僕が知っている朝はもっと鮮やかなはずだ。

寝たのか。起きていたのか。
そんなことすら判別がつかない。
眠い。
けれど、外は明るい。起きよう。


その気持ちと裏腹に力は入らない。
やっと動かせた僕の左手は、なぜか、無意識に携帯のSNSを一通り触り始める。

LINE、Twitter、Messenger、Facebook、Instagram。


仕事に関わる連絡が来ていたらすぐに返信しよう。
そんな僕の自分ルールがこの癖を作ったんだろう。
憎たらしい。


働かない頭、うまく目線が定まらない僕をよそに
携帯からは溺れるほど輝いている情報がなだれ込む。
朝から胸焼けがする。
僕には黒い何かがあるんだとやっとわかった。



才能を輝かしている人、注目を浴びている人、どれもが近しい人たちだ。
自分とそう年齢も変わらない人たちだ。
いいねの数、フォロワーの数がわかりやすい。
僕は少ない。彼らは多い。
鋭く、太い針たちだ、全く。やめてくれ。
俺には価値が少ないって見せつけられているみたいだ。やめてくれ。
そんなことを考えたくないんだ、考えるのをやめてくれ、俺。


なぜかわからない、涙がじわっと出てくる。
空気を吸っても自分の体に入らない。
指が痺れてくる。
これが朝なのか。
僕の知っている朝はもっと爽やかで、何度も迎えたくなるものだったはず。


何に対しての気持ちなんだろう。
なんのラベルをつけてこの気持ちを標本したらいいんだろう。
わからない。
わからない。
わからない。


言葉が欲しい。
俺は何者なんだ、言葉が欲しい。


こうありたい、こういう世の中の時間が増えたら幸せだ。
俺の好きなことはこれだ、これだ。
そう思って起業してる。
それは嘘じゃない。
その道程が苦しいんだ。
今、しんどいんだ。


あ、今日は事業を進めていく話し合いがたくさんあるんだった。
今の自分を丸ごと認めて、辛いけど、しんどいけど、先が見えないけど。
いつかやってくる僕の輝きを心に灯して、そのために転がっている目の前のあれこれを粛々と実行していこう。


そう言い聞かせてる僕はまだ空気がうまく吸えていない。
これが現実だ。

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