街はクリスマス一色

1999年12月4日公開


 12月に入ると世間はクリスマス一色である。と自分で書いておいて恐縮だが、寡聞にしてクリスマス色というのがどんな色だか知らないので、クリスマス一色という表現がどういう状態を表すのかよくわからない。
 たとえば、「この四角の中をクリスマス一色で塗りつぶしなさい」と言われて、あなたにはそれが可能だろうか。ちなみにカランダッシュのプロ用百数十色の色鉛筆セットを見てみてもクリスマス色というのはなかった。
 これが緑色とか紫色とかなら一色というのは容易に理解できる。四角の中といわず、丸でも三角でも、私には塗りつぶす自信がある。いい大人がえばったりするようなことでもないが、少なくともうちの息子よりは上手に塗りつぶせると思う。ただ緑一色の場合は、発を入れるかどうかについての地域性の問題もあるので、事前に検討しておくことが必要であろう。ツモピンや後ヅケについても同様である。
 いや、クリスマス一色の話である。街を見回すに、クリスマスを控えてどうやら赤と緑と金色が多用されているようである。赤と緑と白であればイタリアンもしくは大三元であるが、ここは豪気に白を金色である。ポスターを印刷屋に頼んでも、「いやあ、金は特色でっさかいなあ」と割増を取られるのである。光沢を出すために箔押しでもしようものなら、「箔使いまんの。高つきまっせ~」の金色である。さすがに年に一度のクリスマスである。太っ腹である。世間が派手になるのも仕方あるまい。
 となるとクリスマス一色ではなく、クリスマス三色ではないかという指摘をする向きもあろうかと思う。しかしどうだろう、ニュースキャスターが、ネオンサインきらめく街の風景をバックに、こんなふうに言うだろうか。
「いよいよ年の瀬もおしつまり、街はクリスマス三色です」
 いかに正確でもどこかおかしいような気がする。やはりここはクリスマス一色であろう。
 というわけで、「クリスマス一色」というのを自分なりに考えてみた。

(1)「サンタが街にやってくる」(ポピュラー)
(2)「ホワイト・クリスマス」(ビング・クロスビー)
(3)「All I Want For Christmas Is You」(マライア・キャリー)
(4)「アルコール抜きのシャンパン」
(5)「クリスマスケーキ(砂糖菓子のサンタつき)」
(6)「駄菓子の詰まったサンタのブーツ」
(7)「クリスマスツリーのディスプレイ」
(8)「クリスマスツリーのディスプレイ」
(9)「クリスマスツリーのディスプレイ」
(10)「ボール紙の三角帽子」
(11)「鼻とヒゲつきメガネ」
(12)「サンタの格好のチラシ配り」
(13)「サンタの格好のチラシ配り」

 というわけで見事にクリスマス一色のテンパイである。途中、「ママがサンタにキスをした」と「家のツリーに乗っける脱脂綿」を切ったのが悔やまれるが、「クリスマスのお父ちゃん」両面待ちである。「ジングルベルの鼻歌」もしくは「ケーキのおまけのクラッカー」ならすぐに出るとみてよい。もちろん、ここは即リーしかあるまい。

 あ、「広瀬香美」引いてしもた。

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筆先三寸/むしまる
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