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現在の日本のインフレを紐解き、将来を見据えて「移転支出」を考える

今回は基本的な政府支出という議題ではなく、移転支出に関して話してみたいと思います
前起きが長いですので、理解のある方は読み飛ばしてくれていいと思います


◼️日本経済は寒冷化している


日本人の多くが貨幣数量説に囚われ、お金の総量を増やすと貨幣の価値が下がると考えています
また国債を発行することで、ハイパーインフレを起こすと考えてしまっている人も未だに存在しています

しかし現実、お金の総量、巨額の国債発行によりそれを大幅に増やしてきた米国は、緊縮財政派の人達の想像に反してドル高になりました

たしかに米国のインフレ率は上昇しましたが、そのことの原因は何でしょうか
コロナ禍、ウ露戦争による米国内のコストプッシュインフレの存在を忘れてはいけません
単純に、貨幣供給による財政インフレのみだと捉えてはならないと思います

また、日本がコロナ禍で財政支出を増やした際にハイパーインフレになったでしょうか
答えはNOです
日本のCPI、インフレ率の上昇は、主にウ露戦争による原油、穀物等の原価上昇、コストプッシュによるものです

これは統計的に確認が可能です

興味のある方は、日銀のサイトから国内企業物価指数、輸入物価指数の資源別での詳細項目、その推移や時期などを確認してみてください
※現在は、原油価格がだいぶ戻ってきましたので、2022〜23年前後の統計を見て確認することをお勧めします
より分かりやすいと思います

※日本は、コロナ禍に於いて真水77兆円の国債を発行したものの、米国の巨額な財政支出(当時の為替レート、日本円にして2年間で約800兆円の財政支出をしたと言われています)と比較してあまりに規模が小さかったため、円は売られドルが買われた結果、米国のドル高により相対的に円安になったというのが私の大雑把な感覚です
ポンド、ユーロ、豪ドル等も勿論ドル高による煽りを受けています

このことの後にウ露戦争によるコストプッシュが起き、それが重なり、日本の消費者物価指数の上昇に繋がっていきました
ドル高と輸入資源の原価上昇によるCPIの上昇によって、日本国民の庶民の財布の中身は寒冷化していきました
こと日本経済に於いては全く温暖化ではないといっていいでしょう


◼️対外比で捉えることの重要性


日本はこの30年間、明確に緊縮財政を敷いてきました
財政均衡主義という、歳出と歳入をバランスさせるという緊縮財政政策です

日本のGDPの過半数は内需です

財政均衡主義を取るということは、日本国内のお金の総量を極力増やさない≒微増程度にしか増やせない政策だということです
これは事実上、貿易(準輸出)のみで成長していこうという思考のようなものです
日本のような内需国に於いてこれはあまり賢明ではありません

日本だけで見ると増えて見えますが、米中英等と比較してマネーストック増加率が微増でいた近年、諸外国が日本より政府支出増加率を増やしてきたこの間、日本はじわじわと取り残されてきました
日本は、多くの諸外国の適度なインフレ率適度な物価の上昇率から凡そ30年に渡って置いてけぼりを食らっていたのです

直近の日銀、マネーストック速報を見ると、M2の前年比増加率は23年5月以降1%代と低迷です
総務省統計、消費支出がずっと低く推移していることなどからも、明らかに今の日本経済は一般庶民にとって厳しい状況だといえます

経済は、決して日本国内のみで考えてはいけません
実質実効為替レートが何故これほどまでに低下したか等も、必ずそこには対外比での相対的な要因、原因が存在します


◼️コロナ前から起きていたシュリンクフレーション


日本はコロナ禍が起こるずっと前から、他国(貿易相手国)のインフレによる輸入物価に翻弄されて来ました
日本と貿易する際に、相手国は日本の物価、経済状況などを考慮してくれません
そのことで日本で起きていたのが、貿易相手国の輸出価格の原価上昇(コストプッシュ)によるシュリンクフレーションです

日本は長いことデフレ低インフレでしたから、海外から輸入するものは必然と徐々に、年々高くなってきました
しかし、日本国内の実質賃金はずっと減少傾向、可処分所得は一向に増えませんでした
度重なる消費増税、またステルス増税を行ってきたため、所得、消費の平均伸び率が減少してきた故でした
個々人の購買力は高くなりようがなかった訳です

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話を戻します

物価が高くなると消費者は買い控えをします
基本、持っているお金以上のものは買えません
よって企業は、商品価格を据え置きながら、商品の個数をこっそり減少させたり、内容量(グラム数等)を減らす形で対応を取って来たのです
これがシュリンクフレーションです

このステルス値上げの茹でガエル状態が長く続いてきた矢先のコロナ禍、戦争禍でした
しかし、これは例え「それ」が無かったとしても、日本は遅かれ早かれ、諸外国の輸入資源の原価上昇によって、近年のようなコストプッシュインフレに襲われていたと言えるでしょう

日本に必要なのは、積極的な財政政策です
少なくとも「貿易相手国と同等のインフレ率」に追いついていかないといけません
そのためには、緊縮財政を敷いた凡そ30年前の誤った財政政策の反省、転換が必須です

◼️重要性を増していく移転支出

また、日本人はその「将来不安」から貯蓄傾向が非常に高いと考えられます

日本経済の復活に必要なのは、緊縮財政からの脱却と、大胆な積極財政政策です
そして、将来不安を取り除く「移転支出」の大幅な増加です

将来、確実に暮らしていけるだけの年金が全ての人に約束されていたなら、未来に悲観することなく国民は今あるお金を使うことが出来るようになるでしょう
老後の不安こそがお金を使えない環境を作り出している強い要因の一つです

若い世代に関しては非常に薄給です
当然、お金を使いたくても使えません
緊急に対策が必要でしょう

そして氷河期世代はさらに深刻です
当時、彼らを手厚く手当て、保護していたならこれほどの惨状にはなっていなかったことでしょう
別途、国家賠償が必要といえるレベルです
財政政策の誤りによって、多くの人々の人生が壊されてしまったのです
氷河期世代の人達だけが能力不足だったとは考えられませんし、それはあり得ません

そして少子化を食い止めるためにも、大胆な移転支出、給付が必須です

注)労働が貨幣を生み出すのではなく、政府、中銀がお金をこの世に生み出しています
私達が納めている税を含め、全ての日本円は日銀が、そして硬貨は政府が生み出しています
通貨発行による貨幣の供給は技術的には無限ですが、現実的にはインフレ率が制約となります


◼️自動化の加速で供給能力は飛躍的に上がる


しかしそう遠くない将来、主に先進諸外国では第四次産業革命によって、供給能力の天井が飛躍的に上がることは想像に難くないです
日本も、米中などから少し遅れて、その波が訪れることでしょう
勿論、需要に見合う以上の供給はしないでしょうが、その能力は飛躍的に向上します
その際の特化型AIや汎用AI搭載の産業機械等の普及の度合いによっては、多くの技術的失業が発生する可能性があります

2040年前後には、自動化による技術的失業は4割程度になるという説があります
しかし仮にそれが半分の2割程度に留まったとしても、日本の失業者数は1300万人を超える計算になります
その失業者を全て生活保護で、というのは果たして現実的でしょうか?
私は、ベーシックインカムの導入が最適解だと考えます

金本位制が過去のものとなったように、労働本位制もまた過去のものとなっていくでしょう

こうしたことから将来の経済学では、完全雇用の概念を用いたものはあまり意味を成さなくなると思います
経済学は、より需要と供給に特化していくことでしょう
完全雇用の概念は終わり「移転支出」はその重要性を増していくと考えます

※勿論、未来のことなのであくまで予測の話です
また、産業機械の拡充には相応のエネルギーが必要になります
出来るだけ自国のエネルギー自給率を上げることが、長期的な輸入インフレの対策にもなり、未来の投資に必須な条件となります

◼️ベーシックインカムが必須になる未来


消費性向の高い低中所得者が、将来に悲観することなくお金を使えるようになれば、内需は活性化し、巡り巡って企業も富裕層の人達もより豊かになります

税は、あくまでその格差を解消するためにあるべきですし、より累進制を高めることでインフレを調整していくべきなのです
また、政策によるインセンティブに対して調整することも税の大きな役割です

広く時間軸をとって俯瞰して見た場合、将来的に移転支出≒国債発行による給付やベーシックインカムは、高い確率で必須となります

ベーシックインカムに関しては過去、詳しく記事を書いていますので(以下、リンク参照)実現性があるか考えてみてほしいです

◼️UBIの必要性と可能性、人々の意識改革と生存権について


https://note.com/fubuki_hyou/n/ne44cc147f91e

ここでは、ベーシックインカムについて詳しく書いています

生活苦
によって、また、将来を絶望している人に特に読んでほしいです

と…同時にこの経済政策は、さほど遠くない未来の「特化型AI等による産業機械の普及による多くの技術的な失業」汎用AI、AGI、ASIによる失業者を救う最適な政策になり得ます


追記、参考

◼️本当に怖いのは、緊縮財政による供給毀損である


https://note.com/fubuki_hyou/n/n4ceaf788fc06

ここでは、経済のことについて書いています


◼️需要が先


経済は需要が先です

供給サイド、サプライサイド側に立つ経済学は根本的に誤っています
また、かなり古くなったと学問といっていいと思います
供給力を上げる前提として、それに見合う需要があってはじめてそれは成り立ちます
先だつものが無ければ商品は売れず、在庫になるだけなのです(在庫になる過程の仕入れ段階等はGDPに含まれますが)

人々の購買力、需要があってはじめて経済活動は成り立ちます
古典派経済学に於けるセイの法則は、上記のことから逸脱しているため論外といえます

私達は、サプライサイド経済学、金本位制、税財源論、人力労働本位制などから完全に脱却し、知識をアップデートしていかなければなりません

どんな経済学より、実体経済の結果、統計が正しいです
改竄されたものでなければの話ですが



今回は少し長くなりました
タイトルで言おうとしたことにたどり着くまでの話が長すぎました

最後まで読んで頂いた方、ありがとうございました

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