偉いねぇ



「偉いねぇ」



その日は朝からずっと雨だった。と言っても私は11時過ぎとかに起きているのでいわゆる”朝”の光景は知らないわけだけど。

実家暮らしのいいところは勝手にご飯が出てくるところ。「昼ごはんができてるよ」と起こしに来てくれるところ。その度に私のだらしのなさに、落ち込んでしまう。

その日もそういった日の一つだった。自分以外の家族はみんな仕事で出かけており、夕方のバイトまで私は一人。大学の春休みに突入してからというもののこんな日はざらにあるわけだが、その日は雨ということもあって部屋全体が暗い。

母が用意してくれた昼ご飯を食べて、少しした後にあらかじめ朝ごはんとして食べる予定だったメロンパンを食べる。私はいつも菓子パンの消費期限を見て、消費期限日にそのパンを食べるものとして買いだめしている。だから期限的に一日の遅れも許されない。仕方なく食べる。おいしいね。ファミマのメロンパン。


全くルールとか知らないしプレイしたこともないLeague of Legendsの動画を見て眠たくなって、14:00からのネット大喜利でスベリ倒すと、外に出る準備だ。外に干してある洗濯物を取り込んで折りたたむのが日課だが、その日は雨で全然乾いていない。じっとり。仕方ないので扇風機を引っ張り出して強風で3時間のタイマーを設定して部屋干しをセッティング。晩ご飯の用意がないことを確認すると、炊飯器の窯を取り出して、洗って、米と水を入れて夕方に炊けるようにセット。よーし。家族LINEに連絡だ。

「洗濯物乾いてなかったので部屋で干してます」

「ご飯炊けるようになってます」

これでバイトに行く準備はオッケー。よーし、がんばr…….

ポン




「偉いねぇ」




健康診断に行った父のメッセージだ。

偉いねぇ……?

怒りでも落胆でもない、ただの違和感。

しかし考えすぎてしまう私は、そのたった一文のメッセージに色々考えを巡らせてしまうのだ。

こんな感じになってしまうのは幾度となく経験しているので解決するための順序が自分の中でできている。

まず、自分は何と言ってほしかったのか。
これに関してはきっと「ありがとう」とかだろう。しかし、以前オモコロチャンネルの動画にて永田さんが「他人の反応を自分で決めるんじゃねぇ」的なことを言っており、それがすごく心に刺さっているため、そういう他人の反応への期待をするもんじゃないよな、となる。

となるとこの気持ちのやり場に困ってしまう。


もしメッセージが母から返ってきたとしたら、「ありがとーう」とかだと思う。これは今までの経験上そうだったから。

あぁ。なるほど。


少し話が飛躍するが私の家族は、母ー私、父-兄、のような構図ができやすい。これは性格的な話で、別に何も複雑な家庭だったわけじゃないのだが、実はいろんな事情で母ー私、父ー兄で別々に過ごしていた期間が数年ある。本当に複雑な家庭事情とかは一切ないんだけど、仕事とかの関係でそうならざるを得ないといった感じだ。

つまり。

母と父では、母の方が過ごしてきた時間が長い。

しかも、それは自分が高校生の時の話なので、かなり複雑な思考ができるようになった後の出来事である。もしあなたが高校で出会って超仲良くなった友達がいたとして、卒業してから数年空いて再会したとき「お、おう」みたいになるだろう。多分。それと同じと思ってほしい。私と父、兄の関係性を鑑みた私のイメージとしては。


話を戻すと、恐らく私は父の「偉いねぇ」を見た途端、母と父とで私が共に過ごしてきた期間の違いを感じてしまったのだ。自分は”親”の反応のイメージがいつの間にか”母”に染まっていたんだな。それが違和感の原因だろう。


ふぅ。すっきりした。


のか?



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