開き直ったら少し楽になった話

愛犬が闘病生活をするようになって20日が過ぎた。
手術を終え、完治は見込めないまでも
とりあえず高齢でも全身麻酔から生還してきてくれた。

ただ、その全身麻酔の影響で
まだ本来の体調には戻れていない。
それが一番顕著に表れているのが〝胃腸〟である。

素人の薄っすらとした理解だけれど
全身麻酔をすると、体の機能を一度止めるので
その止まっていた機能を再び動かす時、うまく動かなくなる(正常に戻るまで時間がかかる)場合があるようだ。
特に、愛犬は慢性膵炎だった為、それは予想出来ていたことだったわけだが、なんとか食事をさせても胃の動きが悪く気持ち悪くなってしまうようで家中をウロウロ歩き回る姿はなんともかわいそうでこちらも目が離せない。

食べたら気持ち悪くなる、と思うと食べたがらないし
こちらも、無理にあげるとかわいそうだと思ってしまうし
だけど、体重はどんどん減っていくし。

手術をしたついで…と言ってはなんだけど
歯周病で痛めていた歯も抜いてもらったので、本人(本犬)はそれにもまだ慣れないようだ。
食べたいけれど、口に入れてもポロッと出てしまう。
一生懸命噛むのに、カチッカチッ!と変な噛み合わせの音がしてうまく噛めない。
何度もそれを繰り返しているうちに、食べたいものは食べられないのに、空気ばかり口に入って(飲んで)しまう。
そうして、胃ばかり膨らんで余計に気持ち悪くなる…という悪循環だ。(恐らく)
本人(本犬)も、シュンとしてしまう。
本来はとても食いしん坊で、食べることが何よりも好きだった子だから、自分で食べる楽しみを得られない術後はどれほど苦痛か。
いつか慣れる、慣れて欲しいとは思うけれど
がっかりしている姿は見ていて私もとても胸が痛い。
必要だったから踏み切った手術、抜歯だったけれど
やっぱり心の中で「ごめんね」と思わざるを得ない毎日だ。

食事が摂れない(フードが食べられない)ので
主食は流動食だ。
シリンジに入れて口の脇からゆっくりと注入する。
高価なリキッドなのだけれど、言い方は悪いが手っ取り早く必要なカロリーを摂ることができて、助かっているわけだけれど。
それでもやっぱり、自分の力でフードを食べてもらいたい、食べるようになって欲しいと思うのが飼い主の心で。(本人(本犬)もそう思っているかもしれないけれど)
シニアになってから、一日の食事は4回に分けているのだけれども
その中の1回だけでも、どんなに時間がかかってもいいから、どんなに色々なトッピングをしてもいいから、フードを口から食べてもらいたい、と頑張って来た。

しかし、もともと低脂肪のフードが好きじゃなかった愛犬。
美味しくないのもあるだろうと思う。
それでも術前は、おやつを食べさせながら合間に口の中にポン!と入れたり、勢いがついて自分から食べたり…と、なんとか食べてくれていた。

しかし、もうおやつを元気に食べる歯がない。
いや、歯はあるんだけど、おやつを食べていた歯がない。
愛犬の感覚からしたら、フードをしぶしぶ食べていた頃に、おやつを噛んでいた歯が今はもうないのだ…。

それでも、まだ残っている歯で一生懸命おやつを食べようとして
その合間にフードを食べようとして
愛犬も私も頑張ってフードを食べよう(食べさせよう)としていた。
しかし、前述したように、空振りしてしまうことが多い分、空気を食べてしまう。
だんだん気持ち悪くなるのか、やたらと水を飲む。
その水も以前よりうまく飲めないから余計に空気が胃に入ってしまう。
どんどん胃だけが膨らんでしまう。
ただでさえ、胃腸の動きが衰えているところに空気だけが入って来るので、どんどん気持ち悪くなってくる。
なんとか、術前よりも少ない量ながらもフードを食べられたとしても(30分、40分かかる)食後から家中をウロウロすることになる。
気持ちが悪いのだ。

ゲップをすれば少し楽になるらしいということがわかったので
縦に抱っこをして、お腹をポンポンと叩いてみたりもした。
それでゲップが出て楽になった(らしい)こともあったけれど
ダメな時はダメで、余計に気持ち悪くなって震えだすこともあり、その時は本人(本犬)が気の済むまでウロウロして楽になるのを待つしかない。

どんどん痩せていくのでゴハンは食べてもらいたい
でも食べたら気持ち悪くなってかわいそうな姿を見ることになる
そのせめぎ合いと言うか…
どうしたらいいのかと頭を抱える日々で…。

(ちなみに薬は飲んでいる。一日2回、ペラプリンとガスモチンを服用中)

そこで一度開き直って
フードを食べてもらうことをやめ、4食全てを流動食(リキッド)にしてみた。
すると、フードを食べさせていた時よりも、気持ち悪さは減っている感じで家中をウロウロすることはなくなったのだ。
時々、少し歩き回っていることはあるけれど、自力でゲフゥーっとした後は、気持ち良さそうに寝ている。
本人(本犬)は、流動食(リキッド)も特に好きではないようで、準備をすると逃げようとはするけれど、食後の体調が格段に違う。

本来なら、自分でフードを食べて欲しい。
前のように元気に食べる姿は見たい。
だけど、まだ本調子じゃない今は焦る必要はないのではないか?
何より、私と愛犬の為にも、ストレスをためてフードを食べさせて(食べて)その後気持ちが悪くなるよりは、今はこれが最善なのではないか?と思えるようになった。

主食を流動食(リキッド)のみにしてから、今日で3日目である。
着々と術前と同じだけのカロリーが摂れるようになってきている。
歯のせいか、おやつも食べたがらなくなってしまったので、自分で何かを食べる楽しみはまた思い出してもらいたいと、おやつはにゃんこのおやつを食べている。
にゃんこは警戒心が強く、また口が小さいので、嗜好性が高く小さいおやつが多いそうだ。そのおやつが愛犬には良かったらしく、それを見せると自分からやってくるようになった。
その姿を見るだけで嬉しい。
また自分で何かを食べたいと思ってくれるだけで、こんなに嬉しいなんて。

今後、胃腸の動きが本来の調子に戻って、歯のない自分にも慣れて
またフードを食べてくれるようになるかはわからない。
もしかしたら、もうこれに慣れて食べてくれなくなってしまうかもしれない。
でもそれでもいいのではないか?
愛犬が少しでも毎日穏やかに
少しでもご機嫌で過ごしてくれれば
この生活があと5年、10年続くわけではない。
なんせ、余命を告げられている身なのだ。
とにかく、今は少しでも穏やかに少しでも快適に毎日を過ごしてもらえたら…と、それを一番に過ごしていきたいと再度思っている。

…しかし、夫の考え方は少し違うようだ。
もう自分でフードは食べないの?
何かをかけてもダメなの?
自分で食べてもらいたいよねぇ。
何とかならないのかなぁ?
と言っている。

ダッタラジブンデアゲテミタライカガデスカ?
イチニチジュウアイケンノソバニイテ
キモチワルクテウロウロシテイルスガタヲミマモッテミタライカガデスカ?

口ばかり出して
手を出さない人に限って、いつまでも理想を押し付けてくる。
本当に勘弁してもらいたい!

まあ、高価なリキッド代を捻出しているのは夫(の稼ぎ)なので、表立っては言わない。でもあまりにもずっと言って来たら言っちゃうかもね!!
なんてことを思いながら今日も口をつぐみ、日々シリンジの使い方が上達する私なのであった。

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