福岡県嘉穂郡桂川町。どれくらいの人がこの場所を知っているだろうか。桂川町は、JRの急行停車駅です。JR博多駅からは約30分。東京で暮らしている感覚だと、その情報だけ聞くと、「いいね」と言われてしまいそうですが、実際にはかなり田舎です。
父方のばあちゃんち
この場所は、私の父親が育った場所で、私にとってはおばあちゃんの家です。(仮称)牧山テラスとは違う、もう一つのおばあちゃんの家。幼少のころ、父親の仕事(公務員)の関係で比較的都市部を転々と引っ越ししてきた自分にとっては、桂川は田舎の象徴のような場所でした。
父親の母、つまり私の祖母は、2020年に100歳で亡くなりました。晩年は目を悪くしたことや痴ほう症になったこともあり、施設にいました。誰も使わなくなった桂川の家は、父親がたぶん管理をしていたのでしょう。いつしか、孫の私は行かなくなっていた気がします。おばあちゃんの家だと、おばあちゃんがその家にいないと、孫がわざわざ行くことは、なくなってしまうのです。そんな場所に、弟が突然一人で住み始めました。当時は父親の定年が見え始めていて、東京に長男である私がいて、次男である弟が両親と暮らしていました。
弟は当時まだ20代後半で、独身でした。何となくそのままの流れでばあちゃんの家を取り壊し、両親と弟が暮らす二世帯住宅をつくる話が浮上しました。地方と東京で、両親と離れた状態の私は、当時は弟が介護関係の仕事をしていたこともあり、「安心だ」と思いつつ、面倒を見ることを弟に押し付けているような申し訳なさがあったのを記憶しています。
東京から遠隔で住宅の設計サポート
とはいえ、家族にとってベターな選択肢であったことは間違いなく、設計が進むことになりました。少しでも役に立てればの思いで、融資関係の金融機関の方と建築家は私が住む東京のメンバーにしました。住宅金融支援機構の「フラット35」を利用したつなぎ融資の仕組みがあり、建設資金はそこから融資を受けました。設計は、高橋将章さんという建築家にお願いしました。
ガレージハウス兼フリースペース
弟は車が好きで、かつ趣味で高級洗車を請け負うことをしていました。そのため、特注のシャッターで入る車のための広々な空間を実現しつつ、使わないときにはリビングのようにできる提案がなされ、見事にそのまま実現しました。
茶室
私の実家でもあるため、私の趣味部屋も欲しいということで、階段裏のスペースを、意味なく遊んで設計させてもらい、「茶室」と題して半地下のようなスペースも作りました。
平面図
間取りは比較的オーソドックスです。リビングを大きくするのではなく天井から降りた垂れ壁で少し仕切っていて、お気に入りのポイントです。
取り立てて変わった設計というわけではありませんが、普通にいい住宅になりました。ところが、完成から数年後、この住宅の隣地が買い手を探しているという噂が流れました。周辺には空き家がいくつもあるような、ド田舎なので、そのままスルーしてもよかったはずでした。
隣の土地は借金してでも買え
ところが、桂川町とは何の関係のない母方の祖父が、「買う」と言い始めたのです。「隣の土地は借金してでも買え」というのは古くから伝わる格言ですが、、、。昭和4年生まれの祖父です。周りが反対しようと関係がないので、あれよあれよと直接交渉の上話がまとまってしまい、最後は私が土地売買契約書をつくらされる羽目に。こうして、父方の実家の隣地を母方の祖父が購入するという、ありそうでなさそうな事態に発生。続きは、次回のnoteで書くことにします。
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