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逆襲



世の中には無くても良いものがある。


蚊だ。

夏になると不快な音を立てて飛び、

人間の血を吸って生きる、小さな悪魔だ。              

僕は町中の蚊を撲滅するべく

虫あみとアースジェットを持って

街を駆け回った。一日中街中を走り回り

数えきれない蚊を退治してあげた。

僕はたちまち街のヒーローだ。

みんなは気づいてくれないけどね。


気がついたら日が暮れていた。

家に帰ると疲労からか、

すぐに寝込んでしまった。



ここからは夢の話である。



ふわふわふわ


ふわふわ


ふわ。。



???




僕は


夢の中で




飛んで、いた。





飛んでいる? どういうことだ。






周りのものが全て大きく見える。 


どうなっているのか全く理解できない。




するといきなり襲いかかる何かが現れた。



何だ!





大きい目をしたニンゲンだ!



そいつは、なんと








。。。。僕だった。



そいつは瞳孔を大きく開いて殺そうとしている。


「僕」は必死に逃げた。

死にたくない。

こんなやつに殺されてたまるか。

でも、こいつの血はおいしそうだ。。




いや、ダメだ!こんな土壇場でそんな

悠長なことは考えられない!


僕は必死に逃げ回った。



しかしニンゲンの力は想像を越えてきた。               



見たこともない霧をかけられ

徐々に意識が遠のいていく。

ゆっくりと暗く、深淵の世界へ。










 「あんた!はよおきや!」






母の一声で僕は叩き起きた。



なんだ夢だったのか。

身体じゅうにびっしりを汗をかいていた。

あろうことか、僕は蚊の夢を見ていたのだ。


少し落ち着いてからその夢のことを考えた。

きっと僕が殺した蚊が僕自身に呪いをかけたのだ。

目的は何なんだ!


もしや、自らの死の体験を分からせるさせるためなのか。。

せめてもの「逆襲」。未来の蚊の生命のために。



僕は得体の知れない何かに包まれた。

それは言葉にもできない。


ボーっとしていた僕に



「あんた何してんの!ご飯できたではよ降りてきぃ!」

母のいつもの甲高い声が耳をつんざいた。


「いま降りるー!」



急いで下にいこうとした。




しかし、


ふと腕を見ていると、蚊が止まっていた。




少し間があいたあと、おかんにこう言った。




「もうちょっと待って!」





僕は蚊の思うままに血を吸わせてやった。



(プノンペニスト著)


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