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水彩画研究ノート【水彩紙 ー材質と性質2ー】
こんにちは。本日、水彩画研究ノート 【水彩紙 ー材質と性質2―】です。
↓前回の記事はこちら
▶水彩画研究ノート【水彩紙 ー材質と性質1―】
▶水彩画研究ノート【水彩紙 ー紙の厚みと紙の目ー】
前回の記事では、水彩紙には下記の3つの材質があるということに触れ、色の広がり方である「ぼかし」について書きました。
1.パルプ(木材)
2.混合(パルプ+コットン)
3.コットン100%
※ここでは木材パルプのことを「パルプ」と記載。
さて今回は、着色する上でとても大事な、「色の取れやすさ」について説明します。これを知らないと、塗り重ねした時に下地の色に影響が出てしまいます。
1.リフティング実験 -限定動画ー
6種類の水彩紙を使って、リフティング実験をしてみましたので、ぜひご覧下さい。
※リフティング…筆などで塗った色を取る技術
・紙に色を塗り、一晩自然乾燥させた紙を使用します。
・実験なので、少々強めにゴシゴシしてます。(実際に水彩画を描く時は、着色してまだ乾いていない状態でリフティングを行うことの方が多く、もっと優しく色を取ります)
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※前回同様、素人のゆるい実験です。絵の具の種類や水分量等で実験結果は微妙に変わりますのでご了承ください。
【実験結果】
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つまり、この実験で何が言いたかったと言うと、パルプ紙に着色して2度、3度と塗り重ねする際に、筆で触り過ぎると下地の色までごっそり取れてしまうんです。
水彩画に慣れないうちは、「失敗しちゃった!どうにかならないかな!」と色を塗り重ねてみたり、筆やティッシュで色を取ったりしがちですが、これがパルプだとさらに汚くなりやすいのです。
2.絵で見る質感の違い
では、こちらの2枚の絵で比較してみます。紙だけが違い、絵の具や筆は、ほぼ一緒です。さて、どちらが難易度が高いでしょうか?
①ウォーターフォード(コットン100%)
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②ホワイトワトソン(パルプ&コットン)
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正解は②の絵です。
理由は上記の通り、パルプはコットンに比べて重ね塗りがより難しいので、筆の手数を減らさなければいけないからです。
塗り重ねが(修正が)難しい=ほぼ1回~2回で仕上げる=筆に迷いがない。ということになります。
①のウォーターフォードは、胴体などは、あまり重ね塗りこそしていませんが、やはり②に比べると手数が多いです。
特に眼の縁や耳の中の毛などに違いがあります。
①は乾いた後に重ね塗りしているので、線がくっきり出ていますが、少し紙が濡れていると②の様にぼやけて、より馴染んだ線になります。
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水彩画は紙が濡れている間が勝負で、あっちもこっちも同時に塗らないといけないので結構忙しいです。しかしパルプは、コットンより水が吸い込む速度が微妙に遅いので、コットンよりは急がなくて良い点もあります。
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コットンは繊細な毛の質感や、重厚感を出すことはできますが、丈夫な紙ゆえに、塗り重ねしすぎて不透明水彩っぽくなってしまうことも。
一方、パルプの方が不規則な面白い模様が出やすく、絵としての面白さがあります。そして、水彩画特有の透明感だったり、一発描きの筆の躍動感も表現しやすいのかもしれませんね。
3.その他の違い
1.紙の強さ
メラミンスポンジでこすった状態を見てもらったら分かりますが、コットン100%の水彩紙は強くて、パルプ紙は傷つきやすいです(厚みの問題もあります)
よってパルプの紙は、練り消し、マスキングテープ、マスキングインクを使った時に、優しく扱わないと、紙が破れる可能性があるので気を付けて下さい。
2.パルプはリーズナブル
パルプ紙の魅力!それはやはりお値段が安いので気軽に水彩画が描けること。2023年4月、amazonでのお値段は…!
◆コットン&パルプ… クレスター/F4サイズ/24枚ブロック紙 1,672円
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◆コットン100%…アルシュ紙/360×260(F4より少し大きい)/20枚ブロック紙 7,900円
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アルシュも1枚あたりの価格みると、手が届きそうな感じがしますが、水彩紙はたいていブロック紙といって複数枚くっついた状態になっています。(次回の記事でその理由を書きます)
紙を買うのに7,000円以上だと躊躇してしまいますし、しかも水彩紙は開封して早めに使わないと劣化する恐れもあります。
水彩紙もどんどん値上がりしてますから、パルプ紙は初心者の方や練習用には最適ですね。
以上、水彩紙 のコットンとパルプの違いでした!✨次回は、水彩紙ではない紙にも焦点を当ててみます!
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