川崎フロンターレ2023総括〜ビルドアップ?し、知ってますよ。フレンチですよね?〜
「王者奪還」を目標として迎えた2023シーズン。王者横浜・F・マリノスを等々力に迎えた開幕戦がつい最近のように感じる。
そんな今季、結果的にリーグ戦戦績は8位と、目標にしていた「王者奪還」は果たせずに23年シーズンは幕を閉じた。
しかしながら、天皇杯は2020年シーズンぶりとなる優勝。春秋制に移行したACLはGLを無敗で決勝トーナメントに進出と、永遠の課題であった「勝負強さ」を身につけたとも言えるシーズンであった。
そんな今季、ほぼほぼ現地観戦していた僕目線で各選手を振り返って行こうと思う。なお、あくまで個人的な感覚であるという点はご容赦頂けると幸いだ。
それでは総括をして行こう。
GK
1.チョン・ソンリョン
気付けば加入8シーズン目。誰もが認める川崎の大守護神となったソンリョン。
今季も開幕からスタメンとして君臨するも、チームの不振と新加入上福元のフィットもあり、リーグ戦では9節の浦和戦移行ベンチを温める形に。
それでも、持ち前の安定感と神がかり的なセーブで再び正GKの座を取り戻した。
天皇杯決勝でのPKセーブは記憶に新しい。終わってみれば今季の川崎フロンターレは「ソンリョンのシーズン」であったと言えるくらいの印象だ。
一般的なGKが何とか足を運んで指先にボールを当ててギリギリでセーブし、渾身のガッツポーズをぶちキメるようなシーン。
このようなシュートが飛んできた際、彼は真顔でセーブをし、寝起きと同じくらいの速度で立ち上がり、何事もなかったかのように次のプレーへと移行する。
シューターからすると、ガッツポーズを見せつけられるより屈辱的であろう。
このチームは数年に一度、思い出したようにビルドアップとハイラインに取り組もうとするため、その期間はどうしても厳しい立場になってしまう。
それでも「プロではよくあること」と言い放ち、淡々とトレーニングを積む姿はまさにプロフェッショナルであった。
僕がソンリョンならブチ切れて移籍先を探していただろうし、背景真っ黒なインスタのストーリーをあげて小さい文字でめっちゃ不満を書き込むと思う。
しかし、彼は淡々とトレーニングを積んでいた。
彼ほどの実力者がそんな振る舞いをするのだから、このチームで不貞腐れていいメンバーなど存在しない。そういう意味でもソンリョンの存在は大きかった。
来季チームがどういうサッカーを志望するかは不明だが、個人的にはGKに1番必要な能力はセービング。
そういう意味では、来季以降もソンリョンは必要不可欠な選手といえる。
一言メモ
ソンリョンが使っているGKグローブ、最近日本サイトが開設されたのでネットで購入可能。
99.上福元 直人
昨季、ルンルン気分。半分旅行気分。いやほぼ観光客として向かった京都修学旅行もとい、アウェイ京都遠征の「楽しい思い出」をズタボロに引き裂いた張本人。
ぼく「先生!上福元くんがシュート全部止めるので京都遠征が楽しくないです!しかも、GKなのに凄い高い位置でボールに触ってます!あれは反則だと思います!」
先生(強化部)「そうだね。分かった。じゃあ先生が来年は改善してもらえるように説得(≒正式オファー)してみるね。」
こんなやりとりが無かったとか無かったとか。
冗談はさておき、上述した通り数年に1回思い出したようにビルドアップの取り組み改善を実施する我が軍において、その第一人者であるカミはこれ以上ないベストマッチの人材であった。
出場機会を得たルヴァン杯で高パフォーマンスを見せると、チームの不振も重なり9節からリーグ戦でもスタメンの座を掴んだ。
ビルドアップは勿論だが、それ以上に、あまりに広大すぎる守備範囲に驚かされた。
「裏のケア?いやカミがいるから大丈夫っしょ」といった具合で、瞬く間に我が軍の最終ライン裏は全て彼の領域となった。(そしてDF陣から裏ケアというタスクが消えた)
ソンリョンの復調もあり、20節からはスタメンの座が再びソンリョンに渡った訳だが、今季取り組みたかった「ビルドアップ」を1番理解していたのはカミであった。
今季は途中で頓挫してしまったが、我が軍の課題がビルドアップ…というより、ボール保持時の相手の動かし方であるのは事実。
そして、カミがそのロジックを1番理解しているのも事実。
カミとソンリョンという実力者を同チームで保持するのがJリーグのルール的にOKなのであれば、来季も継続して欲しいと思っている。
(僕もそうであったが)育成年代のGKはセーブの仕方や基本的なポジショニングを理解できても「バックパスを受けた際、どこを見て、どう優先順位をつけて、どこにパスを供給すればいいか」を教えてくれる指導者は意外と少ない。
言い方は悪いが、それだけ「適当に蹴っ飛ばしている」GKが多いということだ。
カミがどこにボールを入れているか。どこを見ているか。
特に小学生や中学生のGKには噛み砕いて頂きたい。
一言メモ
移籍したての頃、居残り練習でダイビングヘッドをひたすらやっていた。
21.安藤駿介
アカデミー育ちのGKは今季でプロ15年目。湘南へレンタルしていた期間を除いた殆どを川崎フロンターレで過ごしている。
ソンリョン、カミの厚い壁によって出場機会こそ無いものの、川崎フロンターレにとっては欠かせない選手である。
フロンターレというクラブはやや特殊だ。
ただのサッカークラブでは無い。サッカーをしていればいい訳ではない。
「川崎」にチームが存在する意義を果たし続けていくことが必要とされる。
長く話すと話が脱線してしまうので割愛するが、そういったピッチ外のイベントを常に率先し続けているのがこの男だ。
サッカークラブの人材は非常に流動的だ。
流動的であるが故、アイデンティティを失ってしまうケースはピッチ内外問わず多々ある。
それでも、川崎フロンターレに於いて「ピッチ外での取り組みは絶対に変わらない」と自信を持って言えるのは安藤駿介が居るからである。
しばしば欧州のスポーツ新聞などで「非売品」という表現をされる選手がいる。
安藤駿介こそ、非売品だ。この先もずっとフロンターレに欠かせない選手なのである。
一言メモ
ベンチ入りした際、ゴンさんが必ず1回は安藤をいじる。一瞬なので目が離せない。密かな楽しみ。
22.早坂勇希
チーム期待のフロ上がりGK
公式戦の出場機会こそ無かったものの、麻生グラウンドへ練習を見に行くとGKとしてのスケールの大きさに驚かされる。
至近距離でのシュートストップは勿論、ピッチの端から端まで響くコーチングは、僕に指示をしている?と錯覚するほどであった。
最後まで残ってシュート練習のゴールマウスに入っている姿は、新井章太を彷彿とさせるし、その泥臭さは田中碧に通ずるものがあるように感じる。
ソンリョン、上福元の高過ぎる壁がある現状だが、逆に学べる要素が多い環境でもある。
ソンリョン、カミのハイブリッドGKの誕生へ。早坂の3年目、ブレイクの予感がしてならない。
一言メモ
選手プロフィールによると、好きな食べ物はつぶ貝と生しらす。つ、つ、通すぎる……!!笑
DF
2.登里享平
川崎のプロデューサーは今季もピッチをデザインし続けた。
シーズンを通して左サイドに君臨し続け、何と今季は6年ぶりとなるリーグ戦ゴールを記録した。しかも、2ゴール。
2009年〜2022年までの14シーズンで254試合に出場したノボリのゴール数は7。今季は2012シーズンぶりの2ゴールと、記録に残るシーズンとなった。
最近サポーターになった方は、他のDF陣が「熱いハート燃やせ」「戦え」などDFならではのファイターっぷりフレーズがチャントに採用されている中、ノボリのチャントに「ゲットゴール」というフレーズが入っていることに違和感を抱いたことではなかろうか。
信じるか信じないかはあなた次第だが、加入当初の彼は今でいうマルシーニョのような起用法であった。
そう。信じるか信じないかはあなた次第。私は信じない。
最後に点を取った時はまだチームは無冠だったなんて、もっと信じない。
今季のハイライトは勿論ゴールだが、そのバランス感はチームに欠かせない要素である。
負けが続いた時期にはビハインドで相手選手と口論になったL・ダミアンに対して「負けている時に時間を使うのは勿体無い」と注意をするシーンもあった。
チームのエース且つ大スターであるダミアンにそのような振る舞いが出来るのは、おそらく彼か家長昭博くらいであろう。
そんな「バランス感」はピッチ内外で欠かせない。突貫ドリブル小僧も気付けばベテランと呼ばれる年代に差し掛かってきたが、年々スピード以外の武器が増えているように感じる。
きっと、おそらく、いや間違いなく。登里享平の全盛期はこれからだ。
劇的勝利のアウェイマリノス戦、得点を奪った車屋に駆け寄ろうとした瞬間に攣ったノボリ。
ゴール後にもみくちゃにされて肩を外すノボリ。
こういうところがつくづく「持っている」
一言メモ
宮城天に向かって「点取り行け」と指示を出して恥ずかしくなった過去がある模様。(インスタ参照)
3.大南拓磨
個人的今季のMVP 大南がいなかったらと考えるとゾッとする。
谷口彰悟が抜けた物理的な穴と、サポーターの心の穴を完璧に埋めてみせた。
現代サッカーにおいて、やはりスピードは魅力的である。
まるでウサインボルトのように大きなストライドを駆使したボールホルダーへの高速アプローチ。
チームとして確立しきれていなかったネガトラを1人で対応し続けた。
最終ライン裏に相手FWがら抜け出した瞬間、DOGるかDOGらないかしか楽しみがなかった我々川崎サポーターに「クリーンに防ぎ切る」という新たな概念を教えてくれた。
ハイライトはアウェイマリノス戦。右サイドを得意の推進力で駆け上がった大南のアシストが車屋の決勝ゴールを演出した。
来季はより一層厳しくなりそうな我が軍の過密日程。大南の活躍無くして上位進出はないであろう。
一言メモ
兄のTwitterが面白い。
4.ジェジエウ
相棒の谷口彰悟がカタールへと旅立ち、一層の活躍が期待された今季であったが3節の湘南戦で左膝外側半月板を損傷してしまう。
二度目の半月板であったため今季絶望を覚悟したものの、驚異的な回復力で10月のACLパトゥム戦で戦列復帰。天皇杯決勝に間に合わせる超人ぶりを見せつけた。
戦列に戻れたのは好材料であったが、長期離脱を余儀なくされたためコンディションは戻り切っていない印象であった。
長期離脱復帰後の上半身と下半身が別人のような感覚(分かる人には分かる)だったのだろう。
プロレベルは未経験なので分からないが、アマチュアレベルの経験だとこの手の違和感はトレーニングをこなしていけば解消されるものである。
何れにせよ、来季の編成を考えた際にジェジエウ抜きでは考えられない。20〜21シーズンのようなアベンジャーズっぷりを発揮し、チームを再び上位へと導いてほしい。
一言メモ
画像検索で出てきたブラジル時代のジェジエウ is 誰
5.佐々木旭
谷口彰悟から5番と個人チャントにおける「熱いハートを燃やせ」というフレーズを引き継いで臨んだ今シーズン。
天皇杯高知戦では値千金の決勝ゴール。3連敗で迎えた札幌戦では4連敗回避となる同点弾と、重要な場面で数字を残せるようになった。
開幕からコンスタントにゲームに絡んでいたのだが、リーグ戦中盤以降に左ハムストリングを負傷すると、そこからは離脱と復帰を繰り返してしまった。
ここぞという場面で数字が残せる選手になってきている一方で、ストロングは深い位置まで踏み込んでの右アウトでの切り返し。
来季の編成次第だが、いっそ右SBの方がスムーズにプレーできるのかもしれない。
特に右は家長昭博が時間を作ってくれるため左サイドほど流動的ではなく、型も決まっている。
何にせよ、旭抜きでは来季の編成は成り立たないであろう。様々な噂が流れる中、彼の大ブレイクがチームを救う可能性は高い。3年目の佐々木旭から目が離せない。
一言メモ
選手プロフィールの「川崎フロンターレのLINEスタンプ買った?」という質問に「もらった」と回答する正直者っぷり。買ったって言い切っても良いのよ。
7.車屋紳太郎
同郷の先輩、谷口彰悟が別の道を歩む決意をした中迎えた新シーズン。
並々ならぬ思いで挑んだであろうシーズンだが、開幕戦でまさかの負傷。戦列復帰は4月の札幌戦となった。
谷口が抜け、ジェジエウが長期離脱をし、新加入の大南のフィット待ちという状況であった我が軍に於いて、左利きで球出しのできる車屋は貴重な存在であった。
若かりし頃は淡々とプレーしている印象であったが、ベテランと呼ばれる域に差し掛かってきた彼は精神的支柱とも言える振る舞いを見せた。
車屋といえば、大南同様今季の神奈川ダービーで決めた決勝ゴールが印象的だ。
あの車屋が、ゴール毎突っ込んでいくアグレッシブさを見せ、みんなが車屋に駆け寄ってくるその光景はあまりにも美し過ぎた。
まこのゴールをきっかけとしてチームが上昇していく。そう確信した瞬間であった。
その頃ノボリは・・・
このゲーム以降のフロンターレの話はいま関係ないだろ。これ以上やめるんだ。
終盤には再離脱をしてしまい、そのままシーズン終了。随所に違いを見せつけつつも、悔しさは来季にぶつける形となった。
圧倒的なDFリーダーへ。車屋は来季も走り続ける。
一言メモ
その昔「車屋紳士太郎」と誤植されたことがある。
13.山根視来
日本代表としてW杯を戦い、しっかりと川崎に戻ってきてくれた英雄。
昨年までは持ち前のサッカーセンスと身体能力、そしてメンタルが上手く噛み合っていた印象だったが、そこに「キャプテンシー」が肉付けされた。
今季はシーズン序盤から山根がアンカーの位置まで絞り込んでゲームを作っていくビルドアップを実践していたが、上手く浸透させることは出来ず。この期間は、彼自身と悩んでいるように感じた。
大外を主戦場とするプレーに戻してからは吹っ切れたようにピッチを躍動した。
チームの誰かが緩いプレーをした際、今までの我が軍は鼓舞をしてチームを盛り上げる印象出会ったが、山根は違う。
強く要求をし、時には厳しく怒る。
このチームに欠けていた部分を代表活動で身につけ、還元してくれた。
相変わらず過密日程だろうが何だろうが淡々と連戦をこなすタフさには頭が上がらない。
それだけでなく、どのゲームも120%で望むその志はサッカー選手という枠組みを超越した一個人として、我々も学ぶべきことが多いと感じる。
天皇杯優勝で流していた涙には様々な意味があるのだろうが、こうしてシーズンを全力で戦い抜いた山根が流した涙は感動的であった。
来季に向け、色々な噂が流れているが山根視来という人間に惹かれた僕としては、彼がどんな決断をしようと応援するし、川崎を出るからには絶対再び日本代表へアプローチをしてほしい。
無論、彼が悩んだ末に出した結論が「川崎残留」であれば、来季も全力で踊り狂うしこれ以上の幸せはない。
一言メモ
選手プロフィールの「夏休みの宿題、早く終わらせる?ギリギリ?」という質問に対して「ギリギリ間に合わない」と回答。彼らしくて笑ってしまった。
15.田邊秀斗
加入2年目となる今季は4月の札幌戦で先発出場を果たすと、そこから出場機会を増やしていった。
シーズン終盤は欠かせないダイナモとしてピッチを躍動。縦パスとミドルシュートというストロングを発揮。ブレイクのシーズンとなった。
おっと失礼。これは瀬古樹の紹介文であった。あまりに風貌が似ているものでうっかり。
改めて、昨季から継続で千葉へ育成型期限付き移籍をしていたが、両クラブ、選手合意のもと3月に我が軍に復帰。
3月にしてDF陣が片手で数えるほどの人数となってしまったため、緊急復帰招集がかかった。
野戦病院化して戦列復帰した田邊も4月に左膝内側側副靭帯損傷という大怪我を負ってしまい、長期離脱を余儀なくされた。
復帰した後のプレーを見る限り、CBよりSBの方がやりやすそうな雰囲気を感じた。
(そもそも、この年でポリバレントに活躍できるのがすごすぎるという前提だが。)
どちらかというと積極的にサイドを駆け上がっての攻撃参加の方が得意そうなので、若かりし頃の車屋のようなブレイクを期待したい。
保持の部分はまだまだ伸び代があるものの、SB裏に飛んでくるロングボールを跳ね返すことができる能力は我が軍にとって貴重である。
山根、ノボリと幸いなことにこのチームには学べる選手が多い。静学産のブレイクは、もうすぐそこだ。
一言メモ
「遠征に必ず持っていくもの」は「iPod」とのこと。
まだあったんか。iPod
2002年生まれがよく知ってたな。 iPod
27.松長根 悠仁
ユース卒1年目のCBは、想像以上に早くデビュー戦を迎えた。
リーグ戦ベンチ入りは2節の鹿島アントラーズ戦。
DF陣の野戦病院化に伴い、5節の新潟戦でJリーグデビューとなった。
持ち前の推進力とビルドアップ能力はJ1トップレベルでも通用していた。
特にその推進力。前へボールを運ぶ能力には光るものがある。見ていてワクワクするCBだ。
総合的に見て、ユース上がり1年目としては成功のシーズンであったと言って良い。
もっとも、彼はプレミアリーグファイナルで、PKを蹴った男だ。とんでもないプロ向きのメンタリティを持っている選手なのである。
彼はもっと凄い選手になっていく。そう確信している。
来季は福島へ育成型期限付き移籍。場数を踏んだらいよいよ凄い選手になる。そう感じてならない。
一言メモ
選手プロフィール内「自分が監督をする時、コーチとして呼びたい選手」の質問で「大関、高井」とコメントしている。愛。愛。愛すぎる。
29.高井 幸大
ユース卒を感じさせないプレーで試合に絡みまくった。
4月から台頭すると、そこからコンスタントで試合に絡んだ。
途中アンダー世代の代表活動で不在にすることはあったものの、その期間を除けばユース卒であることを感じさせない定着を見せつけた。
足元の技術はもちろん、高身長を活かした空中戦の強さは19歳とは思えない安定感であった。
190cmを超える身長と、それを感じさせない足元のプレーは間違いなく近い将来日の丸を背負うことであろう。
間違いなく、ブレなく、そこへ導くために。ブレイクが期待される来季を心待ちにしている。
一言メモ
「ストレス解消法」は「叫ぶ」
シチュエーションが気になる。
番外編
SHOGO
そろそろ帰ってくれぇぇぇええええええ
MF/FWは別枠で!