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2.中東イスラエルへの入口

かなり狭めのシートに身体を埋めて12時間以上経ち、飛行機はようやくイスラエルのベングリオン空港に着陸した。

韓国人のマダムたちやローカルの人たちと共に空港へ足を踏み入れると、これまで経験したことのない異国の香りが漂う。

ベングリオン空港はパッと見、欧米によくあるタイプの空港で通路やトイレも比較的清潔に保たれている。派手さのないシンプルな構造ではあるものの、壁は大理石のような高級感のある重厚な石で埋められていた。途中、出発側のショッピングモールホールのようなものも見え、私が想像していたイスラエルとは異なった印象の建物だ。

しかしここからが問題である。イスラエルの入国審査はなかなか手強いと聞いていたからだ。ゲートの前には並んでいる日本人の姿がちらほらと見受けられ、少しだけ安心感も感じたが、頭のなかでどのように切り抜けるか、ストーリーを練って審査に向かう。

私はこれから3週間程度イスラエルに滞在するが、そのうちの2週間ほどはボランティア活動をしながら滞在する。ボランティア活動が主目的の場合、観光ビザでは入国出来ないが、そこは誤魔化せば何とでもなるはずだった。

ゲートでは滞在期間・目的・滞在場所を聞かれたが、一泊目の宿以外は何も決めていないことがバレて少し怪しまれそうになった。その場の思い付きで親戚の農場に泊めてもらうといって、滞在予定のホームステイ先を見せると、かなり怪しまれながら入国許可のカードをもらえた。

ゲートを抜けると大量のタクシーのキャッチがいた。タクシーはイスラエルでは安全な交通手段とされており、長旅で疲れてもいたが、何も知らない国のキャッチについていく気にはなれず、鉄道で移動することにした。到着したのが夜だったため、車窓からは景色もほとんど見えないなか、大きなバックパックを持って立ち尽くしていた。鉄道は私の留学先であったイギリスに似たディーゼル車で、一泊目の宿の最寄り駅は空港から5分もかからないうちに着いた。

重いバックパックを背負いながらむわぁっとした首都テルアビブの駅に降り立ち、タクシーのキャッチを抜けると、私は駅の上の鉄橋に立っていた。鉄橋から先ほど乗っていた電車の行き先であるテルアビブ中心地を望んで息を呑んだ。

夜の闇にそびえ立ついくつもの高層ビル群が遠く輝いていた。異邦人の私には知る由もなかった中東新興国経済の中心地が、もう一駅先に立ち構えていたのだった。

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