【Q11.宇都宮LRTの、更にその先へ】4.真岡鐡道完全乗車
(前回の記事はこちらです)
いかにも昭和っぽい商店で菓子を買い、駅まで戻る。
茂木駅には、日中、駅員が不在の時間帯がある。それは良いのだが、駅員不在の間は、何と自動券売機も稼働を停止するという。故障トラブルに対応する人間がいないからというのが、一応その理由らしいが……逆じゃねえのか? 無人の際に、人間の係員に代わって販売業務を行うのが、自動販売機という機械の存在意義ではないのか? 記念に入場券を買おうと思っていたが、買えなかった。
渋くてレトロな木造の待合室にて、上り列車をしばらく待つ。結局切符ではなく、整理券を取って乗車。午前に乗った車輛と、外観は特に変わらないが、中身は大きく異なる。ロングシートだ! これは、車窓を撮影しづらいな。テンションが少し下がる。
14時13分、茂木駅発。途中の市塙までは、午前の往路で既に乗った区間だ。往路と同じく、西側の席に座り車窓を眺める。こちら側が、明らかに景色が良い。
先頭車両に座る。乗客の数は少なく、ロングシートを占拠し、余裕をもって撮影できる。
南に向かってノンビリと進む。進むにつれ、車窓から山地は遠ざかり、田園地帯が広がっていく。
主要駅の一つ、益子に着く。ホーム上では既に、乗客が列になっているのが、停車直前の車窓から見える。ドアが開くと一斉に乗り込んでくる。年輩の女性客が多く、皆巨大なスーツケースを曳いている。益子は焼き物の産地として知られているが、陶器市か何かのイベントが開催されていたのであろう。オバちゃんパワーは圧倒的だ。
車内は満員となり、立ち客も現れる状況となった。ここまで、だらしなくロングシートに腰掛けていた自分も、行儀良く脚を畳んで座ることとなる。こうなると、通勤列車と変わらない。
北真岡辺りから、車窓には現代風の戸建て住宅が増え始める。
14時48分、真岡着。SLをモチーフにした駅舎。真岡鐡道が力を入れている、SL観光産業の中心地である。車両基地があって、蒸気機関車もここに停留している。この駅でもまた、多数の乗客が追加される。
こんなに人ばかりでは、撮影は難しい。ロングシートで大人しく菓子などをつまんでいたが、このまま終わるのは勿体ない。終点より二駅前、折本駅にて立ち上がり、運転手の右横の窓から、正面展望を撮ることにする。
これが存外に良い。真岡鐡道は、栃木の山間部から茨城の平野部に向かって走っているが、途中からは南北にほぼ一直線だ。茨城県南部には、筑波山以外に特に山地が無いため、南に向いた車輛の正面には障害物の無い広々とした視野が拓けている。列車は既に県境を越え、空は良く晴れている。
鉄塔や住宅地、自動車道のオーバーパス等の人工物が存在しているため、地平線まではさすがに見えないが、それでも充分な爽快さだ。遠くの地表と、雲との距離が近い。雲に向かって走っているような感覚になる。
この平野は、利根川を挟んで千葉県北部まで続いているのであろう。関東平野の広さを身をもって体験できたと思う。
茨城県は暴走族が多い県だと言われるが、この、何もない広大な土地を疾走する爽快感によるものではないかと邪推してしまう。
大きな左カーブを最後に曲がって東に向き、15時21分、終点下館着。この時点をもって、真岡鐡道を完全乗車した。
運賃支払いは、駅係員に渡すのかと思ったが、車掌扱いであった。
JR水戸線のホームを挟んで、最も離れた南側のホームには関東鉄道常総線が停車している。一両編成。明光義塾のラッピング車輛だ。
真岡鐡道主要駅(Googleマイマップより、該当のレイヤーを選択してご覧ください)
詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。