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科学と聖書にまつわる随想(35)

「水と氷」

 簡単ななぞなぞで、
「水を一瞬にして凍らせる方法は?」
というのがあります。意地悪クイズのようですが、答えは「点を打つ」です。“水”という字に点を打つと“氷”になりますから。
 ところで、水が凍って氷になると体積が増えることはよく知られている通りです。冬場に水道管が冷えて、中の水が凍って膨張したために管が破裂してしまう、という話をよく聞きます。しかし、一般には温度が上がると物体が膨張すること(熱膨張)は直観的にも理解できますが、冷えて固まることで膨張するのは、これとは逆向きの変化ですから考えてみれば不思議な話です。

 しかし、もし水がこの性質を持っていなかったら、氷が水に浮くことが無い訳ですから、大変なことになります。冬の湖や北極・南極の海では、底から水が凍ってしまうことになりますので、魚が住めなくなってしまうでしょうから、水中の世界は大きく変わったものになったことでしょう。ただ、タイタニック号が氷山に衝突する悲惨な事故も起きることはなかったでしょう。

 液体から固体に変化(相転移)することで体積が増加するという性質を持つ物質は、やはりマイナーな存在です。つまり、液体の状態より固体の状態の方が密度が小さいという性質は、物質の性質としては特異なものと言うことができます。ただ、水の他にも、同様の性質を示すものがいくつかあるようです。その一つがシリコン(Si)です。シリコンは代表的な半導体材料で、コンピュータやエレクトロニクスによって支えられている現代の私たちの生活には無くてはならない存在です。物質を構成する元素は種々ありますが、地球上で最も量の多い元素は酸素で、その次に多いのがシリコンと言われています。酸素と水素から成る水も私たちの生活には無くてはならないもので、地球の表面の約7割は水に覆われていますし、私たちの体の約60%も水分と言われていますから、量の上ではメジャーな存在です。このように、シリコンにしても水にしても、数の上では多数派、量の上では極めてメジャーな存在が、その性質の上ではむしろマイナーな特徴を持っているという事実は、なかなか意味有りげな気がします。

 水が氷になった時に体積が増加するのは、氷の結晶構造に理由があります。そして、その結晶構造の決め手になっているのが、水分子の特徴的な形です。水($${\rm H_2 O}$$)の分子は2つの水素原子と1つの酸素原子が結び付いたものですが、酸素原子(原子番号8)より水素原子(原子番号1)の方がずっと小さく、酸素原子に水素原子2つが、こぶとり爺さんのほっぺたのように、両側の少し斜め下にくっ付いた形をしています。3つの原子が一直線に並ばずに、少し折れ曲がった形に連なっているところがミソです。そして、水素原子が微妙に+、酸素原子が微妙に-に電荷の偏りを持っています。このため、氷になって多数の水分子の位置関係が固定される際に、この+と-が引き合ってちょうど良い具合のところで固まる(これを水素結合といいます)ので、分子の形に由来する独特の結晶構造になって固まるのです。一方、水の状態の時は、液体ですから分子同士の位置や向きの関係に制約がありませんので、氷の時よりも密になって集まることができ、体積が減少することになる訳です。シリコンが固体の時に体積が増加するのも、やはり、ダイヤモンド構造という結晶構造をとることに理由があるようです。

 水が凍って氷になるのは、1気圧の下では温度0℃ですが、水分子同士の位置関係が定まって固定され、結晶を形作って行くためには、最初にどこからそれを始めるのかというキッカケが必要になります。ところが、ゆっくり静かに冷やして温度を下げて行くと、このキッカケを上手く掴むことができずに、0℃以下になっても固まらずに水のままの状態でいることがあります。この現象を“過冷却”といいます。過冷却状態の水は、何かの刺激が与えられると一気に氷に変化します。まさしく、“水”に点を打って“氷”に変えるようです。例えば、机の端から鉛筆をゆっくり押し出して行くと、机の外に出た部分の重さと、まだ机の上にある部分の重さがちょうど釣り合った状態ができます。この状態では、一応、釣り合ってますのでまだ机から下には落ちません。しかし、ちょっと風が吹いたり、机を叩いたりして振動が加わると、アッという間に机から落ちてしまいます。過冷却の水はこれに似た状態にあると言えます。こういう状態を“準安定状態”といいます。

 イエス・キリストが再臨した終末の時にも、私たちは一瞬にして変えられることを聖書は語っています。血肉の体から御霊の体へと相転移するのです。

「 終わりのラッパとともに、たちまち、一瞬のうちに変えられます。ラッパが鳴ると、死者は朽ちないものによみがえり、私たちは変えられるのです。」

(コリント人への手紙第一15:52)

 余談ですけれども、水分子はこぶとり爺さんの顔のような形の図で描かれますが、
「こぶとり爺さんはどんな体形だったでしょうか?」
というなぞなぞがあります。
 正解は「小太り」です。
 御霊の体に変えられる時、血肉の体の体形がどうだったかは、あまり関係が無いかも知れません。ただし、きちんと自己管理して来たかどうかは問われるかも知れません。なにせ、神(創造主)から管理を任された借り物ですから。

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