世界遺産 廬山〜陶器の郷 景徳鎮。 (後編) 2015.10
廬山
天候に恵まれていなかったのもあるが、ふとすると深い霧が立ち込め、数メートル先が全くみえなくなったりする。まるで、ここにいる人間達全てが水墨画の中にとり込まれてしまうような感覚。。。
この辺りはすでに山の上にあるので、峰に向かって登山というよりかは、散策に出るという感じ。公園内にはいくつかの景勝スポットが点在するが、雨も振り出し、視界が広がっては、また霧に閉ざされるの繰り返し。
それでも少し歩き数箇所、散策してみたが特に写真もうまく撮れず、これは割愛したい。
廬山三石
何はともあれ、郷土料理。
廬山には " 庐山三石 lu shan san shi ルーシャン サンシィ "と呼ばれる三つの特産物がある。石鸡、石鱼、石耳の三つ。
” 石鶏 "は、カエルのことである。中国ではカエルを " 蛙wa "、
または " 田鸡tian ji "と呼ぶ。廬山には、渓流の石洞に住むカエルがいて、これを石鶏と呼んでいる。
灰色に黒い紋、大きさは200〜400gほどの大きさで、亜熱帯にして湿潤な気候がこのカエル達の生育に適した環境なのだとか。
確かに、カエルは発達した後ろ足、骨格、肉付きが鶏とよく似ているし、その食感も鶏と類似すると言われる( ちと違うが )。声をあげて鳴くことも踏まえて、鶏という表現に合点がいく。
この石鶏は、青蛙、牛蛙と比較して遥かに美味しいと評価されている。
” 石魚 "は、武寧料理でも食した” 棍子鱼”の乾燥してないもの。
” 栉鰕虎鱼 jie xia hu yu "という澄んだ渓流の魚。
小さな魚だが、風味の良さが格別で貢品とされてきた魚。
湖北省のある県では、春から初夏にかけて漁をすることから” 春鱼chun yu "と呼び、安徽省のある県では、麦の収穫期に漁をしてその形も麦のようだから " 麦鱼mai yu "と呼ぶらしい。
料理は卵と炒めたもの。料理名にある " 爆 bao バオ "は、中華炒めの最大火力を意味する。綺麗な渓流の小魚を引き立てるには、卵の優しい食感や風味を生かして、、、なんて日本人料理人的なことが口から出そうになりますが、一口で納得。
魚、卵、共に香ばしさの追求です。香ばしい卵に負けないだけの強い風味を発揮する魚でした。揚げ物的なオムレツと表現できます。
” 石耳 "は、廬山の岩崖に生える木耳(きくらげ)のこと。
木耳は普通、樹木などのある藪に生えるが、石耳は岩の上に生える。日本では” 岩茸"と呼ぶもの。
料理は、豚の骨付きのバラ肉を煮込んだスープに石耳が入っている。栄養価が高く薬になるだけあって、滋味に感じた。食感も普通の黒木耳とは違ってとてもおいしかった。天然物だろうか。。。廬山の岩山に限らず景色を眺め、その後に食すその土地のモノのなんたる旨さ、旅の醍醐味は世界共通。
廬山ビール
夜食も忘れず。
看板の、” 早中晚餐 zao zhong wan can "って、
=” 朝 昼 晩 メシ "、24時間?営業しているのだろうか。
ここで、調理の仕方は語るまい。夜風にあたり、ビールを飲む、、、
それでいいのだが、山鶏さんの毛毛はもう少し丁寧にならんものか。
” 山鸡 shan ji シャンジー "は、雉の事、って日本でも山鶏と書くことがあるらしい。。。
(日本人が日頃あまり多く使わない漢字って、結構中国語そのままだったりする)
水墨の眺め
天気がどうもよろしくないうえに、人混みと合間って不本意ながらも早めに引き上げることにする。
車で峠道を下っていくと、途中で瞬間瞬間に霧の切れ間が。
幸い、路肩に止めても他の車両通行に害がないスペースもあり、時折、車を降りて水墨画のような景色を捉えおきたいと思った。
海抜1400m級とはいえ、霧が足元を流れゆく様子や、急角度の断崖。
まるで自分が天上にいるかのような気分にさせられる。霧が抜けるのは一瞬。
その合間に、記憶に残る廬山の眺めを目にできて良かった。
景勝のスポットを求め、避暑地の散策路をアリのように連なって歩くことより、この一瞬を拝むことの方が大事だった。
雨だ。
廬山から早めの撤収、プランBに変更。
景徳鎮
景徳鎮古窯民族博覧区
景徳鎮は人口約160万人、九江と同じく江西省の都市である。
古くから世界に名の通った、磁器の名産地。
青磁や白磁、今は飲食店でもあまり見かけなくなったが、一昔前ならちょっと良さげな日本料理屋では必ずお目にかかるものだった。
広大な敷地の中に、磁器の歴史・文化の紹介を行い、時代ごとに姿を変えて進化してきた大きな窯々を展示し、工房の制作風景などを観覧できる場所がある。
宋代の龙窑 long Yao ( 竜の形状 )
元代の馒头窑 man tou tao ( まんじゅう型 )
明代の葫芦窑 hu lu tao ( ひょうたん型 )
清代の镇窑 zhen Yao
大きな公園の中を散歩するように、時代ごと大きな窯を見学する。
全く異なる窯の姿は、壮観で見応えがあった。
▲ 写真左はゴミ箱、おしゃれな磁器製。
写真右は狛犬? 景徳鎮、焼き物のレベルが高いかわりに、石を彫る技術は少し
雑かなぁ、なんて思ったりして。。。
失礼しました。彫る技術もしっかりあるようです。
工房の中で、絵付けをさせてもらえるコーナーがあり、
後日焼き上がったら、書き置いた住所に送ってくれるとのことで。挑戦。
ご飯茶碗が欲しかったのでちょうどいい。
工房の人も少し驚く書き上がり。ダルマさんを描いた。
反対側には、” 百折不挠 bai zhe bu nao " = 不屈 ( 七転び八起き ) と書いた。
チップしていて、焼く前に修正してくれると言っていたが、そのまま焼かれたようで。
筆が運びやすい程度に水で解いたが、流れのある線が引けた代わりに、焼き上がりの色が想像より弱いか。これは、プロじゃないから仕方ないか。何度かやってみたくなる自分がいた。
料理屋やめて、景徳鎮に住めば良かったのだろうか。。。
廬山石魚は大きめのもの。形状はハゼに似ているだろうか。骨は少なく食べやすい白身の魚。料理は少し雑だな。。。
” 碱水粑 jian shui ba "は、景徳鎮の名物料理、軽食である。
もともとは、正月料理だったらしいが、習慣的に日常の食べ物となったらしい。
もち米粉をアルカリ水で練ったものが、きしめん状になっている。モチモチした食感の焼きビーフンのようなもの。
これを食して、常州への帰路につく。景徳鎮は、空の広い風光明媚な田舎街の漢字であったが、日が暮れると少し違った眺めになる。街中に溢れる大型の磁器の販売店、卸売店 ( デパートのような感じ ) がこぞって店の看板に電気を入れライトアップし始める。行ったことはないが、アメリカのラスベガスのイメージだ。
観光客や、国内外の仕入れ業者が派手に買い付けに来るんだろうな。
街を挙げて磁器売ってます!みたいなネオン群は中国でこの街だけの景色かも。。。
再び常州へ走る500km。
この旅、余裕で走行距離 1000kmオーバーな。自分にお疲れさん。
以上