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科学と聖書にまつわる随想(39)
「冬眠」
近年、イノシシやシカ、クマなどの野生動物が人の住むところに現れて、農作物や人に危害を与えるといったニュースを聞くことが増えたように思います。地球温暖化や異常気象などで、これらの野生動物の本来の生息域の生活環境が悪化し、その範囲内では十分に食糧を得ることができなくなっているのかもしれません。本来ならクマは冬眠するはずの季節になっても、市街地にクマが出没している、という話も最近よく聞きます。ちなみに、イノシシやシカは冬眠しないそうです。
カエルやヘビなどの変温動物は、冬場になって気温が下がると体温も下がって活動ができなくなるので冬眠する、ということは理解できますが、しかし、あくまで“冬眠”であって、寒くて凍死する訳ではないということは考えてみれば不思議です。一方、クマは哺乳類ですから恒温動物であって、体温調節の機能を持っているのですから、気温が下がったからといって体温が下がって動けなくなることはないはずです。なのに、どうして冬眠するのかというのも、また不思議です。冬眠する哺乳動物はクマの他にもいくらかいるようです。
動物の冬眠のメカニズムについては、未だ研究途上で不明点が多いようです。冬眠中は、当然のことながら食事をしないので栄養を摂ることができませんし、排泄もできません。しかし、心臓や呼吸を全く停止してしまうことはできませんから、とにかく体内では動きがあってエネルギーを消費しています。その消費量をできるだけ抑えるため、普段の覚醒状態とは異なる特殊なモードに切り替わっている、ということは確かです。コンピュータの、いわゆる“スリープ”状態の省電力モードのようなものでしょう。
冬眠のメカニズムが解明されると、人間も冬眠ができるようになるのではないかという話もあります。確かに、例えば、災害や事故で重症を負い一刻一秒を争う緊急搬送が必要とされるような場合、その人を一時的に“冬眠モード”に移行させることができれば、時間を稼いで命を救える可能性を高めることができるかもしれません。あるいは、将来、誰もが宇宙旅行できるようになった場合、ロケットで移動中は“冬眠モード”にしておけば、超長期間の宇宙旅行が可能になるかもしれない、という話もあります。しかしこの場合、冬眠中は省電力モードとはいえ、体内組織の活動は止んでいる訳ではないので、冬眠している間にも体の老化は徐々に進行するのではないでしょうか。ですから、長期間の宇宙旅行の目的地に着いて、“冬眠モード”から目覚めた瞬間に、浦島太郎が玉手箱を開けた時のようになってしまうのでは? ということが、筆者は心配です。いつもよりちょっと寝過ぎただけでも、起きた時には体を動かし難いのを感じるくらいですから。
普通の睡眠の状態なら、話しかけたら寝言で答える、ということもあったりします。おそらく、その時、その人は夢を見ている最中なのでしょうね。しかし、冬眠中は脳の活動も極端に低下するはずですから、夢を見ることもないのではないかと思われます。そうすると、いくら周りから話かけても、当然、反応は皆無で、外界とのコミュニケーションは途絶えた状態ということになるでしょう。
創世記の記録によれば、天地創造の直後は「非常に良かった」この世界では、アダムとエバは神(創造主)と直接に会話ができましたが、「善悪の知識の木」の実を取って食べたためにエデンの園から追放されて以降、この直接コミュニケーションの道が途絶えてしまいました。これは、神(創造主)との関係において、人類が言わば“霊的”な冬眠状態に陥ったことを示しています。
旧約聖書の時代においても、この霊的な冬眠状態に気付き、覚醒を促した指導者や預言者たちがいました。
「主は ヤコブのうちにさとしを置き
イスラエルのうちにみおしえを定め
私たちの先祖に命じて
その子らに教えるようにされた。
後の世代の者 生まれてくる子らがこれを知り
さらに彼らが その子らにまた語り告げるため
彼らが神に信頼し
神のみわざを忘れず
その命令を守るために。
先祖たちのように
強情で逆らう世代
心定まらない世代
霊が神に忠実でない世代とならないために。」
イエス・キリストが既に世に来られた今の時代は、いよいよ冬眠から覚醒すべき時ではないでしょうか。
「 しかし、まことの礼拝者たちが、御霊と真理によって父を礼拝する時が来ます。今がその時です。父はそのような人たちを、ご自分を礼拝する者として求めておられるのです。
神は霊ですから、神を礼拝する人は、御霊と真理によって礼拝しなければなりません。」