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6.Water is life

真夏のイスラエルとは思えないほどの寒さと、耳障りなハエの羽音で目が覚める。滞在3日目もまた、朝6時頃に起床。私は暑くならないうちに周りを少し散歩しようと思い、ゆっくりホストファミリーの家の前の坂を下っていった。

早朝の集落は驚くほど静かで、リードを繋いでいない飼い犬たちが珍しいアジア人を警戒しながら周りをうろちょろと歩いている以外は何も動くものが見当たらなかった。

休息日の集落はまさに陸の孤島だった。昼12時にChenがブランチを作ってくれたが、DrorもChenもブランチ以外はずっと寝室にこもっている。私も朝の散歩を終えてからはユダヤ人にならってゆっくり読書をしていたが、15時頃にふと「3日目にしてなんて何にもない日なんだ!」と思い、一念発起して焼け死にそうな荒野に散歩に出ることにした。

ステイ先は集落の中腹にあったが、集落は小さな盆地のようになっていたため、私は周りが見渡せそうな近くの丘の上まで歩いてみることにした。丘を登っていくと、徐々に周りの景色が見えてきた。遠く彼方にエルサレム市街地と思われる建物群があり、反対方向には木々に囲まれた小さな町も見えた。いずれも何もない荒野のおかげで見晴らしがよくて見えるが、実際の距離は気が遠くなるほど遠そうだ。一番近い町まではおそらく3kmもないくらいだと思われるが、この猛暑の中、これ以上先に行くと冗談ぬきに脱水症状で死ぬ気がした。

Water is life

昨日、Drorが植物の手入れをしている時に私に言った言葉だ。灼熱の太陽の下、大地の真ん中で私はこの言葉をかみしめた。砂や石だけが続く大地の渇きは果てしなく広がっていて、草木や水にはもうずっと先まで辿りつけないような気分になってきた。日本のような自然の恵みが豊かな地で生きていると気づかないが、このような地に暮らしていると確かに神への信仰心が芽生えてきそうな気がした。「食」や「水」といった普段当たり前に頂いているものが、いかにありがたいか、強く感じさせられた瞬間だった。

Dror宅のリビングで日が暮れるまで読書を楽しむ。彼らの寝室からは物音1つ聞こえてこないため、休息日がいかに休むことに特化しているかがわかる。1週間に1日は何もしない休息日をつくるのもいいのかもしれない、と窓から入る微風を感じながら物思いに耽る。

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