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中国で食材と戯る。(24) ツブ貝

( 私が中国という国、土地で扱ってきた食材たち )
  ある時は店の為、ある時は自分の食事・好奇心の為。
ある時は、海外からの輸入物、日本からの輸入物、もちろん現地の魚、肉、野菜。
ある時は ”試行と錯誤”、ある時は ”創意と工夫”、そんなこんなで続けてきた、自身の調理と撮影。
仕事であり、趣味であり、日常であった 私のライフワークアーカイブです。

寄稿にあたっての自身のコメント 


” ツブ貝 "                                                                   2018.5

 中国語で " 海螺 hai luo ハイルオ "。
これは、真ツブと言われる北海道の " エゾボラ "とは少し違うタイプ。
中国の渤海から朝鮮半島に揚がる、” チョウセンボラ " と呼ばれる種類のようである。真ツブは貝殻のフォルム、突起に角がある感じで、これはだいぶぼんやりと丸い。

 それまでに、大連上海で出回っているものを扱ったことがあったが、アンコウ同様に ”海底で泥食う生き物” だと、スタッフが言っていたのを思い出す。
外目にいくらか泥が着いているものが多かったし、その内臓も灰色そのものだった。

 ▲ これは2018年5月に仕入れたもの。ツブの旬は春-夏。
泥ひとつ付いていない。海底から引き上げたものを洗浄したり、生簀で泥を吐かせた類では無い。内臓の色が全く違う。 海域を変えて養殖、あるいは水質管理された生簀養殖では無いかと思う。


” 北海道風 ツブ焼き "

 ▲  この” ツブ焼き ”は、”焼き”と言いながらも煮て作るタイプ。北海道で覚えた作り方だ。
ツブは、その唾液腺に” テトラミン "という毒素を持っていて、それを身の中から除去する必要があるので、先に取り出した身を開いて脂肪のように見える唾液腺を処理した後に、身を貝に戻す作り方なのだと理解する。
唾液腺ごと一緒に茹でると、テトラミンが溶け出て煮汁や他の部位に憑る可能性があるとのこと。

この回、泥臭くない内臓も茹でて食すことにする。古い人間は、鮮度の良い内臓を茹でて刺身に添えたりして、その中の海藻の香り、磯の香りを愉しんでいた。
今は、食物連鎖で魚介の内臓に毒素が濃縮蓄積される可能性を皆が知っており、廃棄することを推奨するようだ。

テトラミン毒素は加熱で消えず、除去する-しないの問題。
内臓に関しては個体差や種類の違いよりも、生息海域(季節も)によって左右するという。
もし水質や餌が安全に管理された養殖物であれば逆に、内臓を加熱して安全に食すことが保証されたりはしないものだろうか?


 一度吸い地でサッと煮たツブの身を貝殻に戻し、汁を注いで貝を焼く。
貝殻が熱せられ、中のつゆが再び湧き上がったら完成。


北海道風 焼きツブ

 

” 浜焼き風 ツブ焼き "                                                      2019.2

 記事前半とは別の時期の写真。身の横に出ている橙色とマットな深緑色のツートンになっている部分が内臓(橙色はおそらく生殖腺)。
かつての灰色の泥の中で育ち、灰色をしていた内臓とはまるきり別物。
養殖であれ、海域を変えるなり、餌を選ぶなり、” 改善されたツブ "である。海藻食わせてもらえたんやなぁ、きっと、そんな色合い。

 ▲  これは割り醤油を差して焼いた、" 浜焼き風 ツブ焼き "。
 色付きのアルコールしかなく、不思議な画になってしまいましたが、醤油香ばしい一品ということで。

                        
                            以上


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