「世界最古の社会課題」の解決に挑みたいあなたへ(夜の世界と社会をつなぐNPO理事長の月報:2024年5月号)
こんにちは、風テラス理事長の坂爪です。
1.【近況報告】連休は新潟の山登り
大型連休は、単独で関川村の光兎山、そして妻&長男&次男と一緒に角田山に登ってきました。
光兎山、標高(966m)の割にハードな山でしたが、新潟百名山の一つで、眺望がとても良い山でした。お天気にも恵まれて、山頂からは日本海~飯豊~朝日連峰が眺望できました。
元々高校では山岳部だったのですが、思春期をこじらせて一年ちょっとで辞めてしまったので(詳細は拙著『孤独とセックス』を参照)、青春のやり直し&体力づくり&仕事のストレス解消&趣味の昆虫探しの一石四鳥の活動として、数年前から新潟のメジャーな山をコツコツ登っております。
新潟百名山、今のところ22座を登ってそれなりに体力もついてきたので、今年は高校の時に登れなかった巻機山、高校の時に山岳部の皆で登った火打山にチャレンジしたいなと考えています。
2.【コラム】「世界最古の社会課題」を解決するために
3月から募集を開始したソーシャルワーカー・協力弁護士・インターン・プロボノ、全国各地から多くの方々にご応募を頂きました。改めて感謝いたします!
今月の月報では、新しく風テラスに参加してくださる方、そしてこれから参加や寄付を考えてくださっている方に向けて、コラムをお届けします。
風俗の起源は、言うまでもなく売春です。売春は、医師や軍人と並んで「世界最古の職業の一つ」と言われていますが、「世界最古の社会課題」の一つでもある、と私は考えています。
有史以来、多くの国家や宗教が、「社会の秩序や風紀を乱す」「犯罪の温床になる」「人間としての尊厳を傷つける」等の理由で、様々な法律や教義の力を使って、あの手この手で売春をなくそうとしようとしてきました。
しかし、売春の撲滅に成功した国家や宗教は、歴史上、一つも存在していません。お酒や不倫と似たようなものですね。
法律で規制するだけ、倫理や道徳を説くだけでは、売春及びそれに付随する問題は、決してなくならない。
そうした中で、現実的な対応として、売春が行われている場所や空間を、表社会から物理的に隔離した上で、その場所の中で行われていることや、その場所からはみ出した部分については、見て見ぬふりをする、という「隔離と黙認」政策が取られてきました。
特定の地域に外囲い=郭(くるわ)を作って、その内側に売春に従事する女性(娼婦)や事業者を集める「集娼政策」はまさにその一つですが、無店舗型(デリヘル)の営業を合法化し、風俗店とそこで働く女性たちを物理的に見えないようにしてインターネットの世界に追いやったことも、「隔離と黙認」政策の一環でしょう。
隔離と黙認を徹底すれば、表向きは健全な社会を維持することができる。しかし、隔離された領域の中、黙認されている領域の中では、何も変わらずに、様々な不幸や被害が延々と発生し続けることになる。
結果として、売春の問題は「世界最古の社会課題」の一つとして、今日まで未解決のまま、放置されてきました。
法律も効かない。倫理や道徳も効かない。隔離と黙認をしても、問題が見えなくなるだけで、決して解決はしない。ではどうするか。
私たちはこの問いに対して、ハームリダクション(危害の低減)というアプリーチを通して、一定の解を出すことを試みています。
社会の中で孤立・困窮している人が、売春や風俗の世界に参入する理由は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、「今日の不安」です。生活費、家賃、学費、子どもの養育費、借金、カードの支払い、売掛の返済などに関する経済的・精神的不安が目の前にあり、それを解消するために、即日で高収入が得られる(と思われている)この世界に参入する。
2つ目は、「選択肢の欠如」です。今日の不安を解決する手段が他にない=選べるだけの選択肢がないので、目の前にある「即日高収入」という誘い文句に惹かれて、この世界に参入する。
こうした「今日の不安」と「選択肢の欠如」については、もちろん原理的に解決が難しいものもありますが、実際は、その大半が「適切なタイミングで、専門家や窓口に相談すること」そして「適切なタイミングで、既存の制度や社会資源を活用すること」によって解消できるものであると私は考えています。そう、風テラスが日々実施している、法律相談とソーシャルワークですね。
助けてくれる人は必ずいるし、利用できる選択肢も、実はたくさんある。
現時点で専門家や窓口がいない・少ないという問題があったり、社会資源が足りないという問題はありますが、だとすれば、作ればいい。増やせばいい。開拓すればいい。そうしたソーシャルアクションも、NPOの仕事です。
そう考えると、NPOとしてソーシャルワークとソーシャルアクションを積み重ねることを通して、誰もが「今日の安心」と「明日の選択肢」を得られる社会を実現することができれば、売春や風俗の世界への
①望まない参入(他に選択肢がない)
②望まない継続(やめたくてもやめられない)
③望まない出戻り(他に仕事や居場所がない)
を減らすことができる。そうすれば、売春や風俗に関わることによって生じる被害や不幸を最小限に抑えることができるはずです。
売春や風俗が社会から無くなることはありませんが、ある人が様々な事情でこの世界に関わったとしても、その過程で、その後の人生を狂わせるような深刻な被害や重大な不幸を経験することなく、ダメージや後遺症を最小限に抑えた上で、スムーズに昼の世界に移行・復帰できる仕組みが社会的に整備されれば、社会課題としての売春・風俗は「解決した」と言えるのではないでしょうか。
もちろん、太古の昔から連綿と続いている社会課題を、一世代でスッキリ解決することはできないかもしれません。ハームリダクションだけが唯一の解である、と言い切ることもできません。
時代の変化に合わせて、様々な世代・職種・価値観の人が関わって、それぞれの強みや個性を活かして、この「世界最古の社会課題」の解決を着実に進めていける組織を作り上げていきたい。
そのチームの一人として、この記事を読んでいるあなたに、ぜひ、インターンやプロボノ、寄付者として、風テラスに関わってほしい、と願っております。
「世界最古の社会課題を解決する」という困難な、しかし挑みがいのあるテーマにグッときたぜ、という皆さまからのご支援・ご応募をお待ちしています!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?