福岡市のスタートアップコミュニティ形成のエッセンスと他の地方都市への横展について
こんにちは、FromToの中田です。
学生時代から住んでいた東京を離れ、2022年10月に福岡市に移住致しました。
移住の理由は複数あるので、またいつか詳しく書きたいなと思っているのですが、今回は移住して3カ月で感じた福岡市のスタートアップコミュニティ形成について自分なり大事だなと感じた要素をまとめたいと思います。
施設・制度等(ハード)についても勿論充実しているのですが、それらは別途触れるとして、なかなか表に出づらい”ソフト”な部分を中心に記載します。
また地方都市にも横展できるのでは?といった要素もピックアップしております。
こういった内容はあまり言語化されて外に出ていくことは少ないと思うので、どなたかの何かしらの参考になりますと幸いです。
福岡市内の関係各位にあたっては、新参者によるn=1の意見として生暖かくご覧いただけますと幸いです。
■コミュニティに触れた経緯
福岡市に移住を決めた1つの理由が、「福岡市はスタートアップがアツい」という評判を直接確かめたいという気持ちがありました。
短期の旅程ではその生々しさだったり、時間軸をある程度とらないと見えないこともありそうだなと感じてもいました。
もちろん、47passを使って頂けるスタートアップの皆さんが増えると嬉しいなという下心もなくはないのですが、「スタートアップが盛り上がる地方都市にはどんな要素が必要なのか」を学びつつ、他の地域に横展できる何か示唆が得られるのではないかと考えています。
■立場によらないコミュニケーションの土壌
まず驚いたのは、スタートアップ関係者が非常に密度高く横連携をしていることです。
スタートアップの方々が集まるイベント、VC主催の起業家招致イベント、ピッチイベントの観覧等々にお邪魔しているのですが、本当に「あの人知ってます」の頻度が高すぎます!笑
また、スタートアップ・VC・各コミュニティスタッフ・自治体、あらゆるプレイヤーがいるなかでコミュニケーションにおいて各立場によるポジショントークを感じません。
皆さん、ホンネで話してらっしゃる印象が強いです。
某福岡市VC担当者とその出資先のスタートアップの代表が、ここでは語れないことをお互い歯に衣着せず、平気な顔をして話し合っていてかなり目鱗でした。
東京をはじめとする個人的な体験をもとにすると、やはり各社の若干のポジショントークであったり、”ここは飛び越えないよね”という線引きを感じていたのですが、こちらでは驚くほどフラットな関係を築いています。
■リアルな場を中心とするコミュニティ形成
何がその濃いコミュニケーションを生むんだろう、という疑問については今のところ「リアルな場を中心とするコミュニティ形成」が要因のように思えます。
福岡の独立系VC、F Venturesさんが毎年作成されている「福岡スタートアップ地図」でも顕著にあらわれていて、やはり大名にあるfgnを中心に物理的にも近い距離でスタートアップが拠点を構えていることが分かります。
実際に福岡市内での移動では、徒歩で行ける範囲ですし、市内のバスやシェアサイクルを利用すれば30分以内で地図内の場所はほぼ行けます。
また、fgnは2年間の居住という期限を設けていて、「fgnだと物足りないくらい入居企業に成長して欲しい & 新陳代謝を高める」ということが目的だそうです。
それが奏功していて、fgnを中心に形成されたいわば「fgnマフィア(fgn卒業生)」が市内に広がっているような印象を持っています。ただ、市内中に分散しているかというとそうでもなく、やはりfgnを中心とする近隣にオフィスを構えていらっしゃるようです。
fgnにはawabarなるバーもあり、そこでは夜な夜なスタートアップ関係者の方々が集まっています。
また、イベントで知り合った起業志望の福岡市内の大学生の方によると、起業をしようと思った時にまず何をしたんですか、という僕の問いに対して、
「とりあえずスタートアップカフェに行きました。起業の相談をするならそこに行けばなんとかなる、というイメージがあったためです。実際に行ってみたら起業に必要なことは全部わかったし、いろんな人をすぐに紹介してくれました。」との答えが。
これは、スタートアップコミュニティの理想形のように思えました。
すなわち、
起業を考えたらとりあえずスタートアップカフェに行く
↓
そこには起業やスタートアップに詳しい人がいて何でも相談にのってくれ、人を紹介してくれる
↓
スタートアップコミュニティと繋がる
↓
起業志望度が高まる・実際に起業をする
↓
スタートアップコミュニティによる各種サポート
↓
起業家としての成長し、起業志望者を手厚く歓迎する
という座組みが”実際にワークしている"と実感しています。
スタートアップ向けのコワーキングスペースの企画や狙いにおいて珍しいものではないと思うのですが、それが実現しているところというと、実はなかなか少ないのではないかなと感じています。
この素地にあるのは、物理的にオフィスや人との距離が近いことに起因するface to faceを中心とするリアルな場所でのコミュニケーションだと考えます。
■互いにモチベーションを高め・維持できる関係性
福岡の皆さんは総じて、明るく、おしゃべりが好き、お酒の場が好き、というのは特徴的です笑
が、それは大前提でいて、実はリアルでの交わされる内容自体が、コミュニティを盛り上げているのではと考えます。
具体的には、各コミュニティ内での会話において、”ユーザー数が爆伸びしているらしい”、”大型調達を決めたらしい”、”売上がすごい”、”どこそこのオフィスを借りた”といった、生声が対面で発せられることにあります。
SNSやニュースサイトで勿論同種の情報は入ってくるのですが、リアルコミュニケーションで見聞きしたほうが、「負けてられん」という気持ちは圧倒的に強いです。(福岡に来て間もない僕ですらそう思うので)
よく顔を見知った方々が前進したり、苦難に立ち向かうことをオフラインで見聞きすることは、起業後のモチベーションの維持率も段違いになっているではないでしょうか。
実際に東京をはじめとするスタートアップコミュニティにおいても同様に闊達なコミュニケーションはあるのですが、場所の物理的な近さ×垣根のない濃密なネットワークにより福岡市のコミュニティの活性化を支えていて、その結果起業や事業活動に対するモチベーションが持続するのではないかと感じます。
■(まとめ)福岡のスタートアップコミュニティにみるコミュニティ形成のエッセンス
まず、福岡市におけるスタートアップコミュニティ形成におけるエッセンスを自分なりに再整理します。
※前述していないものもありますが、ご了承ください。
※またあくまで「コミュニティ形成」であり、「スタートアップ振興」とは異なる意味合いです(この場合地域内の市場性や投資家・金融機関など、もう少し要素が増えてくるかと)
【スタートアップを盛り上げる機運の形成】
①各ステークホルダーによる「スタートアップを盛り上げる」ことを目的とする仲間意識の醸成
【スタートアップが集まる場所が密集している】
②スタートアップ関係者が集まるシンボリックな拠点がある
③②の場所とスタートアップの各オフィス間の距離が近い
【自由闊達なコミュニケーション】
④各ステークホルダーのポジションによらない本音トーク
⑤頻度の高いface to faceのコミュニケーション
⑥④・⑤によるモチベーション向上・維持
⑦新参者やよそ者をいとわないオープンマインドネス
【スタートアップのサポートが充実】
⑧スタートアップをサポートする施策・制度の充実
⑨⑧を運用するサポーターの熱量・コミット
網羅性はないのかもしれませんが、ここから福岡市の地方都市ならではの強みが透けて見えます。実はこれらが、上述してきた要素です。
①各ステークホルダーによる「スタートアップを盛り上げる」ことを目的とする仲間意識の醸成
③②の場所とスタートアップの各オフィス間の距離が近い
④各ステークホルダーのポジションによらない本音トーク
⑤頻度の高いface to faceのコミュニケーション
⑥④・⑤によるモチベーション維持
これらは地方都市のイメージとして想起される、
・”地元感”を大事にするナショナリズム的な地方都市内の連帯感
・オフィス街が密集しがち
・ウェットなコミュニケーション
といった、「村社会」と時に言及されがちな特徴が、ポジティブな要素として発露されているのではと感じます。
スタートアップコミュニティのことを「スタートアップ村」と表現されることがありますが、地方都市だからこそ、物理的にも精神的にも人と人との距離が近く、濃く熱いコミュニティを形成するうえで強みがあるのではないでしょうか。
これは個別のスタートアップだけでも、VCならびに金融機関だけでも、行政だけでも、コミュニティスタッフだけでも、スタートアップのサポーターだけでも、実現できません。
皆が一体となってはじめて、スタートを切り、そして持続ができるのだと思います。
福岡市も「スタートアップ都市宣言」から10年です。
様々な方々が積み上げてきた今を思うと、心の底から敬意を感じます。
また移住してきた一個人としてもその熱量アップに何かしら貢献できれば良いなと考えています。
・・・・・・・
勢いで書いたこともあり、かなり乱雑な内容になってしまいました。
弊社も熱量を絶やさず、、、いやむしろ熱量を伝播できるよう、地方でのスタートアップコミュニティが盛り上がることに貢献していけたらと思います。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。
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