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【Q12.山形新幹線E8系に乗りたい】5.余目でサイクリング (内藤秀因記念美術館・他)

(前回の記事はこちらです)


代行バスで余目まで

 川下り乗船場を後にし、最上川の上流方向に国道47号を少し歩く。ファミマがある。寒冷地らしく、二重扉となっている。


 古口駅まで歩いて戻る。鉄道は運休しているが、駅舎内は立入可能で、代行バスの待合室の役割を果たしている。駅スタンプがあるので押し、運休中の駅やレールを眺める。バスの時刻が近づくと、係員がやってきて窓口を開ける。切符を買う。

 11時56分、古口駅前発。陸羽西線代行バスに再び乗り、余目を目指す。右手の最上川と左手の山地の間の国道を、順調に走っていく。途中、何度もスノーシェードをくぐる。

 スマホの調子が狂い始める。明らかに異常な熱を帯びている。飲み物の入ったペットボトルを密着させ、せめてもの冷却を試みる。

 日本海に近づくに連れて、山地は遠ざかり平野が拓ける。一面の田園風景。米どころとして知られる余目らしい風景だ。

 余目の一つ手前の、南野という駅の代行バス停は、公共施設の駐車場に置かれている。周囲は一面の水田で、駅舎も線路も見当たらない。本来の駅からは、かなり遠いのではないかと思われる。
 駅周辺の市街地を通り、12時49分、余目駅着。代行バス停は駅前だ。陸羽西線の終点駅はここ余目だが、代行バスは、便によっては更に先の酒田まで走る。

余目をサイクリング

 羽越本線の特急「いなほ」が停車するだけあって、流石に立派な駅舎だ。駅舎内には、山形出身の幕末の志士、清河八郎を大河ドラマの主人公に推すポスターやノボリが設置されている。昭和時代の『おしん』や『独眼竜政宗』で、山形県内の観光産業はよっぽど儲かり、令和の今になってもその経済効果は関係者の記憶に残っているのだろう。この、大河ドラマ誘致運動に関連しているものなのか、酒田出身の評論家、佐高信の講演会が、夏に行われるという。

 駅スタンプを押し、入場券を買って改札内に入る。赤い機関車に牽引された、長大編成の貨物列車が秋田方面へ去っていく所だった。EH500系、通称金太郎であろうか? しばらくすると、今度は青い機関車に牽引された貨物列車が新潟方面へ通過していく。羽越本線は貨物列車の往来が盛んであることを体感する。 

 余目の街を当てもなくブラブラ歩き、「八千代」という店でラーメンを食べる。あっさりした味だ。この店はアルコール類を置いていない。
 駅の近くにある、新産業創造館クラッセという建物に気付く。飲食店、土産物屋、観光案内所などが入っている複合施設だ。館内は広く清潔で、観光案内所の窓口には老齢の男性職員が座っている。この山形旅行で、オフィスの窓口に男性が座っているのを見るのは、ここが初めてかもしれない。
 色々と話を聞く。市街地周辺には、特に大きな観光施設は無いが、酒蔵が二つあるという。今日は休日なので、ショップなどは営業していないだろうが、外から眺めることは出来るだろうとのことだ。レンタサイクルがあるという。一日幾らですかと尋ねると、何と! 無料だと言う! 信じられない! 良心的過ぎだ! 山形県と、ここ余目の自治体である庄内町に対する好感度が、イッキにマックスまで爆上がりした! この高齢の係員も、非常に物腰が柔らかく、感じの良い人であった。
 貰ったリーフレットの地図上に「清河八郎記念館」という施設を見つける。自転車で行けるかどうか聞いてみると、さすがに遠いと言われた。

 レンタサイクルの鍵を渡され、駐輪場まで取りに行く。電動ではない普通のママチャリであったが、それでも充分だ!

 行動範囲が大きく広がる。市街地を駆け、駅から少し離れた、町役場と町立図書館に行く。いずれも現代的な意匠の、立派な建築物だ。特に町役場の偉容には驚かされる。
 図書館には、地元出身の、内藤秀因という画家の記念館が併設されている。水彩画で世界的に成功した人だと言う。入館料無料なので一通り見て回る。その作品は風景画が中心で、画風は穏やかで見るものを落ち着かせる。図書館のカウンターで売られている絵葉書を買った。

 サイクリング再開。「やまと桜」を造っている佐藤佐治衛門という酒蔵と、「鯉川」の酒蔵の二ヵ所を、外から見て回る。住宅地の中に置かれたガスタンクを目視する。
 この日はとにかく暑く、バスの中から調子が悪かったスマホが熱暴走を始め、思うように写真が撮れない。動画を撮ろうとすると、警告メッセージが出て、勝手にアプリを閉じてしまう。六月の山形の猛暑は、遂に私のスマホにまでダメージを与え始めた。

 そのような状況だが、自転車を漕ぎ、陸羽西線の鉄路を目指す。国道を走り、辿り着いたのは「陸羽西線第五常万踏切」。陸羽西線の、最も余目寄りの踏切だ。掲示物には、JR新潟支社の管轄であると書かれている。
 踏切周辺では、小型の草刈り機を使って除草作業を行っていた。来るべき運行再開に備えたものであろう。赤字ローカル線は、運休からそのまま廃線となるパターンが少なくないが、陸羽西線に関しては、その心配は無い様だ。 

 自転車を返却し、投宿。今日の宿は、駅前の旅館だ。座敷童が出るというネット上の書き込みに興味を魅かれ決めた。

 立派な木造建築だ。私と大体同世代ぐらいの女将さんが出てきて、中庭に面した縁側付きの広い和室に通される。年代物の調度品が置かれている。観音開きの三重扉の金庫が特に貫禄がある。確かに座敷童が出てきそうな雰囲気だ。
 卓上には、宿泊約款に加えて、余目ガスの説明書きが置かれている。余目は天然ガスが採れる土地で、地元ではそのガスを使っているとのことだ。そう言えば、住宅街の真ん中でガスタンクを見かけたことを思い出す。
 女将さんも、若い頃は東京に住んでいたという。
 朝夕は、中庭の方向から風が入るために、涼しくなるという。この部屋のテレビは、YouTubeとネトフリに対応している。

 夜中になっても、貨物列車の走行音が時折聴こえる。

山形県庄内町・余目駅付近のGoogleマイマップ(該当のレイヤーをご覧ください)


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青条
詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。

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