒状の乾いたインクがこびりついていた。よく洗ったつもりだったのに、これではインクも途切れるはずである(インクは、ペン芯の溝を伝ってカートリッジやコンバータからペン先に届くので)。

【教訓1】 万年筆は、常に使いつづけるか、よく洗浄してからしまうこと。

 ま、それはそれとして、仕方ないので、いろいろなインクの試し書き用にと、今度はパイロットの「Vortex」(安物)とコンバータを買った。
 そんなこんなで、やっとのこと、今、「極黒」を使っているのだが、これはいい。黒のクッキリ具合はゲルインク並みだし、さすが顔料インク、裏写りしないところも、耐水性も申し分ない(流水にさらしてもビクともしない)。ただまあ、顔料インクだけあって、放置禁止に乾燥厳禁で、そこだけは少しシビアのようだ。
 いよいよこれは、「LAMY2000」に入れたいなあ(あのデザインなら黒インクしかないだろう)。

【教訓2】 オヤジの趣味話は、うざいと思っても、黙って聞くこと。

▼ぜんぜん話はちがうけど、今朝、家を出たとたん、空気の感触がちがうことに気づいた。
 相変わらず、強い日差しと熱気の陰に、ほんの少しだけ、瞬きしただけで見失いそうな、さらっと冷えて乾いた風の気配があった。
 見上げると、昨日より数メートルばかり高い空があって、くっきりと濃い夏の雲の端あたりが、薄く細かく千切れかけている。
 決定。我が家のまわりは今日から秋。


2005年8月16日(火)

 八月十五日、奈良に住む伯母が亡くなった。
 母方の長姉で、私の母とは十以上も年は離れているが、気さくでやさしい、私には笑顔しか思い出せないようないい伯母さんだった。
 そう遠方でもないということもあって、小さい頃には何度か遊びにも行った。私よりずいぶん年上の従兄妹たちがいて、むしろ私の兄と仲良くしていたことを覚えている。私は、どちらかといえば従兄妹たちにはかわいがってもらう立場だった。
 伯母さんは、幼い私にジュースやお菓子を勧めながら、いつも話し相手や遊び相手になってくれるのだった。
 長じて後に、母に聞いたところでは、結婚してからいろいろと苦労はあったらしいが、私の知っている伯母にはそんな気配は微塵もなかった。
 そういえば、母がその伯母に関して必ず言う思い出話がある。終戦直後、大阪に勤めに出ていた姉に手をひかれて、「初めて電車に乗った」という話だ。それは決まって、「まちのにぎやかなのにびっくりした」とか、「電車に酔うてえらいことになった」とか、「昔の田舎の子ども」話に落ち着くのだった。

 実をいうと、伯母の見舞いには、サイと二人で十四日に行ったばかりだった。
 七月に入院したという話を聞いたのだが、今月に入っていっそう具合が悪くなったということで、やっと見舞いに行ったのだ。
 伯母は、ベッドの上で幾本もの管につながれて、呼吸も苦しげに、私に何か話しかけようとしていた。
 私も、それに答えるように、うなずきながら言葉をかけたが、伯母の耳に届いたどうかはわからない。処方されている鎮痛剤のせいで、意識が小刻みに混濁と明晰の間を行き来しているらしい。その明晰が訪れた一瞬に、私に言葉をかけようとしてくれたようだった。
 私は伯母の手を握って、(それがすでに虚しいことを知りながら)回復を祈り、励ましの言葉をかけた。結局、ほんのしばらくいただけで、付き添っている従兄に頭を下げて、私たちは病室をあとにした。
 そして、伯母は翌日あっさりと他界した。まるで、私たちの顔を見て気が済んだかのように(そんなはずはない)。

 あのとき、伯母はなんと言おうとしていたのだろう。
 私に子どもができてからは、伯母とはせいぜい正月に顔を合わせるだけになってしまっていたが、必ず言われるのが、「春になったら、子どもを連れて花見においで」だった。伯母の家の近くには古城跡があり、そこは花見の名所なのだ。そればかりは、まるで新年のあいさつのように、毎年毎年言われていた。
 でも、私は一度も行かなかった。下の子のオムツがやっと取れたころからは、たびたび行こうかなと思ったのだが、車で小1時間という近さのせいか、また来年、近いうちに、行くならいつでも、と時期を逃してばかりになった。
 だからといって、正月ならまだしも、この八月に「花見に来い」はないだろう。

 来年の春には、きっと花見に行こうと思う。よく晴れた春の一日、子どもたちと満開の桜並木の下を歩きながら、「おばちゃんが元気な間に、いっしょに来たらよかったねえ」と、残念そうに、でも笑顔で、言葉を交わしたりしようと思う。
 そのときでいいから、桜の木の陰から手招きなんかして、「あのとき、おまいに言うたんは……」って、教えてくれないかな、おばちゃん。


2005年8月19日(金)

 郵政民営化法案が参議院で否決されたので、衆議院を解散するという、小泉の八つ当たりのおかげで突然の総選挙。市区町村役場の皆様ご愁傷様です。

 ところで、面白いと思ったのは、解散後の選挙体制を見て急に小泉の支持率が上がったという報道である。むちゃくちゃなやり方なのに、とニュース番組のコメンテーターたちは首をかしげていたが、私にはさもありなんとしか思えなかったので、そっちのほうが不思議だった。「自民党をぶっ壊す」と、威勢だけはよく登場した小泉が、本気でそのつもりなのが、ここへきてやっと実感できたからである。今まで、口先の割にはヘタレな組閣や、微妙な派閥コントロールを見ていて、「うそつけー」と思っていたのに。
 周知の通り、自民党は、旧態依然とした「村の選挙」で生き残り、勝ち残ってきた。政策よりも組織、国益より地元、人格より地縁、の世界である。候補者が、街頭演説や選挙公報でどれほどきれい事を並べようと、結局ものを言うのは、「後援会」であり「町会長」であり「地元の地方議員」であり「老人会」や「婦人会」である。だから自民党は、あれほど選挙制度改革のたびに小選挙区制を進めてきた。
 しかし今回、小泉は「政策で選挙じゃ」と大見得を切って見せた。郵政民営化が争点にすべき「政策」かどうかはともかく、「反対した現職議員」(まさに自民党らしい選挙手法で勝ってきた人間)は公認せず、それらに「刺客」(小泉の支持以外、旧来の選挙手法を使えない人間)をぶつけ、なおかつ全国の自民支持層に、後者を支持せよと獅子吼した。
 これはもう、自民党総裁自ら「“村の選挙”に用はない」と宣言したに等しい。自民党の各都道府県連が、上を下への大騒ぎになるのも無理はない。自分たちが連綿とやってきたことを、親分に全否定されているのと同じだからである。
 というようなことを、大多数の有権者がおそらく感じ取っている。「どろどろした選挙は苦手だったけど、ちょっと風通しよくなるんじゃないの」と。
 だから、小泉の支持率が多少なりとも上がったのは必然であろう。ただしそれは、もちろんのことながら、国民あげての郵政民営化への賛成でもなければ、小泉独裁の支持でもない。ただの「ちょっとした期待」であり、「微妙なわくわく」である。そのへん誤解のないように。>とくに小泉君へ。

 つぎに、誰でも思いつくであろう予言であるが、9.11選挙では「自民党が圧勝する」。
 まず、マスコミは、「自民党分裂選挙」のことしか報道していない。小池百合子がどうとか、ホリエモンがこうとか、「国民新党」ができたとか。民主党や共産党など、「いちおうあるから」という、ついで丸出しの扱いである。
 おかげで、有権者の大方は、「自民Aか、旧自民Bの二者択一」を頭に刷り込まれてしまっている(公明や民主や社民や共産が、そもそも選択肢としてありうるのかという議論はさておく)。となると、小選挙区制で勝つのはAかBのどちらかしかない。他党が勝つには、「漁夫の利」しかないような状況である。
 で、どっちが勝っても、「じつは自民党」なのである。小泉は、「刺客」だか「捨て駒」だかをいろいろ送り込んで話題を作っているが、結局そいつらがどうなろうと、自民党的にウマーであることには変わりがない。「国民新党」組は、郵政民営化法案以外では当然政権につくだろうし、新党を蹴った野田聖子や平沼赴夫あたりは、当選すれば膝を屈して復党をはかるだろう。 
 選挙が終わってひと段落して、気がつくとそこらを取り込んで、自民党だけで軽く過半数行くんじゃないか。そんなことになれば、郵政や靖国で摩擦の多かった公明党は、政権から放り出されるかもしれない。そしてそして、まさかそんなことはないだろうが、民主の旧自由党組を加えて3分の2以上てなことになれば、憲法改正(のための国民投票)も可能だ。

 とりあえず今度の選挙は、もっともっといろんな選択肢があることを頭において、よく考えて投票に行きましょう。

 ていうか、どいつもこいつも、「刺客」のことを、「しきゃく」、「しきゃく」て。亀井はまだしも、アナウンサーまで。佐川急便かっちゅうねん。<それは飛脚。
 あれは、「しかく」て読むんじゃー。いちいち聞くたんびに、気持ち悪いっちゅうねん(もっと正しくは、「せきかく」というらしいが、それはむにゃむにゃ)。


2005年8月23日(火)

▼数ある百貨店の中でも、「ハイソ」、「金満」、「有閑婦人」、「店売より外商」等々という高級イメージをまといながら、貧乏人にはもっとも敷居の高かった老舗中の老舗、「三井越後屋」もとい、「三越百貨店」に、オンラインショッピングサイトのあることをご存じであろうか。
 しかも、担当者はネットマニアをターゲットにしたのであろうか、2ちゃんねらーにはたまらぬそのネーミング!(当時「sage」という名称だった。2023年9月4日註)
 さすがは老舗である。検索サイトでの上位進出を狙って、「 ヽ(`Д´)ノ ボッキアゲ! 」などと叫ばぬ慎み深さには学ぶべきものがあるといえよう。そういうことなのか。

▼2ちゃんつながりでもひとつ。
 2ちゃんねるのAAをお茶の間に持ち込んだと、いつの間にやら各所で話題になっていたdwangoのCMですが、私はむしろ、BGMで使われていた「ミコミコナース、ミコミコナース、ミコミコナース」という高速リフレインが耳から離れません。気がつくと、「ナマムギナマゴメミコミコナース、アネサンロッカクミコミコナース」とつぶやいていたりします。
 そこで検索してみると、「巫女みこナース」という18禁ゲーのテーマソング(の一部)であることが判明。思わず、ネットで探してデモムービーまで落としてしまいました。これがまた傑作(でも18禁注意)。2003年の電波ソングの代表作というのもうなずけますな。

▼超音波洗浄器を買いました(シチズンSW1500)。
 ヨドバシ梅田で、定価15000円のところを6400円。なんと57%引き。これはお買い得でしょう。
 速攻で購入いたしました。

 そもそもなぜそんな物が必要なのか、だいたいなにを洗浄すればいいのかについては、これからゆっくり考えます。

▼この土日月と、2泊3日で近場の高原へ行ってきました。車で2時間。
 山の中のコテージも涼しくて快適だったのですが、それより食べもののおいしかったのが意外でした。「意外」というのは失礼な気もするのですが、けっこう安上がりのリゾート施設だったもので。レストランのフレンチも本格的だったし、2日目の夕食は炭火で屋外バーベキューなんてのもしたのですが、牛肉が柔らかいのは当然として(伊賀牛、松坂牛の産地が直近)、竹串にS字に通して炙って食べたヤマメの塩焼きなんて、なおちゃんなんか帰ってからも「あの魚おいしかったなあ」と繰り返すほどですから。
 そんなこんなで、そばうち体験だの、パターゴルフだの、温水プールだの、カブトムシ探しだの(いなかった)、雨にたたられながらもよく遊んだ2日でした(3日目は速攻で帰った)。


2005年8月28日(日)

 ともちゃんは小学1年生とはいえ、なかなか我が強くて、親でさえもてあますことが多い。
 まず、なんでもかんでも、なおちゃんより先でないと気がすまない。朝起きてなおちゃんが先にトイレに入ろうものなら、「ともちゃんがー、ともちゃんさきやのにー」と怒る。風呂へ入るのに、なおちゃんが先に脱いでも怒る。「ともちゃん先に入るのにー」と。そんな気はなかったのに、なおちゃんが持ったおもちゃやゲームをやりたがる、というのもある。「ともちゃんがー、ともちゃんがしようと思たのにー」と。
 また、親を相手にしても、一度へそを曲げるとてこでも動かない。偏屈なのにもほどがあると思うが、叱ろうが怒鳴ろうが泣き落としにかかろうが、言うことを聞かせることはできない(ま、そういうときは、こんこんと説明しておいて、しばらく放置すると、自分で動き出す)。

 そんなともちゃんではあるが、じつは、めっちゃオトコマエなところがあるのである。
 先の週末に近場のリゾート施設へ遊びに出かけたというのは前回書いたが、その2、3日のうちでも、いくつか実例を挙げることができる。

(1)
 ホテルに卓球台があるというので、ボールとラケットを借りて、家族で体育館へ赴いた。ところが、体育館の入口で、備え付けのスリッパに履き替えるようとすると、1足たりない。ずらりと並んだ下足箱にも全然ない。たいてい人は上履き持参なので、あまり置いてないのだろうか(じつは、すぐ横にいっぱいあった。そのときは気づかなかった)。
 仕方ないので、あぶれたサイが裸足で入ろうとすると、ともちゃんは自分が履いたスリッパを脱いで、サイの前に置くのである。
「ともちゃんのはき、おかあさん。ともちゃんはだしでええから、ともちゃんのはき、おかあさん」

(2)
 今、うちの家族の間では、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」が流行っている。そこで、サイがやろうとして、「ちょっと、DSとって」と言おうものなら、ともちゃんは、電源入れて、オープニングのだるいやり取りを飛ばして、サイが自分のデータを選んではじめる直前の画面にまでしておいて、スタイラスを添えて、にっこり差し出す。「はい、おかあさん」と。

(3)
 で、コテージでくつろいでいるときの話。私が、上記のゲームをしようとして、なおちゃんのゲームボーイDSを手に取ると、ともちゃんが飛んできた。どうやら、なおちゃんのは充電が切れかけていて、インジケーターも赤色表示になっているらしい。見ると、ともちゃんは自分のDSを持っていて、私に押しつけてくる。
「おとうさん、おにいちゃんのDS、もうじゅうでんせなあかんねん。あかになってるから。なんのゲームすんの? ともちゃんのでしぃ、ともちゃんので。ともちゃんのまだみどりやから。ともちゃんのでしたらええねん」

 ともちゃんさあ、(これまでにもちょくちょく書いたけど)女心をくすぐる手管に加えて、そのオトコマエっぷりはなんなんだ。
 かてて加えて、ちょっとわがままで、服装にもうるさくて、先生相手でさえウケを狙いにいくお笑い度胸って。頭も小さくて、そこそこハンサムだし。
 くゎー、おまえ、ぜったい、もう、ほんま、めっちゃモテるぞ。そんなことでは、将来こまるくらいモテるぞ。

 うーん、たのもしいといってよいのか。どっちかというと、お父さんはうらやましいぞ。ていうか、なんかくやしいぞ。


2005年8月30日(月)

 ここ数日の買い物から。文房具インプレなど。

【PILOT Dr.Grip G-spec】(油性ボールペン/レギュラーグリップ)
 うーん、すまん、Dr.グリップをなめてた。普通のボールペンだと思って、ずっと気にもせずにいたが、これはすばらしい。
 私は、Dr.グリップなら、いちばん最初のモデルから持ってるという古い付き合いなのだが、Gスペックになって、バランスまで格段によくなってるとは。
 しかも、A-inkという、新開発のインクがこれほどとは思わなかった。もうほんと、噂にたがわずスルスルのサラサラ。水性インクのローラーボールかと思うくらい。
 どこのコンビニにもある500円そこらのボールペンではあるが、「油性ボールペン最強」の称号をさし上げたい。

【PILOT Vega 0.7mm】(シャープペンシル)
 じつは、0.3mmのシャープも筆箱には入れていて、これは「ぺんてる グラフギア1000」という製図用シャープなのだけれど、0.3mmならスリーブの細長い、グリップもつまむようにもてる製図用が最適だと思う。
 けどこれは、ガンガンガシガシ書く、タフユース、ハードユースのためのシャーペンである。ノート用なら、0.5mmよりこっちの方が絶対いい。学生さんにはとくに勧めておく。シャープに限っては、同じ太軸ラバーグリップでも、ドクグリより軽くて持ちやすいと思うし。
 それに、なんといっても300円クラスというのが素敵。
(しかしすでにこれも廃番。2023年9月4日註)

【無印良品 アルミ丸軸万年筆】
 ペン先は鉄ペンでも、ポイントはきちんとイリジウム。しかも、税込み1155円の格安。これはお買い得です。パイロットのボーテックスは1500円で期待はずれだったけど。書き味なら、無印とはいえ、ウオーターマンのクルトゥールに匹敵する(いや、これも2500円とかの鉄ペンだけど。書きやすいのよ)。1円あたりの書き味なら、世界を相手にしてもすっごい上位にランクインすると思う。
 どこのOEMだろう。ペン先の太さはFしかないのだけれど、国産のFの太さではない。パイロットやプラチナなら十分Mくらいはある(だからよけいにスラスラ書ける)。
 それにインクカートリッジの形も、ヨーロッパ標準というやつなので、モンブランやペリカン、ロットリング、ファーバーカステル、モンテグラッパなんかが使えるようである。たぶんコンバータもいけると思う。
 私は軸が太めでないと困るので、先発ローテに入れようとは思わないが、いろんなインクの試し書き用になら、もう何本か買ってもいいと思う。

【LAMY LAMY2000】(万年筆)
 はい、とうとう買いましたです。「極黒」も入れましたです。ペン先はF。描線は、上の無印丸軸とほぼ同じ太さ。店では、Mも試筆をさせてもらったのだが、はがきの宛名ならともかく、さすがに7mm罫のノートには太すぎた(とてもとても書き味がよくて、心がゆれたけど)。
 デザインは、バウハウスのっていうより、66年だからミニマリズムとかの影響の方が強いのかな。40年たっても古びない無機質で強烈なデザインは、飽きがくるのかこないのかよくわからないが、機能面に限ればヘアライン仕上げは指に吸いつくし、太さも長さも私の手には誂えたように気持ちいい。
 書き味は、まだ買ったばかりなのでエラソウには言えないが、見た目ほど硬くもなく、サラサラと書けてうれしい。あと、意外だったのはフローのよさ。描線にインクがたっぷりと乗る感じで、低い筆圧ですっ飛ぶように書いても、かすれる心配はない。というより、フローのいいペンって、書いていて楽しいのな。いやー、こいつはうれしい買い物だった。

網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』(ちくま文庫/1200円)
 昨日買って、まだ3分の1も読んでないけれど、やっぱりしびれる。『無縁・公界・楽』とか、『日本社会の歴史』も読んだけど、この方が表現もくだけてるし、具体的な気もするし、図版も多いし、いやあもうほんとにゾクゾクする。
 この著者の本って、いつも思うけれど、直接的に「歴史の事実に新たな角度から光をあてる」という感じではない。とにかく、「ぜんぜん知らんことがいっぱい書いてある」という感じである。それで、間接的に、同じ歴史がちがって見えてきたりする。で、この網野史観が、隆慶一郎の諸作や「もののけ姫」のネタ元だってのもよく知られた話だし、だからそれらの好きな人には必読としておく。
 同じ「教科書が教えない歴史」なら、こっち読めっての。

 今回はいろいろリンクしながら書いてみたけれど、アフィリエイトとかはやってないので、「むしまるごときに1円でも儲けさせるかと思うと、はらわたがねじ切れる思いがする」という人も、安心してご購入ください。
 どれ買っても、きっと損はないと思いますよ。

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