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紙面と現実がつながったのか

2023年3月20日(月)
 先週末でノコ(娘小3)の給食終了。
 今週からは特別日課で4時間授業である。送り出したと思ったら、即帰宅!

 ノコが15分遊びをしよう、と私を誘う。
 15分遊びとは、キッチンタイマーで時間を区切り、その間は私は何も片手間にせず、ノコとしっかり向き合って遊ぶ時間である。
 大抵カードゲームかおもちゃを一式持ってくるノコが今日は違った。珍しくおもちゃのお金とお財布にピッと音が鳴るバーコードリーダーだけだった。それと手帳とボールペン。
 「ママ、お店屋さんごっこしよう。私、お使いするよ」
 そういって、手帳を出し、タイマーを押す。
 「それならねぇ、お肉屋さんでお夕飯用にコロッケを・・・ノコさんはクリームコロッケと野菜コロッケ、どっちがいい?」
 「クリーム」
 「じゃあ、ノコさん用にクリーム1つ、ママはクリームと野菜を1つずつ、パパはクリーム2つに野菜1つね」
 そんな具合にどんどんお使いを頼んでいった。
 パン屋さんでもしロールパンが焼き立ての時間だったら6個入りを1袋、そうでなかったら大きなくるみパンを1つ。文房具屋さんでノコの算数ノートを1冊に赤青鉛筆を1本。八百屋さんではトマトを3個、バナナを1房。
 できるだけこまかく挙げていく。
 ノコが律儀に小さな字で書き込んでいく。学校のノートでは見ることのない小さな字だ。
 家を出るノコさんに見えないスマートフォン(スマホ)を持たせる。何かあったらかけてね、と。

 「いってきまぁーす」
 ノコが立ち上がり、居間を一周すればもうそこは商店街だ。

 「すみませーん、トマトを3個とバナナください」
 私は声音を変えて、八百屋のおじさんになる。
 「やぁ、いらっしゃい。今日は大きくて赤いトマトと小さくてまだ少し青いトマトがあるけど、どっちにするかい?」
 「ちょっと待ってください」
 ノコがスマホの呼び出し音を口で真似る。
 「はい、ノコさん、どうしたの?」
 「ママ、トマト赤くて・・・えっと大きいのとちょっと青くて小さいの、どっちがいい?」
 「赤くて大きいのにしてね」
 「はぁーい。あのね、赤くて大きいほうをください。それからバナナ」

 トマトとバナナの値段をいい、計算がなかなかできない振りをする。
 「うーん、トマト1つが100円で、バナナが1房280円だからぁ~そうするとぉー」
 この八百屋のおじさんは計算が苦手なようだ。
 ノコが慌てていう。
 「私がしますよ。トマトが100円3つなら300円で、バナナが280円だから・・・580円です!」
 「おお、そうかい。計算が早いね、助かるよ。じゃあ、580円になります」
 「600円出しますから、おつりは20円です!」

 内心私はびっくりする。
 そりゃあ、ノコさんは小学3年生。もう掛け算・割り算も習っているので、足し算・引き算はお手の物のはずだ。宿題のドリルではノコもできる。
 だが、遊びのなかで、私がわざと計算を取り入れても乗らないのがノコの常だった。
 ただ面倒くさいのか、暗算では計算ができないのか、ちょっとわからなかった。
 今日はいつもと様子が違う。
 どうした、ノコさん!

 その後、巡ったお店でも計算ができない店員さんが続々登場し、その度にノコが合計額を計算し、おもちゃのお金を出し、お釣りを店員さんに教える。
 最後にケーキ屋さんで今日のおやつ用のケーキをノコさんが選んで3時までに帰ってくることになっている。
 ノコは店員さんにおすすめのケーキを伺い、「お酒が入っていませんか?」と確認する。遊びなのに、私のアレルギーの食材も入っていないか尋ねる。驚くことだらけだ。
 「お持ち帰り時間はどのくらいですか?」
 ほんの居間を一巡りの距離だけど、ノコは堂々と「30分です」と答える。

 そして、くうるり居間をまわって私のもとに戻ってくる。
 「ただいまぁ」
 私は嘘っこのティータイムをセッティングする。ノコにはホットミルク、私にはコーヒー。むーくん(夫)はまだ仕事から帰っていない設定なので、ケーキは冷蔵庫へしまう。
 「ママにはね、この期間限定の白いモンブラン。えっとね、ママが好きなラム酒が入ってるんだよ。私はね、桃のケーキ。パパには和栗のモンブラン」
 そのセレクトがあまりにも我が家の日常に沿っていて笑ってしまう。
 いつのまにかノコは家族それぞれの好みを覚えていたことにただただ私は驚く。

 最後に今日はどうして計算がスムーズにできたのか問うと、「なんかね、お金が頭に浮かんだの!」と笑う。
 もちろん仕事から帰ったむーくん(夫)にもノコの前で今日のお使いごっこを報告する。
 「私ね、お店の人の代わりに計算もしてね、お釣りも教えてあげたんだよ! スゴいでしょ!」
 ノコが胸をそらし、それはもうひっくり返りそうなほどそらしてむーくんに自慢した。
 ようやく紙のなかの問題と現実がつながったのだろうか。


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