ノコが食べられないものほど食べたい
2023年3月3日(金)
季節の行事は大切にしたい。
約1年、ノコ(娘小3)との交流のため児童養護施設に通ったが、いつもすてきな行事の飾りが出迎えてくれた。
それなのに、ノコは疎い。「何月といったら〇〇だね」というイメージがない。
あまりにも定着していなくてビックリする。
日本は、この国の伝統行事だけでなく、さまざまな国の行事を取り込むので、もう毎月といっていいほど何かしらある。
ノコとの慌ただしい暮らしのなかでそれを追いかけるのは結構大変だ。でも、毎年繰り返すことでノコのなかにちょっぴりでも残ってほしい。
ひな人形は、ノコが我が家に委託されたとき、私の実家が譲ってくれた。もともとは長女である私が産まれた際、父方の祖父母が贈ってくれたものだが、妹がいるため私一人のものといえず実家に置いたままになっていた。女の子が来たので森谷家へとなったようだ。
この3年半。
年々飾るのが遅くなり、とうとう今年は当日になってしまった。
起きてすぐ居間のチェストの上を片付ける。むーくん(夫)が休日なので、ノコのお世話を丸投げする。朝食の後片付けや洗濯物をしながら、七段飾りを収めた大きな箱から一段目のものだけをそっと出す。なんせ私と同じ年齢ゆえ、ひな人形もそうだが、箱や包み紙までだいぶもろくなっている。
ノコが賑やかに登校していく。
お内裏様にお雛様、そのあいだに桃の花。金の屏風を背後に立てて、左右にぼんぼりを並べてできあがり。
9時にはできてしまった。
こんなに早く出せるのなら、さっさと済ませればよかった。そう思ったが、それは朝のノコをむーくんにお任せしたからだと気付く。もしむーくんがいなければ、ノコは私がほかのことをしていると、なおのこと「ママママ、ママママ」と呼ぶ。
「ママ、取って」「ママ、わからない」「ママ、やって」「ママ、ぎゅーして」「ママ、いいこいいこして」「ママ、そっち行かないで!」
うん、私一人の朝なら絶対無理だった。
断言できる。
夕飯は、ひな祭り献立だ。
ちらし寿司にはまぐりのお吸い物。食後に菱餅を模した雛くずもちと雛あられ。
3年半一緒に暮らしても未だにノコの食の好みがわからない。馴染みがない歯ごたえや匂いを嫌がる。はじめてのものはまず拒む。食わず嫌いで、なかなか食べられるものが増えない。それに加えて、その日の気分も加わるから、前回好きだといったものが次回も好きだとは限らない。カレーライス、ラーメン、餃子、ポテトはノコにしてはかなり安定した好物にあたるが、それでも数口食べて残すこともある。
さて、今日はどうだろう。
ちらし寿司にのせたいくらの醤油漬けは、1粒口に含んだものの顔をしかめて拒否。
はまぐりもダメ。菱餅色の生麩もダメ。昆布から出汁をとったお吸い物にも首を振る。
黒蜜ときなこをかけた雛くずもちは甘いから食べられるかと思ったが、食感が気に入らず。かじってくれただけでも今日は一歩踏み出した。
そんななか、雛あられは、目を離した隙になんと1袋全部食べてしまった。
まだ幼い舌は苦味や酸味に敏感だし、噛み切りにくいもの、飲み込みにくいものも嫌がる。
食べてほしいが、食事そのものが嫌いになっては元も子もないので無理強いはできない。
気持ちを切り替えて、いくらもはまぐりもノコが残したものは、みーんなみんな大人がありがたーく味わってやる。
ノコと暮らすうちに、ノコが食べられることが最優先になり、いつしか献立がノコ寄りになっていた。
自分たちが食べたいものも作ればいいのに、品数を増やすのが時間的に難しくて避けていた。でも、最近ひじき煮やきんぴらごぼう、香草を使ったスパイシーな料理などが食べたい。お刺身や生ものが食べたい。
ノコが食べられないものほど食べたい。
体が欲している。
食べたいものが食べられないのって、じわじわくる。
ノコが「ヤダヤダ」ばかりいうので、なおさらこたえる。