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『なまいきシャルロット』~子どもが主人公のフランス映画

私が好きなフランス映画の中から、思春期の女の子が主人公の作品を1本紹介します。

タイトルは、なまいきシャルロット (L'Effrontée) 。公開は1985年です。

日本のスラングで『中二病』という言葉があります。

これは、「思春期特有の自己中心的で奇抜な行動や発言、または現実離れした妄想にふけるような態度」だと、Cくんが教えてくれましたが、まさしくそういう態度の女の子が出てくる作品です。

しかし、舞台がフランスなので、たとえ中二病だとしても、日本人の私には、「フランスらしくておしゃれ」に見えた映画でした。

今見ると、また違った感想を持つかもしれませんが。


ストーリー:ひと夏の物語

ある女の子のひと夏の話です。

13歳のシャルロットは、繊細な性格ですが、攻撃的でもあり、まわりにイライラをぶつけて、たいていふくれっ面か、泣きそうな顔をしている女の子です。

この子を、まだ若かったシャルロット・ゲンズブールが演じています。

演じているのか、ほとんど地でやっているのか、そのあたりは不明です。

シャルロットは、あるとき、街にやってきた同い年の天才ピアニストの少女、クララに憧れ、彼女と一緒に旅に出る夢を思い描きます。

とくに大きな事件は起こらず、小さなエピソードを積み重ねた映画です。

シャルロットの不安定な心の動きが静かに描かれている、わりと地味な作品だと思います。

誰も彼もキライ

シャルロットは中二病ですから、「何もかも気に入らない」という気分がデフォルトモードです。

イライラしてまわりの人に当たり散らしています。でも、ときどきぼーっと物思いにふけります。

「ああ、それ、わかる、わかる。私も12歳ぐらいのときそうだった。と言うか、今もそうだけど」と共感する人もいるかもしれません。

シャルロットは誰彼となくつっかかっていきますが、回りの人がいちいち気に障るんです。だから、みんな、キライ。

でも、一番キライなのは自分自身です。

オーデコロン

印象に残ったのはシャルロットがルル(近所に住む少し年下の女の子でメガネをかけている)のおなかにオーデコロンを塗ってあげるシーン。

細くて長い指で、すごく大胆に塗ります。

あんなにオーデコロンをおなかに塗ってしまったら、臭くて眠れないんじゃないないかと思うほど。

映画のおしまいのほうで、シャルロットはこのオーデコロンをルルにプレゼントしますが、ルルはびんからほんの少し指に取って、首筋に大人っぽく塗ります。

シャルロットの「大胆塗り」と、ルルの「繊細塗り」の対比がおもしろく、私は「ルルのほうだな、やっぱり」と思いました。

シャルロットのお父さん

出番はそう多くありませんが、シャルロットのお父さんが、いい味を出しています。

お父さんは工場で働く職人(旋盤工みたいに見える)ですが、いつも疲れています。突然、すっとんきょうなことを言い出す娘にちょっと手を焼いていますが、かわいがってもいます。

このお父さんが、朝、どんぶりのように大きなカフェオレカップで静かにコーヒーを飲んでいます。カップのふちはうすいピンク色。

私にとってはおしゃれな、フランス人にとっては、どこにでもあるきわめて当たり前のどんぶりカップでお父さんがコーヒーを飲んでいると、シャルロットがやってきて、「私、ピアニストと旅に出る」と言い出します。

「おまえと話をするには、コーヒーを3杯、飲まねば」。お父さんは、そう言いながら、どんぶりカップにコーヒーを注ぎます。

フランスの人はミルクコーヒーを飲んでいるはずですから、あんなに大きなどんぶりでも、3杯ぐらい飲まないと、カフェインキックを得られないのだな、と思いました。

もうひとつ、夜中に、お父さんがテレビをつけっぱなしにして椅子に座っていると、またシャルロットがやってきて、唐突に、本人にとってはきわめて切実な質問をするシーンも、じんわり笑えます。

このシーンについて詳しく書くと、ネタバレになるので書きません。

お父さんは物語の中で特に重要な役割は果たしていません。

しかし、おせっかいなことをせず、一歩後ろに下がっているからこそ、シャルロットがひと夏の体験を通して少し大人になれたのだと思います。

ミニマムなワードローブ

シャルロットはあまり服を持っていません。白い長袖シャツにデニムのミニスカート、ジーンズ、フランスによくある横縞の長袖Tシャツ(マリニエール、marinière)、小花柄のワンピース。

私が覚えているのはこれぐらい。

特に白いシャツにデニムのミニスカートまたはジーンズの組み合わせは、本当によく着ていて、「あの子、服、あれしか持ってない感」が出ています。

でも、シャルロットは、細くて手足が長いから、おしゃれに見えます。

このまま『オリーブ』(という雑誌があった)のモデルになれるな、と思いながら見ていました。

今、私はブログに「本当におしゃれな人は、服をそんなに持っていない」と書いていますが、この映画や、同時期に見たフランス映画の影響が多分にあります。

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まわりの人に愛されているのに、常に不機嫌なシャルロット。中二病のときは、他人のことまで気が回りません。

まだ子どもですから。

親になってから見ると、自分の子どもにもう少し理解を示せるようになるかもしれません。

フランス映画ならではの独特な雰囲気も楽しめるので、映画好きの方はぜひチェックしてみてください。

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筆子|ブロガー
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