2021年3,4月 ネオクラシカル振り返り

シーンを代表する大御所が新作を連発した1,2月に比べ、このところ目立ったリリースがありませんでした。

かと思いきや、じわじわと新興勢力が重要作を発表していたそんな2か月でした。


1. Eydís Evensen 「Bylur」

前回も紹介したEydís Evensenのデビューアルバムがついに発表。「Bylur」、吹雪と題された本作は、彼女の故郷アイスランドの厳寒な大気を想起させるエモーショナルなピアノネオクラシカルです。バイオリンによる引き立てもさることながら、多用されるアルペジオが情感に訴えかけます。近年の傾向である、和音構成を重視したアンビエント寄りのネオクラシカルとは趣を異にしているでしょう。昨年重要作を発表したGabriel Olafsもそうでしたが、アイスランド出身のネオクラシカル系ピアニストはその構成からして日本人の耳に馴染みやすいと気がします。もっと聴かれてほしいところ。
ちなみに彼女はモデルとしても活躍中で、SONYのXXIMに引き抜かれるなどその注目度は高め。既に公開されているMVもとても低予算とはいえないゴージャスさ。今後シーンの旗手として盛んにプッシュされていくに違いありません。


2. Tom Blankenberg 「et」

ドイツはデュッセルドルフのピアニストTom Blankenbergの二作目。強烈かつ美麗なピアノネオクラシカルの傑作「atermus」以来2年ぶりの作品となります。こちらは弦なし電子音なしコーラスなしのピアノ一本勝負!(さすがにリバーブはかけていると思うけどまさかこれも生音?)。引き算に引き算を重ねた侘び寂の美学といったところでしょうか。MVをみていると森に隠居してピアノと向き合う、まさに「職人」のようなイメージを抱きます。いたずらに陰鬱なわけでもなく、ジャジーな陽気さを反転させて飛び道具的に投げてくるのも特徴。前作も併せて聴きましょう。


・その他ニュース

特に紹介したかったのは上の2作品ですが、これ以外にも面白いアルバムがいくつかありました。ついでに紹介しておきましょう。まずは王道のヒーリングアンビエントを作るAlaskan Tapesの新譜です。

ぶれませんね。今作は展開に富んだ曲が多く、これまでのアルバムと聴き比べても楽しいでしょう。続いて坂本龍一「約束の宇宙」のサントラ。

現地での公開は2019年ですが、日本国内での公開タイミングに合わせて?サントラも発表されました。安定していますね。余談ですがインターステラー以降ハートフル宇宙モノ映画が増えた気がします。家族の描かれ方はどう変化したのか、地味に注目しています。
他には国内ネオクラシカルの小瀬村晶の新作、AWVFTSメンバーの新作(先行)などがありました。Alfa MistやPorter Robinsonの新譜もあり、4月は豊作でしたね。

それではまた2か月後。

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