ももとピンクドラゴン


そろそろメンテナンスしようかな。

ももはそんな事を考えながら、いつもの作業をこなしていた。

窓際の席では、外の音が聞こえる。夏の景色を楽しみながら、ももは涼しい作業場で、今日のオファーを片付けていく。

こんな日常も、天井からの調節された光のおかげで、かなり気持ちがあがるので、同じ作業もなったく苦にならず、むしろ、毎日、新鮮なのだ。

壁からは、心地の良い音楽が流れている。

天井や壁、床は一面スクリーンにもなっていて、映像を楽しむこともできる。

設定温度は自動調整で、人の身体に無理のない、外気の熱帯にも無理のない、程よい温度に保たれている。香りも好みの香りを放ってくれる。

今日の作業を終えたら、カプセルに入ろう。今回は酵素にしようかな。

ももは、片付いたオファーを発信し終わって、席を立った。

過去の実績をかわれて、昭和平成令和の建築物紙面データを、現在データにインプットする作業を、定期的に受けている。これは、ももの実績を買われてのオファーであって、他の誰にも同じ仕事はできない。ももはその為に、もう何年も定期的に、カプセルに入っていると言っても良いくらい。もちろん、その為だけではないけれどもね。


2055年。世界はただ、幸福に満たされていた。

心地良い光に調節された室内は、芳しい香りに満ちている。

毎月同じ日に、国連からワールドマイナイバーに数字がプラスされる。

おぎゃーと生まれて、永遠の眠りにつくまで、世界中あまねく全ての人にはマイナンバーが与えられている。地球規模での管理。そして、数字がしめされる。一律同じ数字だが、オファーをいただいて作業をすると、その分はプラスされる。

みんな、その数字を使用して用事を果たしている。

ももは、数字から3000を使って、酵素カプセルに予約した。

入口に迎えがくるまで、ももはブラシで髪型を整えていた。

もう、何年も愛用している。ももの頭蓋骨の大きさや形も把握していて、半永久的に同じ髪型を作ってくれる。使い方は、このブラシで髪をとかすだけ。そろそろ新しいのも欲しいなとも思うんだけど、愛着あるし、なにより、ももの好みを全部知っている。理想通りの髪型にしてくれるのだ。


☆ぴーーーーーんぽろーーーーーーん☆ぴーーーーーーんぽろーーーーーーーん☆


お迎えがきた。ももは玄関前の小さなスペースに立った。ぴーーーーー。

玄関が開くと、すぐお迎えのピンクドラゴンの扉が開き、ももは、中に入った。丁度良い高さにある鏡を見てにっこりと笑った。髪型、すてきやん♪

ピンクドラゴンがゆっくりと宙に浮く。玄関はすーーーっと閉まった。

行先は登録してある。確認してOKを押す。


10分くらい。外を眺めながら、ピンクドラゴンに揺られていた。いろんな乗り物があるけど、ももはこの、ピンクドラゴンが気に入っている。見つけたときに、これしかない!と思った。中も外もピンク。桃色の優しい龍。今日は一人なので、一人用の小型のにした。もも専用の移動車なのだ。

車と行っても、地面はあんまり走らない。宙を浮いて移動する。

空中の移動には、整備された決まりの通りにセンサーで動くので、多くの人が空中を移動しても、事故は一切おこらない。

第一、人々の心は平和で、落ち着いているので、乱れることが一切ないのだ。


もう少し、空中を楽しみたいな、と思った頃に目的地に着いた。

自分の予約を確認して、建物に入る。今日は、2005階の203号室だから、下には降りずにそのまま203号室の入口から入った。窓の様に壁面に入口があり、ピンクドラゴンのドアからそのまま、部屋に入ることができる。ドアと入口をくっつけるだけ。簡単。ももは姿を登録してあるので、入口の前に立つだけでドアが開く。


3ヶ月くらい、酸素カプセルに入ることにした。空を見ながら、カプセルの中で寝転がる。カプセルに映し出されるのは、自然の風景や、建物からの景色だ。海沿いの建物からは、街も海も良くみわたせる。部屋の中からは、半透明な壁や天井から外の状態を見ることができる。外からは中は一切見えない。スクリーンモードにすると、好きな映像を見ることができる。

ももは、三分の一透明にして、外の景色と映像を同時に楽しむのが好きなのだ。

うとうとしていると、綺麗な音楽が聴こえてくる。天界の音楽。なんて芳しいんだろう。

ももは、ゆっくりと眠りに入って行った。

カプセルの中で注入される栄養素で、ももは若返って行った。程よくスレンダーになって、着てきたお洋服が少し大きいみたい。

3ヶ月後、ももは目が覚めた。小鳥の鳴き声と、朝陽。森林の爽やかな香り。カプセルはふわっと開いて、ももはセンターの部屋で、新しいお洋服に着替えた。あらかじめ好きな服を予約しておいたのだ。セットした通りにリフレッッシュして、おはようのフルーツを頂くことにした。

センターで少しフルーツを食べると、入口にピンクドラゴンが迎えにきていた。少しお散歩してから帰ろうかな。

ももは、暫く行っていなかったお気に入りの神社に行ってみようと思った。

残りの精算を済ませて、ピンクドラゴンに乗った。

主人からの連絡で、神社で待ち合わせる事になった。

久しぶりに二人で散策して、その後はイタリアに、ちょっと遅めのランチに行こうかな。
それからフランスに行って夕食の食材を買って。
週末にはイスラエルの世界音楽芸術祭に、自作のももりゅう作品を出展出品するので、その素材も見たい。
主人の好きなワインも選びたいな。
二人でバーに行くのも良いな。

夜には世界中、青いライトでほのかな優しい世界が演出される。
青いライトは、人の心を平和にさせる。

世界中なら、一日の間に何処へでも行き来ができる。
宇宙に行くには、予約が必要だけどね。
年末には二人で水星に行って、お正月をあちらで過ごすのも良いかな。二人で、話し合ってみよう。

二人用のピンクドラゴンの手配をしてから、ももは神社に降りた。


まばらな人が歩いている。久しぶりの神社は、神々しく光っている。
足を一歩踏み入れると、そこは別次元の神聖な空気だった。
身ぐるみにその空気を吸い込みながら、ももは主人の待つイヤハエの広場に向かった。



ももりゅうさんの、こちらのつぶやき。

発明品を使用させていただきました♡

近未来のショートストーリー書きましたよ~ももりゅうさん♪



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