【Q12.山形新幹線E8系に乗りたい】2.山形から新庄まで(山形線完全乗車)
(前回の記事はこちらです)
山形駅周辺にて
山形駅は、新幹線ホームを含めて全て地上駅だ。跨線橋まで上り、駅スタンプを押す。E3系2000番台が描かれている。新しいものではないようだ。他方、駅構内には、E8系のデビューを祝うポスターや、各種掲示物が掲げられている。
人生で初めて来る駅だ。駅の東側にはペデストリアンデッキと、バスターミナルがある。バスターミナルの二階には、四軒ぐらい飲食店が入っているが、この時間帯はいずれもまだ準備中であった。山形のご当地ラーメンでも食べたいと思っていたが、諦める。
郵便局でレターパックを二通買う。一つは土産発送用、もう一つは、検便キットを自宅へ送るためのものだ。窓口には女性係員が座っている。
駅の西側にも出て、駅舎を撮影する。ウロウロしているうちに、結構な時間が経ってしまい、特に観光らしいことは出来なかった。要領が悪い。暑い。
駅ビル一階の蕎麦屋で、もりそばと日本酒を注文する。そこまで腹が減っていないので、量の多い板そばや天ぷらそばを食う気にはなれなかった。酒は「羽陽一献」という山形の地酒で、美味かった。
普通列車で新庄まで
17時54分山形発の普通列車、新庄行きがホームで待機している。運転士は女性だ。教育係と思われるベテランの男性と共に、運転席にスタンバイしている。
ドアは押しボタン式。帰宅時間帯であり、車内は学生と勤め人とで混雑している。席は全て埋まっている。
定刻通り発車。前面展望をノンビリと撮影する。六月の東北の田園地帯を駆けていく。女性運転士は、教育係から時折指導を受けている。
この女性運転士は、もしかしたら将来を嘱望された、若手エリート職員なのかもしれないと思った。最初は、現在運転している奥羽本線の普通列車から始まり、経験を積んだら将来的に、山形新幹線の運転を担うことになるのかもしれないと、勝手に想像を膨らませた。最終的には、JR東日本における現業職種のトップエリート、東北新幹線はやぶさの運転士までを、目指しているのかもしれない。もしそうだとしたら、夢のある話だ。彼女の背中には、見えないつばさが生えている。
18時19分天童駅着。ここで一斉に客が降り、車内は大分空く。座ることができる。
18時28分さくらんぼ東根着。
芦沢駅にて、新幹線と列車交換を行う。
19時04分、終点新庄着。山形新幹線の終着駅だ。奥羽本線はこの新庄駅で、完全に分離されている。今まで乗ってきた南側の、山形新幹線走行区間のレール幅は、新幹線と同じ標準軌であり、ここから北へ続く秋田方面は、在来線と同じ狭軌だ。レール幅が異なるので、互いに乗入れることは出来ない。
現在の新庄駅は、南の山形側と、北の秋田側に、レール幅が異なる二つの頭端駅があって、その間がフラットな通路で繋がっている構造である。全てのホーム及び改札が同じ階層にあり、移動に階段の上り下りが必要とされない。バリアフリーだ。
夏祭りのイラストが描かれた駅スタンプを押し、改札を出る。他の客は全員既に立ち去っており、自分が一番最後であった。有人改札であった。
駅に付属して「ゆめりあ」という広くて清潔なイベントスペースがある。今日もさっきまで、何かのイベントを行っていたようで、スタッフらしき人々が撤収作業を行っている。
飲食店、土産物屋は既に営業を終了しているが、ニューデイズは営業中だ。安心する。周囲はまだ明るい。
予約していた、駅前のビジネスホテルにチェックインすると、何故だか菓子パンを2つくれた。
ホテル正面の定食屋で、鳥もつラーメンというのを食べる。店のオヤジさんはかなりの高齢で、動作も滑舌もヨボヨボであったが、味はなかなか良かった。その名の通り、鳥のモツが具材に入ったラーメンで、少し中華風のスパイスの香りがした。
定食屋のテレビは、Mステを映している。タモリが出演者にマイクを向ける。椎名林檎が何か喋っている。しばらくすると、若者男性バンドのミセスグリーンアップルが出てきた。
ミセスグリーンアップルは、ネット上でこの数日炎上していた。コロンブスのコスプレをして類人猿を使役するというコンセプトのMVが、植民地主義や人種主義を肯定的に扱っていると解釈されかねないと、一部の論者から批判を受けていたのである。私のSNSのタイムラインでも、この件について活発な議論が行われており、ここまでの道中の、列車の中でその様子が目に入ってきた。奇遇と言えば奇遇である。
テレビに映る彼らの様子は、そのような炎上の渦中にあることなど全く感じさせなかった。
ビジネスホテルに戻り、ローカルニュースを見る。例年にない酷暑のため、さくらんぼが痛む可能性があると県内の有識者は予測し、早目の収穫を農家に呼びかけていると報じている。