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自分史上最高の香水に出会った①
香水、完全なる嗜好品
正直無くても死なない。
が、あるとなんだか強くなれた気分になる。
自分を後押ししてくれるような。
そんな風に考えられる1本の香水に出会った時のお話。
香水遍歴
人生初の香水はアナスイだった多分。
単純に瓶のデザインがファンシーでかわいかったので購入した。
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以前から香水に限らず小瓶のデザインを見るのが好きだったので、香りというより見た目に惹かれて買った。
オードトワレ(だったと思う)、付け心地は軽い。
普通にいい香りだったが、ドはまりすることもなく、何ならまだ残っている。
次はマルジェラのREPLICAシリーズ。
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高くないのに香りが上品で、めちゃくちゃ長く香る。
アナスイの時にはない、香りの変化も楽しめた。
この香水との出会いはとある夜、バーで出会った人がとてもいい香りで何の香水を使っているか聞いたらレプリカだった。
次の日には購入していた。その夜はとても楽しく過ごしたこともあって思い出含め買ったんだろうね。
単純。
この香水はとにかく万人ウケした。国籍問わず会う人会う人にいい香りと言われた。
これは使い切ったし、2本目の購入も検討した。
ただ唯一無二の香りではないと感じたのと、大人気シリーズだったので「被るの嫌だなぁ~」なんて思いながら買わずに時間だけが過ぎていった。
はじめてのニッチフレグランス
友人がDiptyqueの話をしていたのを聞いて気になり、某デパートの香水売場に足を運んだ。
私事だがそれは新卒研修が終わって、新しい土地で一人暮らしを始めるタイミングだった。
フレグランス専門ブランドの香水の説明をちゃんと聞くのが初めてですべて新鮮だった。レプリカよりかなり重いパルファン。各香りのストーリー。
見えないコンテクストがあるモノが大好きなのでどんどん惹かれていった。
瓶のデザインも凝っていて、香りごとに異なるデザインがラベルの裏に描かれており素敵だった。
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だがとりあえずディプティックでは何も買わず、他も散策してみることにした。
ディプティックもいくつか好みの香りはあったがビビッと感じるものはなかったので。
当時万人受けする香りというより仕事中に自分のためにつけたい強めの一本(酒みたい)を探していた。
自分好みのウッディで個性的なもの。
また先日京都に行った影響もあってか白檀やフランキンセンスのような禅っぽさにも惹かれていた。
再び売場をフラフラしていたら一際目立つコーナーがあった。
真っ赤な背景の棚にキレイに陳列された、媚びないデザインの瓶。
シンプルだけれど洗練されたスタイル。
気がついたら販売員の話を食らいつくように聞いていた。
何も知識がなく、本当に買う意思があるのかわからない見た目の小娘に1からこのブランドのストーリーを話してくれた。
「フレデリックマルははじめてですか?」
FREDERIC MALLE
どんな香りを探しているかと販売員さんに聞かれ、とにかくかっこいい、重めで、男性的なものを探しています!なんてざっくり伝えた気がする。はっきり覚えていないけれど。
最初のムエットを受け取った瞬間吹っ飛んだ。
パンチを喰らった時のような衝撃。
一瞬で気に入ったので肌にものせてもらった。
自分の体臭ともかなり相性がいい。
こんな感覚になれるのそうそうない。
しかもこのブランドには興味深いストーリーがあった。
本来香水には調香師の個人名が大々的に載せられることはない。(少なくとも見たことがなかったし、正直気にしたことがなかった。今思えばこんなに素晴らしい逸品を生み出しているのに申し訳なさすぎる。)
しかしこのフレデリックマルでは違う。
各調香師は至高を生み出す「アーティスト」であり創業者のフレデリックマルはあくまでも「編集者」。
製品のデザインも書籍風になっており、著者として調香師の名前が載っている。
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さらにマルの香水はコストや万人受けに囚われずに制作している。
そのため一般的な「いい香り」に留まることなく、調香師のこだわりが詰まりに詰まった唯一無二のマニアックな香りに仕上がっている。(と思っている。)
そんなブランド、フレデリックマルのアートへ本気で向き合う姿に惹かれた。
多くの化粧品会社がブランド イメージという表層的な幻影ばかりを追求していた時代の中で、フレデリック・マルは主役であるべき‘香り’そのものへ焦点を取り戻したいと考えるようになります。ブランド イメージばかりが先行し、主役である香りが置き去りにされた非常に商業的な市場の中で、本来の芸術的なパルファムは姿を消し、調香師たちのアーティストとしての尊厳も失われていたのです。
そうして、フレデリック・マルは‘エディション ドゥ パルファム(香りの出版社)’を掲げた自身のブランド〈フレデリック マル〉を創設し、今にも失われかけようとしていた真のグジュアリー パルファムの世界を鮮やかに蘇らせました。
マーケティング戦略や時間・原料・コスト等の一切の制限を取り払うことで、調香師たちに完全なる創造の自由を取り戻し、彼らがアーティストとして創り上げる作品に、フレデリック・マルは‘編集者’として寄り添います。調香師たちの創造の限界を取り払い、更なる嗅覚の領域へと導くことで生まれるパルファムという芸術作品は、まさに ―明日のクラシックとなるのです。そんな‘香り’との運命の出会いは、人生に色を与え、自信さえももたらします。
あぁもう絶対欲しい。
しかし新入社員・一人暮らしデビュー・大学六年間分の借金(奨学金)を背負った自分にはその場で即決できなかった。
だが「絶対にこれだ」と確信しムエットを大事に抱えてその日は帰路についた。
この後自身に起こる悲しい事件など知る由もなく。
(②へつづく)