入浴フルコースへの道
2023年3月7日(火)
このところ、ずっと「ヤダヤダ」娘のノコ(娘小3)。
今日はわりと穏やかで、このままお互いいい気分で寝られるかと思っていたら。
夕食後に入浴拒否。
「ヤダ」
ホットカーペットに寝転がって動かない。
「ヤダ、入らない」
満腹と一日の疲れで大人も眠気が強くなっている。早く入浴を済ませて寝てほしい。
「ママと入る」
むーくん(夫)を見ると、ソファーに横たわり、夢の世界に片足を突っ込んでいる。今朝も早朝出勤だったので仕方がない。
ノコとの入浴は元気な状態でないと私には厳しい。
いくら「夜だからね」とノコに声を小さくすることを促しても、3秒後には大熱唱がはじまる。もしくは、よくわからないなぞなぞ大会だ。お風呂では放心してリラックスしたいのに、とてもじゃないが叶わない。浴室に響き渡るノコの歌声を浴びるか、ぼんやりしたがる脳を強制運転させるか、だ。
むーくんが起きているなら、「甘やかしだねぇ」といいながらささっとノコの全身を洗い、ポイッと浴室の外へ出すことができる。
あとは、むーくんまかせ。
ノコの髪をドライヤーで乾かし、歯磨きの仕上げをし、ベッドへ連れて行ってくれる。私は静かな浴室でのんびり丁寧に自分の髪と身体を洗い、湯舟でゆったり目をつぶる。
だが、むーくんが寝ている場合は違う。私が自分の髪や身体を洗って居間へ行くと、濡れた頭のノコが本を読んでいる。下着姿のままもざらだ。せっかく先に出したのに湯冷めしてしまうじゃないか。
「パパが寝ちゃってるから、今日は一人で入って。ママ、後片付けとかあるから」
「ヤダ!」
「出てきたら、ママがささっと髪乾かすから、パッと寝よう」
「ヤァダ! ママと入る。先に出ない。お風呂でお話(物語)して」
ノコのご所望は入浴フルコース。私の体力気力が一番消耗するやつだ。
「早く入ってください」
「入りません」
「次の人が入れません。早く入ってください」
「入りません」
最近よくあるこのやりとりは、私が諦めない限り延々続く。
「じゃあ、入らなくてもいいよ。早く寝てください」
ノコが私を睨みつける。
仕方がない。
「ペンギンさんが行きますよぉ」
ノコがばっと身を起こす。
ノコの脇を支え、私の足の甲にノコの足をのせる。左足に左足、右足に右足を。
よいしょよいしょ、と一緒によちよち洗面所へ向かう。小柄とはいえ、さすが小学3年生。予想以上に重い。
洗面所に到着すると、「はいはいはーい」をリズムよく繰り返しながら、ノコの服を脱がせていく。そして浴室のドアを開け、「はい、行ってらっしゃいませ~」と送り出す。
ノコがお尻を振りながら「はいはいはーい」をいい続け、シャワーに手を伸ばした。
私は浴室のドアを静かに、でもしっかり閉める。
3年生に進級したのを機に、むーくんはノコとの入浴をやめた。
異性の親との入浴はどこかで区切りをつけないとゆるく続いてしまう。娘が「パパとはもう入らない」と宣言できる性格であればいいが、そうでないといつしか娘の身体が第二次性徴期に入ってしまう。
正直むーくんがノコの入浴介助ができなくなると、私の負担が大きくなる。ノコとむーくんの入浴は賑やかで楽しげでうるさいけれど、台所で後片付けをしていて笑っちゃうほど幸せそうだった。むーくんが着衣のまま、ノコの入浴介助してくれるだけでも助かるが、それはできない。
ノコの希望は洗ってもらえる楽ちんさではなく、お風呂でのふれあいか。
私だって、むーくんとの入浴は楽しい。それは浴室という小さな空間でスマートフォンもテレビもなくて、お互いしっかり向き合えるからだと思う。私もいろんな話をしてしまう。
ノコからむーくんとの入浴を奪ったのだから、私も腹をくくって予定を調整し、ノコの入浴フルコースを叶えてあげたほうがいいか。
毎日は無理だけれど。
つい私が楽なほうへ流れてしまい、ノコに一人入浴をさせてしまうけれど。
最低でも週何回と意識したら、今より実現度が上がるだろうか。