X68000の1GBハードディスク

 インターネット黎明のころ、パソコン通信のBBSへの書き込みした方からその当時どんな雰囲気だったかを聞きます。

free(379/585) 93/10/16 09:35 すてっぷあたりで
2rep 100B
1G 15万位でありませんでしたっけ?
その方がやすいんじゃないでしょうか?

1993/10 BBSの書き込み より

 Sun Microsystems ワークステーションへの1GBハードディスクドライブの接続の話から、価格についての話題がはじまります。Sun用はドライブユニットだけで十数万って聞いたことがあるという方もあらわれたところに、実際に最近購入した方からの、Sun用の富士通製1GB HDDは七掛けで40万円をこえたという実感のある書き込みまで。そこへ日本橋のパソコンショップ STEPで1GB 15万円くらいという書き込みがあらわれます。15万円ならばドライブ単体で、ケース無し、電源無しなのではないですか?との指摘が来ます。

free(387/585) 93/10/18 20:44 ユニットだけじゃないみたいです。
3rep 194B
外部増設ドライブってなってましたから、たぶん電源付きでしょう。
でも、そうこうするうちに今月のOh!Xみてると、ポリフォン会社から
16万位の1Gハードディスクが...

1993/10 BBSの書き込み より

 X68000専門誌 Oh!X に16万円くらいの1GBハードディスクドライブの情報ありとの書き込みです。当時のハードディスクドライブはどうだったのでしょう。

 当時のX68000/X68030用 外付ハードディスクドライブの価格を書き込み日時に該当するOh!X 1993年11月号の広告から抜き出してみると以下の通り。

 ツクモ (540MBはSCSIインターフェース内蔵機種のみ対応)
  120MBハードディスク(VIP-120CX) ツクモ特価39800円
  240MBハードディスク(VIP-240CX) ツクモ特価58000円
  340MBハードディスク(VIP-350CX) ツクモ特価85000円
  540MBハードディスク ツクモ特価128000円

 株式会社ピー・アンド・エー
  富士通 FMHD-1201G (120MB) 定価70000円→特価49800円
  富士通 HD-K200A (200MB) 定価79800円→特価57000円
  ロジテック SHD-FMX120(120MB) 定価59800円→特価47000円
  ロジテック SHD-FMX240(240MB) 定価138000円→特価62000円
  ジェフ GF200(200MB) 定価98000円→特価59000円
  ジェフ GF240e(240MB) 定価118000円→特価63500円
  ジェフ GF340i(340MB) 定価158000円→特価87800円
  ジェフ GF540i(540MB) 定価238000円→特価151800円
 
 広告の価格から、容量単価にすると240~300円/MBbyteくらいで、高いものが400円/Mbyteくらい。1GBであれば2、30万円も可能性がありそうなところ、ポリフォンの発売元、株式会社ネオコンピューターシステムの広告を探してみると、価格は当時書き込みがあった通りで、

1.0GB (Quantum社製ドライブ使用) ¥168,000-
1.2GB (Quantum社製ドライブ使用) ¥198,000-
2.4GB (Seagate社製ドライブ使用) ¥348,000-

 容量単価にすると145~168円/MByteくらい。圧倒的に安価。この価格が広告にあることから、STEPの販売価格も正しそう。
 ハードディスクの容量、書き込んだ頃は1Mバイトをフロッピーディスク1枚分と換算をする事が多くて、おおよそ1000枚分。価格的になかなか手が出ないものの、1000枚分であれば使い切ることはないだろうとか思ってた。

BBS書き込みした方による現在のコメント
X680x0用外付大容量ハードディスクの広告 Oh!X 1993年11月号より

 株式会社ネオコンピューターシステムの広告は上記のようなポリフォンの宣伝の片隅にある小さなもので、書き込みした方が広告部分の小さなところまで確認していたのがわかります。
 実際にどのくらいの価格推移かを把握するため、X68000の専門誌であるOh!Xに毎月広告を出しているツクモ電気の外付ハードディスクの容量単価についての変遷を確認してみました。

X68000用 外付HDD容量単価の変化 Oh!X 九十九電機広告より

 1990年1月号において1975円/MBと3200円/MBだった単価が、1993年12月号において226~332円/MBと、4年で1桁程度安くなっていることがわかります。1993年末に300円/MBだった単価は2022年現在、2000円/TBとなっており、GBを通り越してTB単位となっています。
 1995年のツクモ電気の広告については 今vs昔 <番外編> -頑張れSHARP! X68000特集-~名機に思いを寄せて~ 1995年~1997年頃のX68000事情 http://shop.tsukumo.co.jp/special/160527c/  にて特集されており、広告の大きな画像が掲載されています。調査対象の1990~1993年の広告にはツクモ オリジナルハードディスク VIP100CX、VIP120CX、VIP350CXは写真が無く、どのようなものかわかりませんでしたが、特集の中の画像に写真が掲載されています。

ツクモ 今vs昔<番外編>-頑張れSHARP! X68000特集-1995年 デジタル99マガジンvol1 40P-41Pより

 写真では白系統の色に見えるのですが、「VIPシリーズはブラックなので68にぴったり!」とあるので実際は黒いようです。過去の広告ではツクモオリジナルハードディスクという表記やVIP型番の表記などがあり、小さな場所に数行だけの文字情報のみということもあって、どんなものかわからなかったツクモのハードディスク。コンパクトでケーブル付きのというのが、デジタル99マガジンの画像により確認できます。特集では1995年~1997年頃のX68000事情ということで、当時のデジタル99マガジンの画像が掲載されており、どのようなものがあったのかがわかりやすくなっています。外付ハードディスクはIOデータのケーブル付きの方が安くなっているようで、HDS-1G ツクモ特価 ¥59,800円と、最初に紹介した書き込みでは15万円で安いといった状態だったのが、2年程度で三分の一くらいの価格となっていて変化が激しいのがわかります。
 現在では更に大容量ストレージが手軽に入手できて便利になっており、1GBという単位はストレージでなく、スマートフォンのメインメモリ容量としても少な目と感じるようにまでなってきています。当時こんなにあれば使い切れないと思っていたハードディスク容量は、さらに桁違いの容量になりつつありますが、空き容量があれば何かのデータで埋まっていくようで、必要とされるデータサイズに果ては無いようです。

用語

・ステップ
 かつて東京および大阪にあった激安販売のパソコンショップSTEP。薄利での販売物が色々あり、販売価格の最安値として例示される事が多くあった。「5つのNO!」を掲げる低価格戦略で「説明しない」「展示しない」「交換しない」「解約しない」「無料サービスはしない」と徹底しており、初期不良があっても店舗では対応してもらえず、レシートと保証書により製造元へ対応を依頼する必要がある。商品の展示が無く、説明も無いため、どのようなものかを事前にわかっておかなければならず、購入する側も低価格と引き換えにリスクがある事を把握しつつ利用するという、独特の雰囲気のある店舗。その後倒産して現在は存在しない。

・ポリフォン
 SHARPのパソコン X68000用サブMPUボード。POLYPHON / ポリフォンという名称で、ボード上には本体とは別のMC68000があり、さらにFPUソケット、MIDI、PCM、8MBメモリー増設用スロットなどが1枚に詰め込まれた拡張ハードウェアボード。X68000は通常、拡張ハードウェアボードのスロットが2つしかないため、メインメモリを増やしつつFPUが搭載できるところに利点がある。株式会社ネオコンピューターシステム製。

 インターネット黎明のころの草の根BBSももりこみつつ、いろんなエピソードをつめこんだ「ちょっと偏ったインターネット老人会へようこそ」を同人誌として頒布予定です。
参加予定イベント
 11月6日 おもしろ同人誌バザール@神保町2022秋
 11月20日 第七回技術書同人誌博覧会

同人サークル BLACK FTZやってます twitter @black_ftz

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