世界遺産 四川-九寨溝へ。 (上巻)
” 九寨溝 jiu zhai gou ジュウザイゴウ " 2014.8.11-14
四川省アバ・チベット族チャン族自治州の県。
岷山(びんざん)山脈の中にあり、大小100を越える湖や沼、瀑布、渓流、見事な景勝スポットが集まっている世界自然遺産区域である。
長江の水源に近い支流。
チベットの少数民族の村(山塞) が9つあることにちなんで九寨溝と呼ぶようになったらしい。
日本は盆休みの時期。帰国する日本人駐在者も多く、常州の日本料理店からは日本人の姿が消える時期だ。中国人のお客さんもいて、本当はあまり関係ないのだがお盆に便乗して連休を作ることにした。
ガイドのいない、一人旅に出発だ。
出発ー西安
常州に住んで4年目、この時初めて常州の空港を利用する。
人が少ない。。。1週間に1便だけ日本直行便が出てるらしいけど、まぁそんな空港。
チケットは、常州(江蘇省)ー西安(陜西省)ー九寨溝(四川省)。
西安で乗り継ぎのため、空港で数時間待機。
上海に住んでいた頃に訪れたがことがある。秦の始皇帝陵や兵馬俑など世界遺産もあり古都情緒に溢れる街。イスラム教徒の回族やウイグル族の文化影響も濃く、山羊料理を食べたっけ、なんて思いながら、西安の空港の中で手軽に味を楽しもうとしたが。。。
まー味は語るまい。待ち時間に小腹は満ちた。
山上の空港にて
飛行機は、九寨黄龍空港に降り立つ。最も欠航や遅延の多い空港の一つと言われるが、運よく無難に着いた。機体が小さくスリルはあったような気がするが。
九寨黄龍空港は、なんと海抜3448m。 降りるともう富士山の上の方?ぐらいの高さにいる。
中国には✈️ 高高原机场 gao gao yuan ji chang(海抜2438m以上にある空港)が25基も存在する。” 九寨 ”はその海抜高度ランキング中の14位。そこに5つランクインしている四川省だがその中では" 九寨 " が最下位になっている。恐るべし中国。。。
空港からバスで観光区へ移動できる調べであったが、乗る寸前で『外国人はバスを利用してはいけないんだ』とタクシーの運ちゃんに声をかけられる。
出た、空港で早速の地方あるある。20元くらいで1時間、1時間半移動するだけだと考えていたのに、ひと悶着。
周りは全て中国人、狭いところにバス待ちの人で溢れている。他に交通手段が無いのをいいことに、暇そうなタクシー運ちゃんの悪巧みか?なんて疑う。
『要らん、要らん』とかわすがどうもしつこい。他の運ちゃん仲間も囲んできて同じことを言う。もめているのは自分だけ?
ある運ちゃんがその先でタクシーに乗り込む欧米人を指差して,
『 对吧!有规定!dui ba ! you guiding ! ドゥイバ、ヨウ グイディン!』
『 だろ!規定があるんだ!』とのこと。合点はいかないがタクシーに乗る交渉をする。
ヤク
スタート地点が既に山の上、空港と観光地点まではただ一本の県道が通るだけ。結局タクシーもバスもその道を同じ速度でゆっくりと走る。
高原の景色、山、山、山? 道路の脇、結構近い距離をゆったり歩く動物がいる。真っ黒で大きな塊、” 牦牛 mao niu マオニュウ "=ヤクだ。
大きなモップ、或いは合掌作りの茅葺き屋根みたいだ。野生種は国の保護対象動物になっている。凶暴らしいが、写真に撮れず残念。
空港ではやや緊張が走ったが、そんな景色見ながら移動するうちに旅気分になっていく。
タクシーにて
中国のタクシーは日本より安価ではあるが、それでもバスや地下鉄よりかは贅沢な交通手段である。
その料金を無駄にしないために、運転手に中国語で積極交流を試みるのは私の常套手段。移動中に言葉と、土地のことを教えてもらえる。
旅先であれば尚更、地元人で構成されるタクシー運ちゃんが一番の師となる。私の中国語の55%はタクシーで覚えただろうか( 感覚的な数値 )。スラングに関して言えば、80%がタクシーに違いない。
自分が乗ったタクシーの運ちゃん、第一印象と違って、話をするとなかなかの好青年。話の速度やトーンだろうか、耳障りが良く心地よく会話できる。
この旅、この運ちゃんで決まり。
8月11日に九寨黄龍空港に降り立ち、
12日 九寨溝
13日 黄龍
14日 帰りは上海に飛んで、常州へ。
の予定上必要な箇所の移動を丸々、彼に頼むことにした。
九寨溝の広大な観光区では、専用のフリーパスチケットでのバス移動に限られるので、空港の往復と、2大観光地点の移動、ホテルの送り迎え、雑用移動、をチャーター。先に告げた予定以外の時間は、彼は休むなり、他の客を乗せるなりできるし、悪くない話だと思う。
私自身は、変わりやすい天候に左右されず車を確保できるし、その都度の料金もめも回避、長い移動距離や渋滞(道が一本なので起こる)時間を心地よい人間との会話で過ごせるというメリットが有る。
計算できる走行距離分と、多少の色つけて契約成立。互いのスマホ番号を交換する。料金は半分前払い、残りは最終日に空港到着時点で支払う約束。
何かトラブルが起きたり、用事が思いついたらいつでも電話していいと言ってくれた。
九寨溝での食事−1
九寨溝の商業施設が集まる小さな街に夕方着く。
まずは食事、運ちゃんも誘ってみる( あれこれ注文したいが量がおすぎて困る)が、友人と会ってくると言って断られる。その代わりに、一本の酒を車のトランクから出して渡してくれた。
移動の時間に酒はかなり飲む方だと話はしたが、もしや。。。
“ 白酒 bai jiu バイジュー "、自走ドライブ旅でないので酒をやりながら食事ができるが、初っ端から53度( 中国蒸留酒の標準は48ー53°が最も多い) はどうだ。
『 半分飲んでるけど、体にいいから。飲んでいいよ。』って。
がっつり、冬虫夏草が入ってる。。。。
私はすでに、この時点で高山病の症状が出始めていて、少し頭痛?二日酔いにも似た感じがあり、一口だけいただくことにした。
“ 藏羌野菜 zang qiang ye cai ザンチャンイエツァイ "
藏=チベット族、羌=チャン族、をそれぞれ意味し、この地域のこと。
日本で言う一般の野菜を中国では " 蔬菜 shu cai シューツァイ"と呼んでいるが、
” 野菜 ye cai イエツァイ"と書くときは山菜や野生種のものを指すことが多い。
” 好事多蘑 hao shi duo mo ハオシ ドゥオモ "
四字熟語 " 好事多磨 "( 良いことには邪魔が入りやすいの意 )からの料理名。
” 磨mo (みがく)" が、草冠の " 蘑mo (きのこ) になってチャーミングな感じ。
世界中そうかもしれないが、験担ぎ、縁起物っていつもダジャレから発生している。
酔っ払いのダジャレ、ラッパーのライム(押韻)なんてものが、人を喜ばせて語り継がれたなら、それは、歴史であり文化である。
” 葱爆牦牛 cong bao mao niu ツォンバオ マオニュウ"
" 葱爆 " 中華の料理技法。強い火力でネギの風味を活かした炒め物。
ヤク肉の独特の風味もいい感じ。口がすでに、料理人ではなく、旅人モードに切り替わっている。
ヤクの肉を焼いたら、” ヤクニク "。これはライムじゃなくてダジャレ。歴史には残らんなコレ。
” 白饭 bai fan バイファン "
白いご飯。一人だから少なめでいいと言って、デカイ桶で出される。
馬やロバになった気分な。 装い方も男前で、ナイス。
” 青稞啤酒 qing ke pi jiu チンク ピージュウ "
チベット ハダカムギで作られたビール。アルコール度数が低く、チベット族では老若男女が飲むらしい。食中に良い感じ。
食事を終える頃、タクシー運ちゃんが現れて劇場の公演時間がちょうど良いから
と言ってチケットを用意してくれた。
予定していなかったが、暫し、チベット少数民族の歌や踊りを楽しむことに。
そして、予約をとっていなかったホテルだが、運ちゃんを頼りに普段、外国人を受け入れていないホテルに部屋をとる。
しばらく休んで、散策に出る。
表通りから少し脇に入る。良さげな郷土料理屋を発見。
お茶をいただきながら、ゆったりとした夜食の時間。。。ヤクの乳で作った自家製のヨーグルトが美味しかった。メッセージカードを書くよう求められ、1枚。今も壁に貼ってたらいいのだが。
会計後に、気さくなオーナーを撮影。
タクシー運ちゃんといい、彼といい、初日にしてこの地の男達の気風の良さを感じるのであった。。。
▼ 続く