13.COSET続報

今年2月から開始したCOSETの実証実験は、既に3ヶ月を経過しようとしていた。

懸念していたのは主に3点。まず日射量が足りるのかどうか、そして手入れするスペースが確保できるか、最後に味である。

一つ目の日射量についてだか、2段の栽培ベッドでトマトを栽培するCOSETでは、下段は上段の影に隠れる時間が多くなるため、植物の活動の源である日射量が不足する恐れがあった。

一方でトマトに必要な日射量は300w/m2程度と言われているが、九州北部のこの地域では3月以降、晴天時は700w/m2を超える日射がハウスに入ってくる。そのため、多くのトマト農家はハウスの内側に遮光カーテンを設置し、日射量を30%程カットしているのが実情だ。

我々のハウスでは初期コスト削減のために、内側に遮光カーテンは設置していない。そのため、3月以降は日射が多すぎるため、葉がダメージを受けることもある。

そこで私は上段で栽培するトマトによる遮光で、下段で栽培するトマトは寧ろ健全に育つのではないかと仮説をたてた。

この仮説は見事的中した。強い日射と乾燥で葉が巻き上がってしまっている上段のトマトに比べ、下段のトマトは葉が健全な状態で展開しているのだ。実の着果、肥大に関しても問題ない。

これで、日射不足の懸念は解消した。

次は作業スペースの問題である。一般的なトマト栽培では、1000m2当たり約2400本程度のトマトを植えるのが良しとされている。

一方で、COSETではその4倍近くの本数を栽培する。そのため、トマトがすし詰め状態となり、枝葉が作業通路に飛び出してくることで、作業性が悪化する恐れがあった。

そこで、極力枝葉が成長しないように、肥料の量と潅水量を調節することで対応したのだが、これも功を奏した。

上段に比べほっそりと育った下段のトマトは適度に枝葉が展開し、脇芽も少ないことから通路に飛び出して来ることなく成長している。

作業性も問題がない。後は味である。

収穫は2週間後に控えているため、現時点ではどうなるかが分からない。ただ、予測としては上段に比べて味は落ちるのではないかと考えている。

その理由は枝葉の成長を抑えるために肥料の量を少なくしていることに起因する。

養液栽培によるトマトは一般的に、養液の濃度が濃いほど糖度が上がる。COSETによる下段のトマトは上段に比べて養液の濃度が低いため、糖度が低くなる可能性があるのだ。

この点に関しては今回の結果によって、次の2つの対策を考えている。

一つ目はギリギリまで養液の濃度を濃くして糖度を少しでも上げるということ。枝葉の様子を見るともう少し肥料を多く上げても大丈夫そうなので、有効な手段だと考えている。

そしてもう一つは品種を変えるということ。今まで20種類近くの品種を試す中で、味はいいが裂果が多く商品化に繋がらなかった品種があった。

裂果の原因は色々あるのだが、その一つに強すぎる紫外線の影響が挙げられる。当時の栽培方法ではカーテンによる遮光が無いことで裂果が多く発生してしまい、それ以降栽培していなかったのだが、COSETの下段で栽培すればその問題をクリアできる可能性があるのだ。

いずれにせよ、5月に収穫するトマトの味を確認した上で次のアクションを検討する必要がある。

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